乗鞍高原 〜This is 森林浴〜


 

【長野県 松本市 平成20年8月21日(木)】
 
 昨夜はキンキンに冷えたビールと露天風呂で極楽気分を味わい、そのままぐっすりと就寝。そして涼しい高原での一夜が明けました。夜半にザッと雨が降ったらしく、地面や木々の梢が濡れています。でも空には青い部分が広がりつつあり、これから回復していく様子。今日は午前中はのんびりして、午後から乗鞍高原の散策に出かけてみたいと思います。

 休暇村乗鞍高原

 散策のベースは休暇村乗鞍高原。宿のある鈴蘭地区から車で5分。標高は約1600mなので、その差150mほどです。駐車場にドリーム号を停めて、さあ、歩き始めましょう。


Kashmir 3D

 今日のコースは、まず休暇村近くの牛留池というところに寄って、そこから山道を下って行くと一ノ瀬園地という開けた場所に出るので、そこの往復を考えています。一ノ瀬園地は鈴蘭地区と標高がほぼ同じ。鈴蘭地区から山裾を巻くようにして車道が通っていて、キャンプ場や散策路などが整備されています。

 シラカバとツガの小路

 休暇村から近くの牛留池までは木道が整備されていました。今日も乗鞍岳の山頂は雲の中。そこからはぐれてくるのか、ときおり霧雨の微細な粒が顔に当たることも。風は涼しく、気持ちいい散策になりそうです。

 ゴゼンタチバナ

 ゴゼンタチバナが朱い果実を付けていました。木漏れ日のスポットライトを浴びてよく目立っていました。このような赤い実がこの辺り一面に広がっていて、これを見ると花の時期の見事さを想像するに難くありません。

 ミズバショウ

 このラフレシアもビックリの巨大な葉、なんとこれはミズバショウの葉なのです。高さはゆうに1mを超えています。♪遙かな尾瀬〜、に咲いているあのミズバショウが、夏になるとこんな姿になり果てて、いや、成長してしまうのです。東欧やロシアのうら若き女性が中年になると…、といった話を連想してしまいました。

 牛留池

 溶岩台地の窪地にできた牛留池。氷河期からの生き残りのミツガシワが生い茂っています。これも花の時期には素晴らしい風景になるでしょう。ミツガシワといえば初めて赤名湿地の小さな池で見たときのことを今でも忘れません。あの自然は今も保たれているでしょうか。

 根曲がり松

 牛留池の畔にあった、どうかしてしまった松。うーん、いったい何があったのか。雪の重みで折れても、こうはうまく回らないですよね。よく見ると丸まっている部分は地面に接していないんです。しかも幹が交差している部分も離れていて、本当に知恵の輪(懐かしっ!)の様になっているんです。で、なおかつ高く伸びている。幹のいたるところに異常な負荷がかかっているでしょうね。よく倒れないものです。

 小さな世界

 岩の窪みを土が覆い、そこに種子が着地して小さな世界を作っています。根をしっかり張って土をつかみ、ちょっとやそっとでははがれないでしょう。何十年、何百年経って、この岩を抱くように根を伸ばした巨木がここに立っているかもしれません。

 ベニバナイチゴ?

 モビールのようにつり下がっていたイチゴ。いろいろ調べましたが結局名前は不明。もっとも近いのはベニバナイチゴか。葉は複葉で、小葉は5個。刺はあまりありませんでした。ベニバナイチゴなら食べてみればすぐに分かったかもしれませんが、賞味しなかったものですから。

 ムシカリ

 ムシカリです。葉がよく虫に喰われることから「虫喰われ」→「ムシカリ」と転訛したのだそうです。果実は完全に熟すと黒くなり、枝の赤い色とのコントラストを鮮明にして鳥へアピールするのだとか。これを二色効果というと図鑑にありました。鳥は目がいいですからね。

 ミクロの世界

 ファンタジー系RPGに出てきそうな世界。こんな森に迷い込んだら、そう簡単には脱出できません。といってもこれは岩を覆ったコスギゴケの写真。近づいて視線を低くしてみると、こんな世界に遭遇することもあるんですね。

 山道を下る

 山道をどんどん下っていきます。木漏れ日の中を歩くのは気持ちいいもの。(でも、帰りにここをまた登らなければならないのですが。)

 イチヤクソウ

 つい見逃しがちですが、足下にイチヤクソウが実を付けていました。果実も花と同様にうつむき加減に付いています。イチヤクソウの名は一つの薬草で多くの病に効くということからだとか。漢字で書くと「一薬草」です。

 シラカバの林

 This is 森林浴。気持ちいーーー! っと。

 ヤマハギ  オトコエシ

 林縁にはヤマハギ。8月とはいえ、もう秋ですなあ。そして、黄色いオミナエシに対して白いオトコエシ。これも野に秋の訪れを告げています。ぱっと見ごちゃごちゃっとした感じですが、よく見てみると可愛いです。小さな花ってのは大抵そうですよね。

 ツノハシバミ

 面白い形の果実。ツノハシバミの果実です。ハシバミ同様に古くから食用にされていました(緑の筒状の中に入っています。)。おつまみでお馴染みのヘーゼルナッツは近縁のセイヨウハシバミの果実です。

 サラシナショウマ

 長い花茎を風にまかせてゆったりとそよいでいるサラシナショウマ。花をよく見てみると複雑な構造です。花の基部にある幅の広いいかにも花弁のような形をしているのは萼片。線状に多数飛び出ているのは雄しべ。本物の花弁は雄しべに紛れるように中心に3個あるのですが、ちょっと分かりませんね。

 マルバダケブキ

 マルバダケブキは薄暗い林の中でもよく目立ちます。深山のやや湿ったところを好む大型の花。漢字で書くと「丸葉岳蕗」で、名前のとおり丸い葉を付けています。

 一ノ瀬園地

 一ノ瀬園地まで下りてきました。涼しい風が湖面を渡ってきて、汗を冷やしてくれます。これまではずっと森の中だったので、ひろびろとした草原に開放感いっぱいです。日当たりがよいので必然的に花の種類も多くなります。

 ヤナギラン

 デジカメの弱点で花の色が若干青みがかっていますが、人間の目にはピンクに映ります。背丈1.5mで、遠くからでもよく目立つ大型の花。葉が柳のそれに似ることからヤナギの名が付いています。でも、ヤナギランといってもランの仲間ではありません。(アカバナ科です。)

 クガイソウ

 高原に似合う花、クガイソウ。そういえば谷川岳でも遭ったっけ。葉っぱが凛々しいなぁ。

 キバナノヤマオダマキ

 キバナノヤマオダマキには涼やかな印象を受けます。例えるなら浴衣姿の女性のような。

 午後の高原

 さあ、だんだん日射しが傾いてきました。また、もとの休暇村を目指して歩き始めましょう。
 真夏の午後だというのにこの快適さ。つい先週まで、いや、つい3日前までの汗まみれの深夜残業も遠い世界のこととしか思えません。まったく。
 まだ夏休みは続く。極楽、極楽。