南高尾山稜 〜少しずつ秋の気配が〜


 

【東京都 八王子市 平成26年8月15日(金) 】
 
 お盆に入って急に天気が不安定になり、一日おきに晴天と雨降りとを繰り返しています。先日台風11号が近づいたときに、バルコニーの植木鉢を退避させようとして不自然な体勢から鉢を持ち上げたので尻の筋肉を痛めてしまいました。以来、ずっと鈍痛が。これも台風の余波ですかね。
 今日はそのリハビリを兼ねて近場の山歩きをすることにしました。場所は高尾山の南側に東西に延びる山稜。◯◯山と呼ばれるほどのピークもない、若干のアップダウンのあるようなコースです。
 
                       
 
 10時30分、自宅を出てドリーム号で町田街道を西進。東京都と神奈川県の境を辿って、本沢ダムを目指します。

 コミュニティー広場

 ここにはダムの造成に合わせて整備されたテニスコートや野球場などがあります。その一角にあるコミュニティ広場に車を止めました。


Kashmir 3D
 

 いつもより入念に準備体操をして(尻が痛いから)、11時20分スタート。
 今日のコースは、標高250mのコミュニティー広場を出て西側の山道に入り、標高差150mを上って稜線の分岐へ。そこから稜線に沿ってさらに西へ向かい、アップダウンを繰り返しつつ津久井湖の絶景が望めるポイントまで。そこで折り返し来た道を戻ります。分岐まで戻るとそこから北に向かい、草戸山を経由し、城山湖をぐるっと一周して戻ってきます。

 城山発電所

 出発してすぐ、山の中に突然姿を現す異様の建物は神奈川県企業庁の発電所。本沢ダムは県営のダムのようです。南側にある津久井湖から夜間に余剰電力を使って本沢ダムの貯水池(通称城山湖)に揚水しておき、それを使って日中に発電するというシステムとのこと。津久井湖の湖面が標高120m、城山湖の湖面が280mなので、落差160mということになります。(揚水・放流を繰り返しているので城山湖の水位は昼夜で変動するようです。)

 ヤブラン

 路傍にさっそくヤブランが現れました。今頃がまさに盛りの時期です。

 

 発電所の奥に山道への入り口がありました。ここから登って行きます。 出だしはこんな感じ。この先に野鳥観察の東屋があり、その先までは道が整備されているようです。

 文学碑

 登りはじめてほどなく加藤武雄という小説家の文学碑がありました。地元の出身だそうです。しかしなんでこんな山の中に。

 野鳥観察休憩所

 東屋が現れました。まだ歩き始めたばかり。ここで休憩するわけにはいきません。

 

 タマアジサイ

 タマアジサイが開き始めようとしています。もうだいぶんほぐれてきていますね。小さな蕾に上手く格納されているものです。

 

 風は時折吹く程度。けっこう蒸し暑いです。

 城山湖

 右手の木立が切れて城山湖のほぼ全体像が見渡せました。東に向かった風景で、遠くの街並みは八王子です。

 稜線の分岐

 11時55分、稜線上の分岐に出ました。ここは左折(右に行くと草戸山方面)。

 

 そのすぐ先の二又は右側を行きます。

 シラヤマギク

 これはシラヤマギクですね。別名イナカギク。もう秋の花が咲き始めています。

 

 階段の横木として設置されている丸太にキノコがワサッと生えていました。なかなか足で踏みづらいです。

 三沢峠

 榎窪山という小ピークを越えて小さく下ったすぐのところが三沢峠。ここを右折してずんずん下っていくと高尾山口近くの梅ノ木平に至ります。yamaneko達は直進です。

 

 木陰の道なのでこの暑さでも助かりますな。稜線に出てから風が吹き気持ちいいです。

 ガンクビソウ

 ガンクビソウ。これでほぼ満開の状態です。花冠の形が煙管の先端部「雁首」の形に似ているからこの名になったとのことです。

 ウツボホコリ

 これも階段の横木に生えていたもの。触ると胞子のようなものがボワッと舞いました。調べてみるとウツボホコリという粘菌の仲間のようです。形を変えながら移動し微生物を摂食するという動物的な性質をもつ一方で小型のキノコのようなものを作って胞子により繁殖するという植物的性質も持っているということで、なんだか得体の知れない生物です。

 西山峠

 12時35分、西山峠に到着しました。ここも直進。

 

 木の根の階段を足をくじかないよう注意しながら登って行きます。

 マムシグサ

 ぱっと見、ミヤマシキミかと思いましたが、これはマムシグサ。それにしても背の低いマムシグサですね。

 ミンミンゼミ

 そろそろ秋の気配を感じ始めているのか、鳴き方にもどこか切なさを感じさせるミンミンゼミ。

 カシワバハグマ

 カシワバハグマ。これは比較的大きな株です。

 展望所

 むむ、前方にベンチを発見。どうやら展望所に到着したようです。時刻は午後1時です。

 

