城山かたくりの里 〜民家の裏山の楽園〜


 

【相模原市 緑区 令和4年3月20日(日)】
 
 3月も下旬というのに、今年はなかなか暖かくなりません。そんな中、野山の花はどんな調子なのか気になっていたのですが、案外近くに花の楽園があることを知り、行ってみることにしました。そこのホームページにはそろそろ見頃を迎えるのとこと。えっ、もうそんなに進んでいたのか、という感じです。
 
                       
 
 その楽園とは、相模原市にある「城山かたくりの里」。個人宅の裏山を整備し春先の季節限定で公開されているところです。知る人ぞ知るどころか結構有名なようで、シーズン中には橋本駅から送迎バスも出ているそうです。
 午前10時、ドリーム号Vで現地に到着しました。すると広い空き地が無料駐車場に開放されていて、しかも誘導員の方も配置されているという本格的な運営体制。これはよっぽど人が訪れるということでしょう。

 入口

 城山かたくりの里の立地はまさに農村の一角。民家の路地の奥に入口がありました(写真は入園してから振り返って撮ったもの)。既に多くの人が訪れている様子。早くも出てくる人もいました。入園料は500円。受付のお姉さんに渡すと、立派な紙質の手作りマップをいただきました。

 オオミスミソウ

 ここからはひたすら花を紹介します。これはオオミスミソウ。

 カタクリ

 カタクリ。陽が陰ってきましたが、ちゃんと咲いてくれていました。

 コシノコバイモ

 コシノコバイモ。漢字では「越の小貝母」です。バイモは別名をアミガサユリといい、中国原産。日本に自生するものは小型のバイモということで、コバイモなのでしょう。地域による変異が大きいのか、甲斐小貝母、美濃小貝母、出雲…、土佐…、阿波…といろいろあるようです。

 オオミスミソウ

 同じ株に異なる色の花を付けているようです。これは植栽か。

 カタクリ群生地

 奥に墓所が見えるとおり、ここはごく普通の民家の裏山なんです。そこにカタクリの群生が。家の人も嬉しいでしょうね。

 カタクリ

 元気に咲き誇っています。葉といい花といい、みずみずしいです。

 ミツマタ

 辺りをほのかに照らす雪洞(ぼんぼり)のような花序。ミツマタです。紙の原料として栽培されてきた歴史があり、昔は農家の周りに植えられていました。山歩きをしていてこの木に出会うと、ここに集落があったんだろうなと想像したりします。

 ヒカゲツツジ

 ヒカゲツツジです。黄色い花のツツジは珍しいです。この花を初めて見たのは金峰山の山頂手前、標高2500nくらいのところでした。本来は岩地に生えるようですが、ここのものは植栽でしょうか。

 ショウジョウバカマ

 白花のショウジョウバカマです。花の色は普通は赤紫色。猩々(しょうじょう)とは中国の伝説上の猿のような獣のことで、赤紫色の花を猩々の顔に見立て、広がった根生葉を袴に見立てということです。まあ想像力豊かですね。

 スハマソウ

 オオミスミソウに似ていますが、これはスハマソウでは。

 オオミスミソウ

 花弁のように見えるのは萼片という、キンポウゲ科に特徴の構造です。じゃあ花弁はというと、花冠の内側にある一見雄しべのように見えるものです。

 チャルメルソウ

 ちょっと変わった名前の花、チャルメルソウです。果実が楽器のチャルメラに似るからこの名前が付いたということです(チャルメラを知る人は少ないでしょうが)。写真は花。花弁の形も変わっていて、魚の骨というか枯れ木というか、そんな形の花弁が5個付いています。山の中の湿ったところで出会うことが多いです。

 ショウジョウバカマ

 こちらのショウジョウバカマは根生葉が立派ですね。

 THE 裏山

 昔、民家の裏山では一般に畑作などが行われましたが、北向き斜面では耕作に向かないため、柴刈りや薪炭材を取るために林にしているところもままありました。そんな中の一角に先祖からの墓所があったりして、生活に密着した場所だったのです。カタクリはそんな北向き斜面を好む植物です。

 キクザキイチゲ

 ブルーの花冠が印象的なキクザキイチゲ。花の色にはバリエーションがあります。

 ボケ

 ちょっと気の毒な名前のボケ。中国原産で平安時代に渡来したものとか。漢字では「木瓜」と書き、これを「ぼけ」と読むのだそうです。確かに瓜(というか洋梨)に似た果実ができます。

 キクザキイチゲ

 こちらは白いキクザキイチゲです。



 トウゴクミツバツツジとありましたが、花の付き方や花弁の波打ち方がちょっと違うような気が。園芸種なのかもしれません。

 ダンコウバイ

 早春の花、ダンコウバイ。漢字では「檀香梅」と書き、白檀の香りのする梅のような花という意味ですが、元々はロウバイの一品種に用いられていたものとのこと。確かに写真を見ても分かるとおり、梅には似ても似つかない姿で、むしろロウバイの方が見た目も香り高いところも名前の意味に合致しています。

 オオミスミソウ

 まるでフラワーショップの店先で売られている花のようなポップさ。これが日本の山野に自生しているのですから、山歩きの途中で出会ったりしたらそれは嬉しいでしょうね。ここのものは植栽とのことです。



 キクザキイチゲの小群落。これだけ並ぶと華やかですね。



 野生での姿を彷彿とさせる風景。斜面一面のカタクリも良いですが、こういうのも趣があります。

 トサミズキ

 トサミズキはミズキと名が付きますがミズキの仲間ではなく、マンサク科。葉がミズキに似るからだそうです。ミズキの葉自体ものすごくポピュラーな形の葉なので、この葉に似た葉はごまんとありますが。自生のものは極めて少ないそうで、それも名前由来の高知県に集中しているそうです。

 バイモ

 これが中国原産のバイモ。確かにコバイモに比べて大型です。別名のアミガサユリの由来は花冠の中の網目模様にあります。

 ???

 あれ、これは何だったっけ? 確か外来種だったような記憶があるのですが。

 ユキワリイチゲ

 yamanekoの好きな花、ユキワリイチゲです。ちょっと陽が陰ると花冠を閉じてしまう気難しいやつですが、柔らかみのある白い色が好きです。葉は斑入りのようなくすんだ色合いで、それがまた花を引き立たせているのです。

 タヌキ

 遠くでガサゴソと動くものが。あれはタヌキですね。里山ではおなじみの動物です。ここに住んでいるんでしょうか。

 アズマイチゲ

 陽が陰っているので花冠を閉じてしまっているアズマイチゲ。ちなみに左下に写っているのはカタクリの葉です。今日の天気予報は晴れだったはずなのに。

 ミツマタ二種

 ベニバナミツマタ(手前)とミツマタ(奥)。まだ緑の少ない里山でほんわかとした暖かみのある色合いを見せてくれていました。
 
 民家の裏山に作られた野草園。ぐるっと回って2時間ほどの花巡りでした。公開されているのはほんの短い期間ですが、その期間のために年間を通じて世話をされているんでしょう。自ら「花守人」と称されるここのご主人の愛情が感じられる園内でした。