佐倉・歴博植物苑 〜梅雨の晴れ間に千葉横断〜


 

【千葉県 佐倉市 平成18年6月17日(土)】
 
 西日本では連日大雨に注意を呼びかける報道がなされていますが、関東では毎日どんよりと曇った日が続いてはいるものの、まとまった雨は降っていません。今日も天気予報は「曇りときどき晴れ」。ということで、ここはやっぱり出かけてみますか。
 
                       
 
 今日は千葉県佐倉市にある「国立歴史民俗博物館」とその附属の「くらしの植物苑」に行ってみることにしました。
 首都高の湾岸線から東関東自動車道へ。京葉道路と交差する宮野木JCTまでは都会の風景だったのですが、その次の千葉北IC、そして高速を下りる四街道ICの辺りまでくると、畑や田んぼが広がるのどかな風景に変わっていきます。
 佐倉市は長島さんの故郷。こんもりとした丘になっている佐倉城址の中に歴史民俗博物館はありました。ここには10数年まえに訪れて以来2回目になります。

 歴史民俗博物館

 現地に到着し、時計を見るとすでに昼前なので、とりあえず館内のレストランへ。ところがそのメニューが一風変わっていました。各種定食のご飯がすべて黒米なのです。定食だけでなく、おむすびもカレーもちらし寿司も。徹底しているというか何というか。確かに歴史民俗博物館なので古代米をフィーチャーするのは分かるのですが…。(他のお客さんも一様にとまどっているような顔をしていました。)

 土器群

 この博物館は、日本列島に人類が登場した旧石器時代から現代まで、5つの展示室を回廊式に巡る形で日本文化の形成過程を展示しています。
 第1展示室は、旧石器時代から律令国家が成立した奈良時代まで。第2展示室は、貴族文化の平安時代から武家政治が定着した安土桃山時代まで。第3展示室は、江戸時代の生活や文化(リニューアル中でした。)。第4展示室は、「日本人の民俗世界」というテーマで、都市、農村、山村、漁村、島というそれぞれの生活空間での古来からの生活様式や精神世界を紹介しています。個人的にはこの展示室に最も興味をひかれました。第5展示室は明治時代から昭和初期まで。近代化を進める日本の姿を、自由民権運動、殖産興業、関東大震災などの事象を通じて紹介しています。この博物館、さっと流して見ても2時間くらいはかかります。興味のある方は丸一日が必要でしょう。

 ニワゼキショウ

 館内をひととおり見て外に出てみると、もうすっかり夏の天気でした。歩道脇の植え込みにはネジバナやニワゼキショウ、シロツメクサなどが咲いていました。
 どれも小さな花ですが、それゆえ普段は気づかない美しさに驚かされます。要は足を止めてしゃがみ込み、何でもよーく見てみることです。
 続いて「くらしの植物苑」に向かいます。

 姥ヶ池  オニグルミ

 植物苑は向こう側の丘の上にあるので、いったん下ってまた上ることになります。まず博物館から小径を下ってくると姥ヶ池のほとりに出ます。けっこう大きな城址です。この池は昔は堀の一部だったのかもしれません。今では水面にびっしりとスイレンの葉がひしめき、ところどころに白や紅紫色の花を開いていました。道沿いに何本かのオニグルミがあり、いずれも丸い実を付けています。この実の中にあの堅いいわゆる「クルミ」があるのですが、不用意に手で捌いて取り出そうとしたりすると、指先が焦げ茶色に染まって数日間は消えないので注意が必要です。

 くらしの植物苑

 姥ヶ池から再び反対側の丘を登ると「くらしの植物苑」です。この植物苑は、昔から人々の暮らしに深く関わってきた植物が植栽されていています。なので派手な園芸品種や温室の熱帯植物を目当てに来ると不満が残るかもしれません。yamanekoとしてはこちらの方が楽しめますが。

 ヤブニッケイ

 シロダモに似た三葉脈がよく目立つのはヤブニッケイの葉です。ちょうど花が咲いていました。主な用途は建築材や器具材で、あと種子から油を採ったり、葉や樹皮を薬用にしたそうです。

 アブラチャン

 樹皮や種子に油を多く含み、生木でもよく燃えることから名が付けられたアブラチャンです(チャンとは瀝青のことで、ピッチやタールの総称です。)。長い果柄の先に丸い果実を付ける姿はまるで緑色のサクランボのようでもあります。花の時期は早春で、今はもう実の時期です。

 トチノキ(実)  トチノキ(花) ’03.6 十方山林道

 トチノキに実が付いていました。トチノキの花は花序の半分以上が雄花で、将来実を付ける両性花は花序の下の方にまばらに付くのみなのだそうです。なので果実も下の方に実っています。それにしても花から受けるあでやかで繊細なイメージからは想像できない果実の姿です。果実から「とち餅」ができるのはよく知られていますが、そのほかにも、花はミツバチの蜜源であるとか、材は木目が美しく光沢があるので木鉢などに使われるそうです。

 ヘラオモダカ

 ヘラオモダカの花が涼しそうです。オモダカの葉は鏃(やじり)形ですが、この花の葉はその名のとおり篦(へら)形をしています。昔は地中の球茎を掘り出して乾燥させ、利尿剤として利用したのだそうです。
 他にもオオバギボウシやアサザなどが花を付けていましたが、ヤブ蚊に刺されたこともあって、1時間程度で散策を終えることにしました。

 菖蒲祭り

  植物苑を出て、また姥ヶ池のほとりまで戻ってきました。拡声器から琴の音色が流れてきます。「菖蒲祭り」という幟が立っていて、大勢の見物客が来ていました。
 
 さて、駐車場に戻って、再びドリーム号に乗り込みます。普段ならもうそろそろ帰路についてもおかしくない時刻なのですが、今日はここからさらに東関道を東進し、終点の潮来ICで下りて、そこから関東最東端の犬吠埼に向かいます。今からならちょうど夕日が見られる頃には着けるでしょう。

 地球の丸く見える丘展望館

 ずいぶん走って利根川の河口部を渡り、銚子市内に入ってきました。犬吠埼の眺望を楽しむなら、小高い丘の上にある「地球の丸く見える丘展望館」へ。ここの屋上なら360度の展望が得られます。地形の影響なのかさすがに風が強いです。

 夕方になって雲が出てきて沈む夕日を見ることはできませんでしたが、広々として気持ちの良い眺めです。写真右側に延々と続いている断崖は屏風ヶ浦です。

 犬吠埼灯台

 東の方角には犬吠埼灯台が。海と空とが溶けあって判然としませんが、確かに太平洋とその先の水平線が見てとれます。あの向こうはアメリカ。近いもんです。
 
 この後、木更津経由でアクアラインを通って帰りました。(けっこう時間がかかりました…。)