 おお、いい景色。これまでずっと木立に視界を遮られてきたので、その抜け感も気持ちいいです。眼下には津久井湖が大きく蛇行し、舌状に張り出した台地に集落が広がっています。相模原市の三ヶ木地区です。正面は丹沢山地の主峰群へと続く山並み。右奥に向かって切れ込んでいるのは道志の谷筋です。手前の木立が視界を遮っていますが、木々が葉を落とす時期には台地をなぞるように巡る湖水を眺めることができたんじゃないでしょうか。冬に来てみるのもいいかもしれません。

 

 ひとしきり眺望を楽しんだら昼食を。コンビニで買ってきたおかず付きおにぎりです。ゆでたまごと漬物はオプションで購入。
 結局ここで40分ほど休憩して、それから折り返しました。

 ヤブコウジ

 時折風が吹いて嫌な暑さはなくなりました。路傍のヤブコウジの若い実がみずみずしいです。高さは15pほど。こんなに小さくても立派な樹木なんですよね。

 ムラサキニガナ

 これはムラサキニガナですね。大概こんな木漏れ日がさすような環境で出会います。薄暗いところが好きなのかと思いきや曇っていると花を開かず、日差しがあっても午後の早い時間に閉じてしまうのだそうです。

 ザトウムシ

 2時ちょうど、西山峠まで戻ってきました。案内板をよく見るとザトウムシが。カメラを向けると素早く裏側に逃げてしまい、しばらく追っかけっこをして撮ったのがこの写真です。名前に反してしっかり目があり、動きも機敏です。一見クモに似ていますが別のグループなのだとか。ザトウムシを見ると六本木ヒルズの変なオブジェを連想してしまいます。

 泰光寺山

 10分後、泰光寺山という小さなピークに到着。往路では巻き道を通ってパスしたところです。展望はありませんでした。なのでここはスルー。

 キセワタ

 yamaneko達を追い越して行った人がこの先にキセワタが咲いると教えてくれました。往きに通ったところのはずですが見落としていたようです。で、注意して見ていて出会ったのが写真の花。キセワタはシソの仲間で、花の付き方はオドリコソウに似ていますね。本来は直立で生えるものです。

 キンミズヒキ

 キンミズヒキはまだ咲き始め。これも秋を代表する花ですね。これから花穂の上に向かって順次咲いていきます。ただ、花の後がやっかいで、実はいわゆるひっつき虫。秋のの山を歩くと靴の紐にたくさんくっついてきます。

 三沢峠

 三沢峠まで戻ってきました。時刻は2時35分です。

 ユウガギク

 これはユウガギク。柚香菊と書きますが、特段柚子の香りがするわけではありません。

 稜線の分岐

 稜線の分岐まで戻ってきました。右に下って行く道が登ってきたときの道ですが、ここは直進。草戸山を経由して城山湖をぐるっと回って帰ります。

 城山湖

 途中の東屋からの風景。これから湖を囲む稜線を時計回りに巡って行きます。この辺りは関東平野の西の縁。分かりにくいですが、遥か遠くに新宿の高層ビル群もが見えているんですよね。

 

 3連続で現れる急な階段を下りきると草戸山との鞍部に至ります。中にはスキーのジャンプ台のように弧を描いて落ち込んでいて、下り始めからは終点が見えないほどのものもありました。

 キツネノカミソリ

 鞍部に咲いていたキツネノカミソリ。まるで生け花のようにフォトジェニックです。群生することなくあっちに一叢、こっちに一叢とかたまって咲いていました。

 草戸山山頂

 鞍部からはまた階段で登り返し、3時10分、草戸山の山頂にやってきました。ここに来るのは1年半ぶりです。階段の連続攻撃に妻は若干バテ気味。しばし休憩です。

 

 草戸山の山頂から城山湖の畔に向けて下っていきます。また階段です。苦行か、これは。すると膝をカクカクさせながら下っていた妻が何かを見つけた模様。

 ビロードスズメ

 おお、これは。寸詰まりのマムシか。いや、どう見てもイモムシだろう。これはビロードスズメという蛾の幼虫。ヘビの目のように見えるのは模様です。何やら怒ったような表情(?)で、尻尾のような角も威嚇的。天敵から身を守るための擬態なんでしょうね。 そもそもイモムシとはサツマイモイなどの葉に多く集まるスズメガの類の幼虫のことを指す言葉だったのだとか。そうするとこれはイモムシの中のイモムシ、正統派イモムシということになるわけですね。

 

 城山湖の畔に下りてきました。左手の部分がロックフィル型の堰堤になっています。放水路は北側(写真を撮っている辺り)にありますが、人が操作できるものではないようで、大雨などで貯水量が限界に達したときに自然に越流させる構造になっていました。

 

 堰堤の上から双眼鏡を覗いている妻。何を見ているのかというと…  どうやら我が家を探しているようでした。バルコニーからここの堰堤が見えるんですよね。
 
 15時45分、城山湖をぐるっと回ってコミュニティー広場に戻ってきました。後半アップダウンがそこそこあって尻の筋肉のリハビリにはちょうどよかったかもしれません。(実際にはこの後1週間経っても痛みに悩まされるのであった。)

 堰堤からの風景