三次市街 〜川が集まる街〜
【広島県三次市 平成15年2月23日(日)】
最近、週末に天気がぐずつくパターンにはまっているようです。
今日も昨日の雨をひきずっているような、どんよりとした曇り空。でも、やっぱり出かけでしまいます。
行き先は広島県北部、中国山地の山懐に抱かれた三次市です。
尾関山公園 |
桜の名所の尾関山公園は今は寒々としていますが、梢を飛びかう鳥を見るにはちょうどよい場所です。
エナガ、メジロ、コゲラ、ヤマガラ、シジュウカラ、ルリビタキ、アトリ、キクイタダキ、イカル、ツグミ、などなど、わずかな時間のうちにこんなに出会えました。
桜の冬芽 |
もうすぐです。春はもうすぐ。あと1ヶ月もすると桜の花がいっせいに咲き始めて、今日は誰もいないこの公園もうきうき気分の人達でにぎやかになることでしょう。
三次市街 | 江の川 |
尾関山公園は、江の川の河畔にせり出した小高い丘陵の頂にあり、もともとこの地を治めていた三吉氏の家臣が城を構えていたところだそうです。
ですから見晴らしがよくて、三次市街を一望することができます。
この街は霧が有名で、三次盆地を覆い尽くす霧の海は風景写真家に人気です。放射冷却でぐっと冷え込んだ冬の朝、川から立ちのぼる水蒸気が作る幻想的な風景です。でもたいがい10時過ぎくらいまではにはきれいに晴れていきます。
三次は四方八方から川が流れ込む場所で、しかも盆地で空気が移動しにくいといったことが霧の名所たる所以でしょう。昔から川船を使った荷役で栄え、今も鵜飼(市無形文化財)が行われるなど、この街の人の生活は川と密着しています。
三次に流れ込む川は、南西から江の川(上流部にあたるこの地域では「可愛川」(えのかわ)と呼ばれます。)、南から美波羅川、南東から馬洗川、東から上下川、北東から西城川、北から神野瀬川と、ほぼ逆放射状に集まってきています。唯一西方向からは流れ込んでいませんが、なぜかというと、三次でこれらの川を集めた江の川が日本海に向かって流れ下っていく方向だからです。
上空5000mからの眺め(?) |
その流域が三次市を中心に円形に広がっていることは、周辺自治体の配置からもうかがうことができます。
←は流入 ←は流出 |
もともと市町村の境界は、山の稜線や河川など自然の地形をもとに定められていることが多いことはご存じのとおりです。三次市周辺の市町村が三次市を取り囲むようにあることと、川が三次盆地に向かって集まってくることとに因果関係の存在を感じます。(上の図から、ピンクの円に沿って市町村があるのが分かります。薄緑色の市町村は概ね流域と一致しています。)
三次盆地は東西に延びる中国山地の南側にあるにもかかわらず、そこに集まる川は江の川に集約された後、中国山地を越えて(?)島根県江津市で日本海に注ぎ込みます。これがなんとも不思議な感じです。
太古、中国地方はなだらかな地形で、原始の江の川は緩やかに蛇行しながら日本海(今の海岸線から遙か何10qも沖合にあったのではないでしょうか。)に注いでいたと考えられています。この原始江の川の浸食作用がその後に隆起する中国山地の隆起速度を上回っていたのでしょう。結果として中国山地を切り裂くように横断する形になっています。スケールは違いますが似たような話がヒマラヤ山脈にもあるそうで、世界の屋根といわれる山嶺を切り裂いて流れ下るカリガンダキ川という川があるそうです。そうとう激しい流れなんでしょうね。一方、隆起速度に勝てなかったのが、ヒマラヤを大きく東に迂回して流れるブラマプトラ川なのだそうです。
三次盆地に集まる川たちは、その途中途中で集落を潤しながら流れてきます。
例えば、江の川(可愛川)は西中国山地に端を発し、大朝町、千代田町、吉田町などで集落や農耕地に恵みを与えています。反対側から流れてくる西城川にしても然り。西城町や庄原市などを通って三次に至ります。そして一本に集まって中国山地の切れ目から島根県に向かうのです。
ところで江の川って何歳くらいなんでしょうか?
ついでに三次風土記の丘に行ってみました。
この辺りは中国地方では数少ない古墳密集地だそうです。