来島海峡 〜ポカポカ陽気の岬めぐり〜


 

【愛媛県吉海町 平成15年3月2日(日)】
 
 久しぶりに日曜日に晴れました。
 今日は愛媛県の大島にやって来ました。広島県の尾道から愛媛県の今治までを10本の橋でつないだ「しまなみ海道」の通る島です。
 広島からだと、山陽道を河内ICで降りて竹原市の忠海(ただのうみ)港を目指し、そこからフェリーで大三島へ。しまなみ海道(正式には西瀬戸自動車道)を通って、塩で有名な伯方島を通過すると、都合2時間半で大島です。しまなみ海道の本土側の起点である尾道から橋づたいに行くとかなり遠回りになるのでフェリーでショートカットするのです。
 大島から先はというと、3連の来島(くるしま)海峡大橋を渡って四国の今治に到着です。

 吉海町の港

 大島の南半分が吉海町で、今治の街がすぐそこに見えます。ちなみに伯方島に面している北半分は宮窪町になります。
 瀬戸内の海はまるで鏡のよう。春の暖かな日差しのもとで本当にのどかな風景を見せてくれています。

 ホトケノザ  オオイヌノフグリ

 道ばたには春の草花が。
 自分の故郷の山陰地方とは春の訪れが一月くらい違うような気がします。
 顔を地面に近づけて横から眺めると、一面の花畑に見えることを知っていましたか?


 大島の南端に位置する「地蔵鼻」岬を巡る遊歩道があります。「大島自然研究路」と名付けられていて、山肌の中程を海面から50mくらいの高さで等高線のように延びている道です。
 あまりに天気がよいので、この道をのんびりと歩いてみることにしました。

 急な斜面の中程に
 作られている道

 道の両側には花こそありませんが、もう春がやってきたような感じです。
 すれ違う人は誰ひとりとしていません。
 降り注ぐ光。海から吹き上げてくる暖かい風。船の汽笛ものどかです。

 今治港へ向かう船
 生活路線として現役です

 大島と今治をつなぐ来島海峡大橋は3つの吊り橋で構成されていて、全長4,105mもあり、近くで見ると本当に巨大な構造物です。
 
 どの島もそうですが、ひと昔前までの島の暮らしは不便なもので、特に急に病気になったときのことなどを考えると日常的に不安と隣り合わせで暮らしていたのだそうです。実際、夜中に病気になったときなどは、港で船を頼んで本土に渡ったこともしばしばであったのだとか(瀬戸内生まれの妻の弁)。そういった意味では今は橋でつながっているというだけで、島に暮らす人々は大きな安心を得ることができるのです。
 確かに海峡の向こうには今治の街が手に取るように見えます。でも、古来「ここに橋がかかっていれば」と考えた人は多くいたでしょうが、現実に橋で結ばれると思っていた人がどれほどいたでしょうか。いやはやその技術力にはため息が出るほどです。

 春の海

 来島海峡は瀬戸内海の大動脈であり、かつ、船舶にとって最大の難所です。
 5つの島にはさまれたこの海峡は逆S字型をしていて、最狭部は幅3q。約6時間ごとの潮の満ち干のとき7〜10ノットにも達する潮流が発生し、その際海底の複雑な地形の作用で大きな渦が発生することもあるそうです。
 潮流は、満ちるときには北から南へ、干くときには南から北へ向かい、その様子はさながら大河の流れのよう。事実海峡を横断して今治に向かうフェリーを見ていると、船首は進行方向を向いていながらそのまま横滑りするように流されていく様子がよく分かります。

 来島海峡
 
海上保安庁HPより

 来島海峡の交通ルールは複雑で、東水道、中水道、西水道に分かれているのだそうです。
 潮の流れと同じ方向に航行する場合は中水道を、潮の流れと逆の方向に航行する場合は西水道を通ることとされていて、このルールを「順中逆西」というのだそうです。でも、転流時には混乱しそうですよね。そもそも初めて通る船はそのルールを知っているのでしょうか。きっと今治側にある海上保安庁の来島マーチスから指示を出しているのかもしれません。
 ちなみに、東水道は北東方向からやって来た船舶がこの海峡を横断して今治港を目指すときに使用するのだそうです。

 岬の先端の展望台と
 その先に広がる燧灘

 展望台まで来ると大パノラマが広がっていました。
 聞こえるのは汽笛のみ。ここに座って海峡を通る船を見ているだけでもまったく退屈しません。
 見上げると上昇気流をつかまえたトビが、弧を描きながら高く高く登っていくのが見えました。

 「イカの足」

 今日は、早春というよりも春本番といった感じの一日でした。
 心を忘れる日々からほんのひととき解放され、心身ともにリフレッシュされたような気がします。(花粉もたっぷり浴びましたが。)

 来島海峡大橋