向原 〜早春の里山(観察会下見)〜
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【広島県向原町 平成15年3月9日(日)】
寒いっ!
啓蟄も過ぎたというのに、頬を刺すような冷たい風。
今日は来週の定例観察会の下見のために、広島市の北隣、向原町にやってきました。
標高200mとはいえ内陸部ゆえの冷え込みが朝の山里を覆っていました。強風にちぎられた雪雲が青空を猛スピードで動いていきます。小雪とともに大量の花粉も舞っていることでしょう。
ミツマタの谷 |
まず地元の方が日頃から手入れをしておられるミツマタの谷に向かいました。
苔むした小岩がごろごろしている、決して肥沃とはいえない谷の斜面に、ミツマタの林が広がっていました。
低木なのでちょうど目の高さで花を観察できます。今日はまだ開花していませんが、あと2、3週間もすると、小さなシャンデリアを辺り一面にぶら下げたような景色を見ることができます。
すでに「紙」 |
ミツマタの皮の繊維は強く長いので昔から良質な紙の原料とされてきました。
皮をむいてみると、表皮のすぐ下にある繊維は斜めにクロスしていて、すでに紙のようになっていました。本当は極寒の中で水に長く浸けて繊維をほぐしたあとでなければ紙にはなりません。
場所を移動して、今度はカタクリの自生地へ。といっても幟を立てて町興しをしているあの「カタクリの里」ではありません。とある集落の里山の縁にあるひっそりとした(今は)自生地です。
カタクリの芽 |
強い風に乗って青空のどこからか小雪が飛ばされてきます。
思わず小さく足踏みをしてしまいそうなくらい、寒い。花の季節にはまだ遠いといった感じです。
でも春の準備を始めているカタクリもありました。
ミクロの世界 |
サボテンにまち針を刺したようなこの物体は苔の一種です。カタクリの傍らで生きていました。
球の部分が直径3o、針の部分が長さ8oほど。テントウムシのサイズに縮んでこの中に紛れ込んだらおもしろい景色が見られるでしょうね。手塚治虫の「火の鳥」に出てくる遠い銀河の惑星のような世界です。
針の先端の丸い部分から胞子でも撒き散らすのかと、この時期敏感な自分としては警戒したのですが、半分に割ってみると何のことはない中はジューシーな果肉のようになっていました。
セリバオウレン |
こんなに寒い中でも花に出会いました。セリバオウレンです。
カタクリやセツブンソウなどと一緒にいることが多いです。生育環境が似かよっているのでしょう。
けっこうあちこちに咲いていましたが、春を目前に控えているこの季節のことですから、来週の観察会本番ではもっとたくさん咲き誇っていることでしょう。でもカタクリはやっぱりまだか。
下見が終わってもまっすぐ帰らないのが、われわれの行動パターンです。
広島市安佐北区にあるユキワリイチゲを見に行きました。3時頃でないと陽が当たらないところに生えているので、下見が終わってから車を走らせてちょうどよいタイミングです。
林床のルビー | 草むらのサファイア |
かわいい宝石を見つけました。
真紅のルビーはヤブコウジの実、紺碧のサファイアはジャノヒゲの実です。
午後のやわらかな光を反射して輝いていました。
ユキワリイチゲ |
今年もまた会えました。ここのユキワリイチゲに。
ようやく陽が当たり始めたところなので花弁(のように見えますが実は萼片)を開ききっている花はありませんでした。写真の花が一番開いている方です。もうじき陽がかげるので、ほとんどの花は今日は開かずじまいでしょう。
もう少し暖かくなってからまた来てみたいです。
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