市立植物公園 〜冬だからこそ樹木観察〜


 

【広島市佐伯区 平成15年1月12日(日)】
 
 2003年しょっぱなの定例観察会は、広島市郊外にある市立植物公園で樹木の観察をしようという企画です。
 晴天のうえに、無風。すばらしい観察会日和です。
 
 午前10時、公園入り口に集まったのは70人超。
 今日は6つのグループに分かれて、それぞれこの植物園でインタープリター(ボランティアで)をしておられる方に引率をしていただきました。

 開会風景

 各グループは、園内を巡る散策路を12のコースに区切ったうちのいずれか1つのエリアでじっくりと観察をしていきます。1グループ当たり10人前後なので落ち着いて見ることができ、また質問などもしやすかったです。

 この時期、葉を落とした樹木が多く、林も明るくて観察しやすいです。また、意図してのり面に植えてある樹木もあり、普通は見上げての観察になるところを目の高さで観察することができます(写真上参照)。

 この植物公園には草本木本合わせて約1万種の植物が植栽されているそうです。多くの人が訪れるのは入り口正面の芝生広場と大温室くらいで、「綺麗な花が植えてあるなぁ」といった印象をもって帰る人がほとんどでしょうが、それらの周囲を取り囲むように広がる丘陵地には数多くの樹木があり、じつはこっちの方も見どころ十分なのです。
 カンレンボク、ネッサ・シネンシス等々、普段あまり見ることのないような樹木もたくさんありました。これもレクチャーしてくださる方がいるから気がつくのです。ありがたや。

 クチナシの実

 ところで「世界3大紅葉樹」って知ってましたか。実は今日初めて聞きました。
 ひとつはさっきのネッサ・シネンシス。あとはニシキギとスズランノキだそうです。調べてみると確かにみな真っ赤ですが、このランキングは文字どおり「どんだけ赤いか選手権」ということでしょうね。鑑賞する場合の紅葉は赤けりゃいいってもんでもないわけで、緑や黄色、オレンジなどとの微妙なグラデーションがあってこその紅葉でしょう、やっぱ。

 チャンチンの根元で

 展望台の周りにもおもしろい樹木がたくさんありました。まずはチャンチンの木。センダン科の高木で「香椿」と漢字表記されていました。チャンチンはインゲン豆を日本にもたらした中国の高僧隠元が移入した木なのだそうです。この木はその末裔になるのでしょうか。

 オオモクゲンジの種子

 オオモクゲンジも中国原産の樹木です。木の根本で楕円形の袋状になった刮ハを見つけました。秋には淡い紅色に色づくそうですが、まだ実物は見たことがありません。今年の予定表の10月初旬の欄にチェックをしておかなければ。

 トウカエデ(左)とタイワンフウ(右)  ヤマコウバシ

 展望台を下りて、右に左に樹木を観察しながらスタート地点の芝生広場を目指します。
 樹皮を薬用にするトチュウ、種子を羽根突きの羽根の玉に使うムクロジ、茶色に変色しても葉を落とさないヤマコウバシ、学問の木カイノキ等々、まるで樹木のデパート、いや百均なみの品揃えです。

 ゴンズイ  果実

 芝生広場を見下ろすところにゴンズイが梢にたくさんの果実を付けたまま立っていました。肉厚の果皮から黒い種子がのぞいていますが、この時期みずみずしさはなく乾燥しています。これも目の高さで観察することができました。

 
 昼食をはさんで午後は大温室に入りました。
 しかしいつも思いますが、熱帯の植物(特にランの仲間)の造形には感嘆させられます。これは進化の過程での偶然の累積なのか、それとも環境が用意した当然の帰結なのか、本当に興味は尽きません。

 カカオの花  カカオの果実

 カカオの花は幹に直に付くんですね。径約1.5pほどの小さな花です。当然のことですが果実も幹にじかに付いています。

 ヤトロハハスタータ
 (トウダイグサ科)

 

 レパーデス
 (スイレン科)
 ※園芸品種

 温室から外に出てもそんなに寒さは感じません。むしろさわやかな感じ。それほど今日は暖かいのでしょう。暦の上では寒に入り一年のうちでも最も寒い時期にあたるのですが。
 
 最後に今日のリーダー小方さんと6人のインタープリターの方々にお礼を言って解散となりました。