武蔵丘陵森林公園 〜里山景観まるごと展示場〜


 

【埼玉県 滑川町 令和3年2月6日(土)】
 
 遅く起き出した休日。天気も上々だし、まだ花粉もそれほど飛んでいないみたいだし、日頃駐車場で待機の多いドリーム号Vの散歩がてらにどっかに行こうという話になりました。
 広々としていてあまり人出の多くないところという条件で脳内検索し、埼玉県比企郡滑川町にある武蔵丘陵森林公園に行ってみることにしました。
 
                       
 
 車で武蔵丘陵森林公園に向かうには関越道を東松山ICで下りることになり、そのせいでてっきりこの公園は東松山市にあるものとばかり思っていました。標高100m前後でなだらかにうねる丘陵地は里地里山の風情満載。今回15年ぶりの訪問となりますが、子どもが小さい頃にも何度か来ているので、懐かしくもあります。
 ちなみに地理的には「武蔵丘陵」と呼ばれるところはないようで、秩父山地の東側から小川町、嵐山町、滑川町、東松山市と荒川に向かって東西に延びるこの丘陵地は「比企丘陵」となるのだそうです。
 

 Kashmir3D

 上の地図で薄赤く塗られている部分が武蔵丘陵森林公園(なんか沖縄本島に似ていないか?)。大きさは、南北約4q、東西約1qだそうで、なんと東京ドーム65個分だそうですが、このくらい大きいと何か別のものと比較してもらわないとよく分かりません。で、この大きさなので入り口も4箇所あり、それぞれに大型駐車場が併設されています。駐車場の収容量は全部合わせると1千6百台超。この他に臨時駐車場もあり、総収容量は優に2千台は超えていると思います。
 今日は中央口から入ります。

 ゲートの先の広場

 中央口のゲートをくぐって、散策開始。時刻は12時45分です。

 シナマンサク

 今日の散策では特段花には期待していませんでしたが、いきなり満開のシナマンサクが出迎えてくれました。きっと栄養状態が良いのでしょうね。野生のものでこんなに花付きの良いものに出会ったことがありません。

 シナマンサク

 シナマンサクは開花期にも前年の枯れた葉が枝に多く残っているのが特徴です。



 これは外来のマンサク。
 マンサクの花はお湯で戻す前のカップ麺みたいですが、これが盛りの状態。もともと蕾の中ではクラッカーの中に収められている紙テープのように丸く巻かれて格納されていて、それがほどけて開花するとこの状態になるのです。



 これも外来種。オレンジ系ですね。

 コナラ

 丘を上ると大きなコナラが。広いところで自由に育つとこういう樹形になるんですね。

 シクラメンの原種

 足下にピンク色の花が。こんな寒い季節に? これはシクラメンの原種なのだそうで、現在育成中のようでした。視線を低くしてよく見てみると、確かに花弁が反り返ったシクラメン特有の形をしていました。でも背丈は小型のスミレくらい。これを鉢植えで見栄えが良い形にまで改良していったんですね。



 テイカカズラに乗っ取られた樹木。



 アカマツの林を巡っていきます。アカマツ林は関東ではあまり見かけませんが、これは自生でしょうか。



 丘の向こうには広場がありました。その先の階段を上がるとハーブガーデンや花壇などがあるエリアです。

 オオイヌノフグリ

 オオイヌノフグリ。花壇の花もいいんですが、小さくてもこっちの方に惹かれてしまいます。春の訪れを感じさせる花です。

 ホトケノザ

 こちらも早春から咲いているホトケノザ。ところでこの花はどんな実を付けるのでしょうか。そういえば見た記憶がありませんが。



 ハーブガーデンのエリアを通り過ぎて反対側に下っていきます。この辺りに来るとほとんど人と行き違いませんでした。静かな散策です。

 てべ沼

 「てべ沼」というため池の周りを歩いて行きます。この辺りは丘陵地なので元々は農業用として作られたものでしょうね。谷戸の奥を堰き止める形で作られています。この立地だと、周囲に降った雨が集まり、溜まった水は自然流下で灌漑できるという理にかなった造りになるということです。

