武蔵野湧水巡り 〜冬晴れウオーキング〜


 

【東京都 練馬区・杉並区・三鷹市 平成23年12月11日(日)】
 
 何かと会合の多い年末。余分なカロリーは摂取しないように心がけてはいるものの、帰宅後についつい甘いもの(羊羹とかビスケットとか)を口に入れてしまいがちなyamanekoです。そこで、摂ったものはしょうがない、あとはどれだけ消費できるかじゃないか、と開き直り、この週末はウオーキングでもして帳尻を合わせることにしました。
 とはいえ、ただ漫然と歩くのも気乗りがしないので、以前からやってみたかった「武蔵野湧水巡り」をウオーキングを兼ねてやってみることにしました。 


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 武蔵野の東部、23区エリアとの境目あたりにはいくつかの湧水があり、それぞれ公園として整備されて都民の憩いの場になっています。主なものでは北から石神井公園(練馬区)、武蔵関公園(練馬区)、妙正寺公園(杉並区)、善福寺公園(杉並区)、井の頭公園(三鷹市)がそれで、いずれも標高50m前後のところに位置しています。
 武蔵野と言えば武蔵野台地。奥多摩の関東山地を深く削りながら流れ下ってきた多摩川は、浸食してきた大量の土砂を使って大規模な扇状地を作りました。その後扇状地の上には火山噴出物からなる関東ローム層が厚く覆い被さりましたが、西高東低になだらかに傾斜する地形自体は維持され、これが現在の武蔵野台地の大部分を占めています。扇状地の内部は砂層や礫層などの水を通しやすい地層となっているので、扇状地の中央部では川は地中を流れ、先端部で地表に現れることになります。なので、武蔵野中西部では昔から深い井戸を掘らなければならないなど水に苦労してきた歴史があり(これを改善したのが玉川上水とそこから分流する各用水だったそう。)、一方で武蔵野東部や山の手では、湧水のおかげで農耕や生活に必要な水に比較的恵まれていたのだそうです。
 石神井公園や武蔵関公園の湧水は石神井川となって流れ出し、井の頭公園の湧水は神田川として流れ出して、いずれも隅田川(隅田川はその昔荒川本流だった。)に注いでいます。また、善福寺公園からは善福寺川が、妙正寺公園からは妙正寺川が流れ出ていて、善福寺川は中野区弥生町あたりで、また、妙正寺川は新宿区高田馬場あたりで神田川に合流しています。

 西武池袋線 石神井公園駅

 池袋駅で山手線を西武池袋線に乗り換えて、9駅目の石神井公園駅で下車。この駅は以前埼玉県内に通勤していたときに毎日通過していた駅で、池袋から急行に乗ると最初に停まる駅として印象に残っています。でも、その頃この駅で乗降したことはありませんでしたが。現在では線路の高架工事に併せて駅舎も立派になりつつありました(後ろの高層マンションは違います。)。
 時刻は12時ちょうど。さあ、ここからウオーキングの始まりです。天気は上々。まずは駅前の商店街を抜けて石神井公園に向かって歩いていきます。


 
 石神井公園 12:20


 商店街の途中から路地に折れると、その先は石神井公園に向かって下る坂道。下りきると石神井池の畔の遊歩道は見事な紅葉でした。石神井池はもともとこの奥にある三宝寺池から流れ出た水路だった部分をせき止めて、昭和の初め頃に作った人工の池だそうです。

 三宝寺池

 こちらは古来より池として存在していたといわれる三宝寺池。中世、この辺りを支配していた豊島氏(室町時代に滅亡)はこの水源を支配するために、池の南側の高台に城を構えていたそうです。当時城から眺める武蔵野台地は茫々たる風景だったでしょうね。

 三宝寺池

 いったいどこの田舎かといった風情ですが、木立の向こうには市街地が広がっています。周囲の宅地化が進展するにつれ湧水量は減ってきたとのことで、現在では地下からくみ上げているそうです。
 木立に隠れるように建っているのは厳島神社。創建の年代は不明というほど由緒のある(?)神社だそうです。池に突き出るような半島状のところに建てられています。

 イイギリ

 ブドウの房のように垂れ下がっているのはイイギリの実。大きな木で、遊歩道をまたいで伸びた枝の先が水面に着きそうなくらいに枝垂れていました。

 The 練馬

 三宝寺池の端から4mほどの崖を登って住宅街に出て、次の武蔵関公園を目指します。ここから西に約3.2q、上の写真のような長閑な風景の中のウオーキングです。

 西武新宿線

 武蔵関駅付近を行く西武新宿線。旧型車両です。
 池袋線はJR池袋駅に乗り入れていますが、新宿線は新宿駅の400m手前のところで途切れていて、JR新宿駅と西武新宿駅との乗り換えが不便と思っている人は多いはず。戦後まもなくはJR新宿駅東口(現ルミネエスト2F部分)に接続する予定だったそうでが、計画は頓挫したそうです(理由は諸説あり。)。


 
 武蔵関公園 13:00
 

 武蔵関公園はこぢんまりとした静かな公園でした。元々は私設の公園だったそうで、その前は「関の溜め井」と呼ばれる灌漑用の池があったそうです。細長い富士見池の水面に色とりどりの樹木が映り込んでいます。

 芦の島

 池の南端にある芦の島はほとんど巨大なメタセコイアで占められていました。この威圧感。ラピュタか?

