青梅丘陵 〜山笑う稜線を歩く(後編)〜


 

(後編)

【東京都 青梅市 平成25年4月14日(日)】
 
 青梅丘陵の稜線歩き、後編です。(前編はこちら

 モミジイチゴ

 さすがに4月も半ばになると様々な花が咲いています。この1箇月で生き物の営みがいっせいに活発化した感じがしますね。


Kashmir 3D
 

 軍畑駅を9時40分に出発して青梅丘陵の稜線を南下してきました。今は名郷峠と三方山との間あたりです。

 ツクバネウツギ

 ツクバネウツギの花。きれいに咲いていますが、株全体としてはまだ咲き始めの状態です。「ツクバネ」は「突羽根」。すなわち羽根突きのことです。いったい何が羽根突きなのかというと、花冠の基部にある萼が羽根突きの羽根の形に似ているからだそうです。花冠の中の網目模様がよく目立つ花ですが、そこ(萼)に注目したかというネーミングです。

 三方山

 12時10分、三方山に到着しました。ここも山頂は木立に囲まれていて、雷電山に負けず劣らず眺望がありません。

 昼食

 山の行動食。これが今日の昼食です。バナナは平日も毎日欠かさず食べています。食物繊維が豊富でエネルギー効率も良いので、残業で小腹が空いたときにはお菓子よりバナナを食べたらよいと医者から言われたのです。(医者の言うことは何でも素直に聞いてしまうこの性格。)

 

 三方山の山頂からちょっと下るとこのくらいの眺望が開けます。

 

 三方山では30分ほど休憩。腹もくちくなったところでまた歩き出します。こちらは北方向(埼玉方向)の眺めです。山がパッチワークを当てたように斑模様になっています。春ですなあ。

 

 昼ご飯を食べた後は妻も(無駄に)元気。

 チゴユリ

 うつむいて花を咲かせるチゴユリ。小さく可愛いので「稚児」なのでしょう。
 この花の存在を初めて知ったのは広島県中部の虚空蔵山。チゴユリの生活史をテーマにした自然観察会に参加たときのことでした。当時、自然観察に参加し始めた頃で、もう15年近く前のことになります。チゴユリは全国に広く分布する植物ですが、それまでは気づくこともありませんでした。野山を歩いても見るつもりで見ないと見えてこないということでしょうね。そのとき配られた資料を読み返してみると、チゴユリが有性生殖(結実し種子を作る)と無性生殖(ランナーで分身を増やす)を組み合わせて次世代へ巧みに命をつないでいることが記されていました。自然の仕組みの妙ですね。そのときは説明を聞いても「ふーん」といった感じでしたが。

 

 午後1時、黒仁田分岐までやって来ました。ここから南に向かって延びる稜線に入ります。

 ミツバツツジ

 これはミツバツツジ。開くと三菱のマークのようになる3個の葉があることから「三つ葉」ツツジです。関東地方東部から東海地方にかけて分布しているそうです。ミツバツツジにはいくつもの兄弟がいて、例えば、東北南部から甲信地方にはトウゴクミツバツツジ、東海以西にはコバノミツバツツジ、中国地方にはダイセンミツバツツジ、九州中部にはサイコクミツバツツジ、といった具合です。ミツバツツジは雄しべが5個で子房(雌しべの根元の部分)に白く短い毛のようなものが密生しているのが特徴。これだけ覚えておけば「ふむ、これはミツバツツジではないな…」とか言えます。分布地域がダブっているトウゴクミツバツツジは雄しべが10個あるので、これも覚えておけば「雄しべが10個あるからトウゴクかもなあ。」とかもっともらしいことも言えます。実際のところyamanekoはとりあえず見分けポイントの写真を撮って帰って、図鑑で見比べることにしています(これが一番)。

 ヤマツツジ

 この辺りに分布する朱色系のツツジにはヤマツツジとレンゲツツジがありますが、両者は葉の形で見分けられます。レンゲツツジは細身の匙型、ヤマツツジは写真のように幅広です。ちなみにレンゲツツジはyamanekoの故郷、島根県大田市の市花でもあります。

 

 少し陰っていた日射しが戻ってきました。これだけで楽しさが2割アップになります。

 

 よちよち歩きの小さな子どもを連れた家族がハイキングをしていました。若夫婦と子どもとおばあちゃん(といっても50代か)。ほのぼのとしていました。

 

 あそこにもベンチが。この辺りはもう市街地に近いので、訪れる人も多いのでしょう。

 

 ほどなく山道は終わり、ここから林道になっていました。といっても一般車は入ってこられないようです。

 ヤマツツジ

 おおここのヤマツツジはきれいに咲いています。日当たりがいいからかな。

 矢倉台

 見晴らしの良い高台に東屋がありました。ここは矢倉台と呼ばれるところで、辛垣城から派出した物見台だったところだそうです。ここから敵の襲来を見張っていたのでしょう。

 

 その矢倉台からの眺めがこちら。結構高いですね。麓との標高差は200mくらいあります。

 

 林道沿いにはこんな花見スポットも。桜はもうあらかた終わっている感じ。ヤマザクラがまだちょっと残っているか。

 ヤブタビラコ

 ヤブタビラコが出てきたということは民家が近いというしるし。以前は田畑の脇などでよく見かけた植物です。漢字で書くと「藪田平子」。平子とは平べったいやつということ(子は、銭っコとかわらしっコとかと同じような接尾語)で、田の畦などで葉がロゼット状に平べったく地面に張り付いている様子を「田平子」と呼んだと考えられます。これのやや大型でごついものにオニタビラコというものがあり、それよりやや小ぶりなものでコオニタビラコというものがあります。一般に「田平子」といえばコオニタビラコのことを指すのだそうです。ややこしいですね。

 

 青梅の市街地がずいぶん近くなってきました。ここからだと標高差も100m程度です。

 ミツバアケビ

 これはミツバアケビの花。花序の上の方に着いているのが雌花、先端に寄り集まっている小さいのが雄花です。甘くて美味しいアケビの実を食べたことのない人も多いでしょうね。八百屋の店頭に並ばないのはやっぱり種が多くて食べにくいからでしょうか。

 叢雨橋

 叢雨橋まで下りてきました。ここまで来ると青梅駅はすぐこの下です。

 

 叢雨橋の先で林道から逸れて駅に向かって下っていきます。かなりの急斜面をジグザグに下りていくと、やがでシダレザクラの大木があるお寺の境内に出てきました。ここは梅岩寺という真言宗の古刹。桜の時期にはたくさんの人が訪れるのだそうです。
 ここから駅までは30mくらい。スマホで乗り継ぎ検索をすると5分後に乗り換えなしの特快があったので、小走りに駅に向かいました。
 
 ところがホームに行ってみると、中野新宿間で線路に人が立ち入ったとかでその列車は運休に。結局20分くらい待って、乗り換え2回の電車で帰ってきました。都心のトラブルがここまで影響するとは。でも、おかげでホームのベンチでふくらはぎのマッサージとかする時間がとれました(何事もプラス思考で。)。