 キッコウハグマ

 足下に何やら花殻が。細い茎の先に集まっていて、まるで線香花火を逆さに立てたような感じです。根元の落ち葉をよけてみると、ああ、この葉はキッコウハグマのものですね。 花の後はこんな姿になるんだ。新たな発見でした。

 クヌギ林

 てべ沼からまた別の丘に上がるとクヌギの林でした。明るい林ですね。

 渓流広場

 少し場所を移動するだけでいろんな風景が現れます。ここは渓流広場。この公園は、里山景観をまるごと囲って展示場にしたかのように、いろいろ考えて作られているようです。
 ここ武蔵丘陵森林公園は全国初の国営公園として昭和49年に開園したそうです。当時はこの周辺に住んでいた人たちは、いったい何が造られるのかと驚いたでしょうね。そして、なぜここに白羽の矢が立ったのか不思議だったのではないでしょうか。有力政治家でもいたのかな。

 記念広場の丘

 記念広場へと続く斜面はサクラの林でした。何の記念かというと、「明治百年記念」。明治百年とは明治の年号がずっと続いていれば「明治百年」となるということですが、そもそもこれは1967年、昭和42年に当たります。その翌年に記念式典が行われ、関連する記念事業が各地で行われたそうですが、この公園もそのの一環として作られたもので、開園したのが6年後の昭和49年だということです。まあそのくらいの期間はかかるでしょうね、この規模だと。

 ヤブツバキ

 ここまでずっと枯れ色の世界を歩いてきましたが、どうですこのいきいきとした葉。ヤブツバキの葉は表面がテカテカしていて緑色をより一層輝かせます。日光を照り返すのでこのような葉を持つ樹木は「照葉樹」と呼ばれています。



 記念広場の丘を反対側に下って行くと水面が見えてきました。山田大沼です。

 山田大沼

 武蔵丘陵森林公園内には40を超えるため池があるそうです。もちろん公園を造成する際に造られたものではなく、もともと付近一帯の丘陵地には多くの農業用ため池が点在していて、公園のエリア内にも多数含まれていたということでしょう。山田大沼はその中でもダントツに大きいため池です。水鳥たちもたくさんいるようですが、ここではカワウの集団繁殖でいろいろ困っているのだそうです(糞害とか)。

 コガモ

 池の中程にあるヨシ島にコガモのつがいがいました。寒いのか頭を体の中に埋めるようにしてじっとしていました。



 対岸には井戸端会議をするコガモたち。北国への旅立ちの日取りでも相談しているのでしょうか。

 中央入口広場

 2時20分、中央入口の広場まで戻ってきました。のんびり1時間半の散策でした。しかもポカポカ陽気で。
 帰りも関越道でスイスイといきたいものです。
 



 ところで、関越道の東松山IC。起点の練馬ICからここまでが大都市近郊区間に設定されているそうで、その区間は普通の区間に比べて料金が割高なのだとか。大都市近郊は建設費用がかさむからだそうです。
 他にも東北道では川口JCT〜加須IC、常磐道では三郷IC〜谷田部IC、東関道では湾岸市川IC〜成田IC、東名高速では東京IC〜厚木IC、中央道では高井戸IC〜八王子IC、圏央道では海老名南JCT〜久喜白岡JCT、などだそうです。
 もっとも、東松山が大都市近郊に当たるのかについては、今日歩いた風景を見る限り議論があるかもしれませんが(笑)、里山景観の場所が虫食い状に開発されたような地域を含めて近郊とすることもあるようなので、まさにこの辺りは「大都市近郊」なんですね。加須も谷田部も成田もきっとそうなんでしょう。「近郊」は思ったよりも遠くまでなんだ。

 
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