 池の畔

 歩いていてなんとも気持ちのいい遊歩道。上を見ながら歩いて行きたいです。 
 石神井川の水源はここから5q上流にある小金井公園内とされていますが、もともとは石神井公園の三宝池が水源で、それより上流にある流れは大川という支流であったという説もあるそうです。

 西武新宿線 東伏見駅

 富士見池をぐるっと一周してから、最寄りの東伏見駅へ。ここから次の妙正寺公園へは電車を利用。西武新宿線で新宿方面に4駅ほど戻って井荻駅に向かいます。

 

 西武新宿線 井荻駅

 電車はあっという間に井荻駅に到着。歩きに比べるとまるで瞬間移動のようです。

 住宅街

 駅を出て南東方向に歩いて行きます。あたりは上の写真のような閑静な住宅街が延々と。


 
 妙正寺公園 13:45
 

 井荻駅から10分ちょっとで妙正寺公園に到着。この公園は今日巡る公園の中で一番小さい公園です。湧水自体は古くからのもので、その畔に南北朝時代に建てられた妙正寺という寺が今もあります。

 イチョウ

 今から1億5千万年前のジュラ紀には地上を席巻し大繁栄していたイチョウ科の植物。今ではこのイチョウ1種が生き残っているのみだそうです。イチョウは寿命が長く、各地で大木が見られるのだとか。この小さな公園にも写真のような大きなイチョウが聳えていました。一つの個体の寿命が長いというのも種として生き残ってこれられた要因なのかもしれません。

 妙正寺池

 池の中にある弁天島がこんもりとして可愛いです。かつてここには弁財天が祀られていたそうです。

 環八

 次の善福寺公園は妙正寺公園から西方向に約3q。歩き出してすぐに環八を横断しました。環八とは環状8号線のこと。「環状」といいつつ、計画当初から西側(山の手)のみの半円状状だったのだそうです。
 夏の暑い日には、その環八に沿うようにして「環八雲」なる積雲の列ができるのだとか。この雲はゲリラ豪雨の一因ともなっていて、その発達に環八を通行する車の排ガスが関係しているとのことです(環七にも環七雲あり。)。

 残り柿

 昔は農家だったであろう民家の庭先に古い柿の木がありました。葉はすべて落ちて、残り柿が初冬の日射しを一身に浴びていました。どこかからモズの高い鳴き声が聞こえてきそうです。

 善福寺公園

 善福寺公園に到着。この公園は上池(善福寺池)と下池とがあり、その間は上の写真のような低地になっています。


 
 善福寺公園 14:20
 

 善福寺池の畔に出てきました。この池は豊かな水量を誇っていて、今でも東京都水道局の水源になっているそうです。
 池の畔は紅葉のトンネルですね。それにしてもまだ2時過ぎなのに日陰では肌寒さを感じます。

 善福寺池

 池の名前は昔池の畔にあった善福寺という寺から。でも、その寺は江戸時代には廃寺になってしまったそうです(現在、付近に善福寺という寺があるそうですが、これはもともと違う名前だった寺が後年になって善福寺と名乗ったものだそうです。)。

 善福寺池

 冬日向。雲一つなく、穏やかで開放的な気持ちになります。

 杉並浄水所

 善福寺公園のすぐ隣にあった東京都水道局の杉並浄水所。水源は善福寺池…ではなく、地下水を汲み上げているのだそうです。手前にある銀色の円筒はアメダスですね。
 さて、次はいよいよ最後の湧水、井の頭公園に向かいます。

 ターンテーブル

 住宅地の中に突然面白いものが現れました。路線バス専用のターンテーブルです。この辺りは道が細く、入り組んでいるので、切り返しで方向転換することができないのでしょう。

 百日紅

 夏の日、紅色の花を揺らしていたであろうサルスベリ。今は種を落とした果実の殻が残るのみです。


 
 井の頭公園 15:00
 

 井の頭公園に到着。これまで基本的に住宅地の中を歩いてきましたが、吉祥寺駅周辺は休日ということもあり凄まじい人出でした。みんな何しに集まっているんだろう?
 そして井の頭公園もびっくりするほど人が多かったです。観光地かというほど(いや、立派な観光地か。)。

 お茶の水

 池の畔まで下りてきたら「お茶の水」という湧水がありました。徳川の将軍が茶の湯に使ったということです。井の頭池には7つの湧水があったといいますが、これはそのうちの一つでしょうか。

 

 モミジの大木。枝の下から陽に透かしてみる紅葉もいいものです。ステンドグラスみたいで。

 井の頭池

 5つの湧水を回りきって、陽もずいぶん西に傾いてきました。

 

 井の頭公園といえばスワンボートといってもいいくらい。名物ですね。yamanekoも子どもが小さい頃に乗ったことがあります。写真では分かりにくいかもしれませんが、おびただしい数のボートが浮かんでいました。きっとあちこちでぶつかり合っていると思います。

 JR 吉祥寺駅

 帰りはJR中央線の吉祥寺駅から新宿を目指します。
 今日の歩行距離は約13q。ウオーキングとしては十分な距離です。しかもスタンプラリー式に湧水を巡りながら歩いたので、楽しみながら歩くことができました。さすがに足の筋肉が張っているのは否めません。帰って風呂でマッサージです。

 

 午後4時、自宅に戻ると黄金に輝くスカイツリーが見えました。今日一日の晴天が最後に見せてくれた黄昏の風景です。
 さあ、体が冷えてきたので、風呂、風呂。