龍頭峡 〜渓谷の春本番へ〜
【広島県安芸太田町 平成17年4月16日(土)】
今月に入ってから休みなしだったので久しぶりの休日です。昨日の夜まではヘトヘトだったのに、朝からこんなに素晴らしい晴天だとやっぱりじっとしていられません。いや、じっとしてるとかえって体に悪いような気がする。
ということで、今日は安芸太田町(旧筒賀村)の龍頭峡に行ってみることにしました。
渓谷入口の駐車場 |
12時過ぎ、龍頭峡の入口に到着。駐車場の看板には「ようこそ筒賀村へ」とありますが、ここはもう合併で安芸太田町です。ドリーム号を停めてサンルーフから青空を見上げると、つい先月までの重たい冬空がうそのようです。そよいでいく風も暖かい。そういえば途中の道路の電光標識では気温22度を表示していました。
普通みんなはもっと渓谷の奥にある駐車場まで車で入っていくので、ここの駐車場には他に車はいませんでした。でもyamanekoとしてはそんなもったいないことはできません。渓谷をさかのぼる道々が楽しいのです。
ナガバタチツボスミレ |
林道ののり面にナガバタチツボスミレ。たくさん咲いています。どれも高さは7〜8pほどで、小さく風に揺れています。
山の木々はまだ葉を展開していないので、対岸に見える山も全体に茶色い感じがします。それにしても、静か。聞こえるのはせせらぎの音と風が笹を揺らす音、近くの林の中から聞こえる鳥の声だけです。
トキワイカリソウ | ミヤマカタバミ |
ササの藪の中にトキワイカリソウが一株だけ咲いていました。何とも不可思議な形状をした花です。船の碇の形に似ているからイカリソウ。そして冬でもツヤのある緑の葉が残るのでトキワ(常葉)です。
ミヤマカタバミも咲いています。日陰なのでまだ開ききっていません。帰りに通りかかるときにはもう少し開いているでしょう。
森林館前の桜 |
市街地ではもうあらかた散ってしまったソメイヨシノ。ここ龍頭峡では今が盛りと咲き誇っています。今日はこの桜を愛でに普段に増して人出があるようです。しかし日本人ってホントに桜が好きですよね。桜は人生の節目の時期に咲く花。きっと人それぞれの思い出と結びついているからでしょう。
断崖絶壁 |
やがて目の前には覆い被さってくるような巨大な断崖が現れました。崖の途中から大きな木が何本も生えています。何十年も前にたまたま岩の隙間に引っ掛かった種が、厳しい環境であんなに立派な木になるまで育っていることに素直に感動です。もちろん何千年も前から育っては朽ち、また育っては朽ち、を繰り返してきたのでしょう。
ミツマタ |
林の入口に一株だけミツマタが。薄暗い林を背景に、ポッとそこだけ灯がともったような、暖かな空間となっていました。ミツマタはもともと中国からヒマラヤが原産で、日本には室町時代に持ち込まれたものとか。今では野生化したものも多いということです。
シロバナショウジョウバカマ | ショウジョウバカマ |
シロバナショウジョウバカマです。白いショウジョウバカマだからこの名前。普通のショウジョウバカマより花の数がまばらで、花被片は純白です。葉もショウジョウバカマより薄いようです。
猩々(ショウジョウ)とは猿に似た想像上の怪物のこと。花を猩々の赤い顔に、葉を袴に見立ててショウジョウバカマと名が付いたのだそうです。でも実際のショウジョウバカマの花の色は薄桃色から青紫色までバリエーションが豊富です。
深い渓谷 |
天上山から流れ出す三谷川。この川が何万年もかけて削ったのがこの龍頭峡です。短い川ですが気が遠くなるような歴史を持っているのです。
渓畔の春 |
道は渓谷に沿ってゆっくりと上っていき、やがて少し開けたところにやって来ました。桜のピンク、キブシの黄緑、コウヤミズキの黄色。この道がパステルカラーに彩られるのは、一年のうちでこの時期だけでしょう。
コウヤミズキ |
コウヤミズキは高野水木。他の仲間も地域名を冠したものばかりで、トサミズキ(土佐水木)、ヒュウガミズキ(日向水木)、キリシマミズキ(霧島水木)など。いずれも3月から4月に淡い黄色の花を咲かせます。
車で入れる一番奥のところから、渓谷に沿って岩肌の細道を登っていきます。
二段滝 |
しばらく行くと二段滝が現れました。高さはざっと見て30mはありそうです。水量も豊富で、飛び散る水しぶきの一つ一つが太陽光線を乱反射させていました。
滝壺近くの岩に腰掛けて、空を見上げる格好でしばらく目を閉じます。まぶたの裏まで届く明るい陽の光。滝の音も少し大きくなったような気がします。
スタートからはや2時間が過ぎました。今日はここまでで引き返すことにします。
この時期、野山の姿はめまぐるしく変わっていきます。忙しい毎日ですが、できるだけ自然の中に身を置いて、その変化を楽しみたいと思っています。
バイカオウレン |
帰りに立ち寄ったとある場所。ふと足下を見るとバイカオウレンが。
こんなところで出会えるなんて。最後の最後に思いがけないプレゼントを貰ったような気になりました。