高尾山 〜東京の奥座敷で早春散歩〜


 

【東京都八王子市 平成16年2月29日(日)】
 
 前日から東京に来ていて、今日は一日フリーなので、東京の奥座敷「高尾山」に行ってみることにしました。
 関東平野の西の端、京王線の終点高尾山口駅で下車すると、そこはもう立派な田舎の風景。駅前には山歩きの格好をした人がチラホラと。熟年カップルや子供連れ、観察会っぽい人達とバラエティーに富んでいます。
 ここ高尾山には東京に住んでいた頃ちょくちょく来ていました。子供(当時は小さかった)と一緒のときはケーブルカーで、一人のときは登山道で山上を目指しました。気軽に登れる山なのでまさに都民の憩いの場です。
 
 今日は4年に一度の「2月29日」。ところで、現在一般的に使われているグレゴリオ暦では、4年に一度閏年になるのはご存じのとおりですが、100年に一度、その閏年になるべき年が閏年になりません。最近の(?)例でいえば1896年は通常どおり閏年、で4年後の1900年は閏年にならず、さらに4年後の1904年に8年ぶりに閏年になったのです。

 ところが400年に一度、今度はその消されるべき閏年が消されないのです。(ややこしい!) 最近では2000年が、消されるべき閏年が消されずにそのまま閏年となった年です。1700年、1800年、1900年は上に記したとおり閏年になりませんでした。でもその100年後の2000年には消されるべき閏年が消されずにそのまま閏年になったのです。400年前の1600年も同じです。

 4年前の閏年はただの閏年ではなく、400年に一度の特別な閏年だったのですね。(だから何なんだって言われればそれまでなんですけどね。)

 ケーブルカー
 清滝駅

 前日の春の陽気から一変して、今日は冷たい北風が吹いています。その風に飛ばされてきたのか、ときおり雨粒も落ちてきます。まだ時間が早いからでしょう、ケーブルカーは空いていました。もっともこの時間に登山口まで来ている人達の多くは歩いて登るのでしょう。

 最大斜度

 上の写真は平坦な場所に見えますが、実は斜度38度18分。このケーブルカーの最大斜度地点です。かなり下を向いて撮った写真で、写真奥がふもとになります(遠くに見えるトンネルの辺りでさえ結構な坂でした。)。
 ちなみに38度18分というのは、日本のケーブルカーで最もきつい斜度なのだそうです。

 朝の虹

 ケーブルカーを降り立って北西方向の山並みを見ると鮮やかな虹がかかっていました。高尾山から尾根沿いに縦走していくことができる景信山やさらにその先の陣馬山などを望むことができました。
 
 ここからは遊歩道といっていいような道が山頂まで続いています。実は山頂の手前に薬王院という真言宗のお寺があって、その参道なのです。この道は「1号路」といって、高尾山に6本ある自然観察路のうちの一つです。このほかに2号路から6号路まであり、これらはいずれも普通の登山道のような山道です。 

 蛸杉

 参道脇にある「蛸杉」は樹齢約450年。目通り約6mの大きな杉です。
 言い伝えでは、昔ここの参道を開削する際、この杉の盤根が邪魔になったので伐採しようと相談していたところ、一夜にして根が後方に曲がったとされています。その根の形がタコに似ていることから名付けられました。今ではみんなが撫でていくのでテカテカになっています。

 ミツマタ

 薬王院の境内にミツマタが咲いていました。早春の花です。

 山頂

 ブラブラと歩くこと1時間弱。山頂に到着しました。ふもとから歩いて登ると2時間以上はかかるのですが。
 山頂は公園のようになっていて、「関八州見晴台」という碑が建っています。晴れた日には写真正面の位置に富士山を見ることができるのですが、今日はだめでした。
 ちなみに、ゴールデンウイークなどにはここが人であふれかえってウンザリします。

 ビジターセンター

 山頂のビジターセンターに寄ってみました。
 ここでは高尾山の自然を紹介するフロアに負けないくらいのスペースを使って、人間が高尾山に与えるダメージについての展示がなされていました。
 どれも分かりやすく、子どもたちにも楽しみながら理解することができるものでしたが、そのうちの一つを紹介します。

 人の少ない山道の地面にはフカフカの軟らかい土があり、その下にはたくさんの生きものがくらしています。  雨の山道はぬかるみます。ぬかるみを避ける人が草を踏むと草は枯れてしまいます。踏み固められた地面には雨水がしみこまず、落ち葉や土が流されていきます。根から栄養をとれない木は枯れてしまいます。  このままでは道は広がり、地面は固められ、多くの生きものが失われていきます。土が流されるのを防いだり、歩きやすくしたり、道の場所をはっきりさせるため階段をつけました。  それでも階段を避けてわきを歩く人が多いため、さらに多くの生きものが失われ、道はどんどん広がっていきます。  右の写真(略)は現在の高尾の山道です。
 このような状態を、みなさん、どう思いますか。

 
 この掲示の横にはコルクボードとポストイット(付箋紙)と鉛筆が用意されていて、これを見た人がその場で感想を残せるようになっていました。そして記入済みのポストイットがボードにたくさん張られていました。入館者は掲示に加えその感想も併せて見ることができるのです。

 関東平野

 頂上から東の方向を見ると、50km先の東京湾まで、条件さえ揃えばさらにその先の房総半島までを一目に見渡すことができます。
 今日は霞んで遠く空との境界は判然とはしませんが、この日本最大の平野を覆い尽くす市街地の広がりに息をのまずにはいられません。

 4号路

 帰りは尾根の北側山腹に設けられた4号路を通ることにしました。高尾山の北側は落葉広葉樹の森、一方3号路がある南側は常緑樹の森が広がっています。
 すれ違う人もまばらで、静かな山歩きになりました。

 アオキ

 アオキの実はヒヨドリの口にピッタリのサイズなのだそうです。他の小さな鳥では種をばらまいてもらうことはできず、両者は特別な関係といえます。
 
 ケーブルカー駅の手前に野草園がありました。尾根の南斜面に多種多様な野草が所狭しと植えられています。季節を変えて訪れれば効率的に花を見ることができますが、この場所ではその植物の本来の生育環境を知ることはできません。

 ミスミソウ
 
 フクジュソウ
 
 ニオイカントウ  セリバオウレン

 午後2時、ふもとの高尾山口駅にもどってきました。
 妻と渋谷で待ち合わせているので、ここから約1時間かけて向かいます。370円、乗り換え1回。公共交通機関に関してはやっぱり東京は便利です。