皇鈴山 〜路傍の花々に癒やされる(後編)〜


 

 (後編)

【埼玉県 東秩父村・皆野町 令和5年4月9日(日)】
 
 路傍の花々に癒やされる皇鈴山での野山歩き。後編です。(前編はこちら
 

 Kashmir3D

 秩父高原牧場の駐車場を10時過ぎにスタートして、稜線を北上。右手は東秩父村、左手は皆野町で、その境目の稜線です。
 11時30分、二本木峠に到着。ここから山道になります。



 二本木峠、愛宕山から皇鈴山にかけてツツジが多いことを示す看板。

 クサノオウ

 ケシ科のクサノオウ。茎を折ると黄色の乳液が出て、これには薬効があることから(有毒でもある)、漢字では「草の王」とも「草の黄」とも書きます。



 さあ、これから愛宕山に向かって山道を登ります。

 シロバナタチツボスミレ

 花弁が白く輝いていますね。シロバナタチツボスミレです。タチツボスミレの白花品で、距まで真っ白。距に紫色が残るものをオトメスミレというのだそうです。



 登山道脇にこんな看板が。このなんでもない場所でなぜそれを強調するか。ちょっと実感が湧きません。



 しばらく行くと小さな天文台のようなものが現れました。調べてみると、東秩父村営の「東秩父星のまち二本木峠天文台」という施設ということが分かりました。昭和63年に完成したもののようですが、今でも稼働しているのでしょうか。周囲の樹木の茂り具合からすると…。

 愛宕山山頂

 登り始めてから15分弱で愛宕山の山頂に到着しました。木立に囲まれていて眺望はいまいちですが、この季節はまだ木々の間から麓の様子もうかがうことができます。

 防火線建設記念碑

 山頂に建っていた石碑。人の背丈ほどもありました。「防火線造設紀念」「昭和六年三月完成」「槻川村建之」の文字が刻んでありました。当時の村長が、大事な山林を火災から守るため(失業対策でもあったとか)、尾根に沿って土塁を造り防火線としたのだそうです。



 明るい山道を歩いて行きます。ここから一旦車道まで下ります。

 車道

 ほどなく車道が見えてきました。これを渡った先を登り返します。



 さあ、皇鈴山に向けての登りです。木陰の道で気持ちよさそうです。

 カキドオシ

 カキドオシ。漢字では「垣通し」と書きます。これは、花期が終わった後に伸び出す蔓が、垣根を通り抜けるほど旺盛に繁ることから付いた名前だそうです。

 ヘビイチゴ

 ヘビイチゴの花冠はボウル状に弯曲していて、中心部に熱が集まる構造になっているようです。早春の虫たちにとってはありがたいでしょうね。

 クロモジ

 クロモジ。花は下向きに付きますが、実はどちらかというと上向きになります。つやのある黒い球形の実です。



 心が解放されるような登山道。幸せを感じます。



 こんな道だったら多少の急登でも苦になりませんね。

 ヒトリシズカ

 ヒトリシズカの二人連れ。

 クサボケ

 クサボケ。天然の生け花のようです。



 ちょっと分かりにくいですが、前方に皇鈴山の山頂が見えます。あとちょっとです。



 階段が出てきました。山頂が近いのかも。

 モミ

 モミの葉です。先端は2裂して鋭く尖っていて、うっかり触ると痛いです。でも、成長した木や日当たりのいい枝に付く葉の先端は丸く、むしろ軽くへこんでいるというから面白い。成長したら尖る必要はないということですかね。深いです。

 皇鈴山山頂

 12時45分、皇鈴山の山頂に到着しました。広い空間に東屋があります。

 西方向

 木立の間から西方向の風景が見えました。写真左手の台形の山は両神山。秩父の名山ですね。一方、右手のピークは城峯山です。麓の家並みは皆野町。

 ランチ

 ランチは今朝コンビニで買ったおにぎりと巻き寿司、ゆで卵です。



 実は山頂の東側には開けた場所があり、ここまで車で上がってくることもできます。



 食後、そっち側に行ってみました。
 東屋のあるエリアとは対照的な広場。砂利敷きの駐車スペースの先はベンチなどの休憩エリアになっていました。



 そこからでも十分眺めは良いのですが、さらにその先にある木のところがベストなポイントのようです。



 そしてそこからの眺望はこんな感じ。写真はパノラマ処理していて、左端(寄居の街並み)は北、右端(笠山)は南南東になり、画角としては160度くらいになります。正面は熊谷とか更には筑波山の方向になると思います。これはなかなかの眺望ですね。 

 下山開始

 山頂での滞在は50分ほど。軽くストレッチをして下山開始です。



 下り出しは階段です。まあまあの斜度。

 皇鈴山遠望

 軽いアップダウンを繰り返した後、皇鈴山を振り返る。楽しいひとときをありがとう。

 マムシグサの仲間

 マムシグサの仲間(ミミガタテンナンショウか?)。花冠に見えるのは苞(仏炎苞)で、本当の花はその中にある棍棒状の部分の付け根に密集しています。マムシグサの仲間は雄花と雌花に分かれていますが、栄養状態によって雌雄が決まるとのことで、これは雌花でした。花弁はなく、雌しべの柱頭が目立つ程度です。トウモロコシみたいですね。

 二本木峠

 2時5分、二本木峠まで戻ってきました。やっぱり下りは早いです。

 アケボノスミレ

 アケボノスミレです。今日はたくさんのスミレに癒やされました。

 ヤマブキ

 ヤマブキ。「七重八重花は咲けども山吹の…」の和歌が有名で、ヤマブキには実ができないと思われている節もありますが、それは八重咲きのヤマブキのこと(雄しべなどが花弁状に変化していて八重咲き状態になっているから)。写真のような普通のヤマブキにはちゃんと実が生ります。



 今日出会った若葉や花々を思い返しながら、のんびりと車道を歩いていきます。



 やがて彩の国ふれあい牧場が見えてきました。ケガもなく無事に野山歩きを終えられそうです。

 駐車場

 2時50分、駐車場に戻ってきました。ずいぶん車も増えていました。整理体操をしてから帰途につきます。
 
 帰り道、高速に乗る前に地域の農産品の直売所に寄ってみましたが、4時に閉店とのことで、入った途端に「蛍の光」が流れ始めました。観光客が帰宅を始めるのはむしろこれからなのに何でこんなに閉店時間が早いのか??でしたが、よく考えると、販売者の方も家に帰って夕食の支度などもしなければならないでしょうし、ここでの販売で生計を立てているわけではないんでしょうから、まあ当然か、と納得した次第です。

 そして、嵐山小川ICから関越道へ。夕方でもあり渋滞を心配していましたが、圏央道も含めスイスイと流れていて助かりました。