右田ヶ岳 〜この一年も見通し良好?〜


 

【山口県防府市 平成17年1月10日(月)】
 
 今日は成人の日。旗日です。そういえば最近玄関先に国旗を掲げている家を見なくなりましたね。子供の頃は祝日に国旗を立ててないと近所の町内会長さんあたりからそれとなく注意されたりしたものですが。あれはいったい何だったんですかね。
 
 さて、それはそれとして、今日はちょっと遠出をして山口県中部、防府市にある右田ヶ岳に行ってみることにしました。今年最初の野山歩きであり、かつ、リベンジマッチでもあります。というのも、2年前、右田ヶ岳に登ろうとやってきたのですが、急用ができて途中から泣く泣く引き返したのです。今日はそのときの分も楽しんでこようと思います。
 
 午前8時30分、広島を発ったドリーム号は山陽道広島ICから一路防府を目指しました。途中の広島湾は朝日に輝き、宮島の島影が黒く浮き立って見えていました。今日は天気も良さそう。快調なドライブです。
 岩国を過ぎた辺りから山間部に入り、やがて周南市まで来るとまた海沿いに出ます。すると運転していて何か違和感が。よく見るとこの辺りは山の雰囲気がちょっと違うのです。山肌には赤あり黄あり緑ありで、まるでまだ紅葉が残っている感じなのです。やっぱり暖かいのでしょうか。
 高速道路を1時間半ほど走ると防府に到着。右田ヶ岳のふもとにある右田小学校横の駐車場に車を停めます。

 右田ヶ岳(右のピークは石船山)

 歩くのは上の写真の右端から稜線沿いに石船山を越えて山頂を目指すコース。こうやってみるとなだらかそうですが、いざ歩いてみると壁を登るような感じがします。

 天徳寺

 10時半、右田小学校の奥にある天徳寺境内でストレッチ。見上げると前峰の石船山がのしかかるように見えます。
 ちなみにここからは右田ヶ岳の姿は石船山の向こうに隠れてしまっています。

 登山道

 登り始めは林の中。両側にコシダが茂っています。ふもとから聞こえてくるのは校庭でサッカーをする子供たちの歓声。
 やがて林を抜けて見晴らしの良い登山道になりました。足場は風化した花崗岩。いわゆる「マサ土」です。登山道を流れる雨水の力で深く彫り込まれています。

 見上げると石船山

 遠くには青空も見えますが、頭上には雲が広がってきました。雪雲のようです。そうこうするうちに小雪がチラチラと。寒いはずです。でもこっちはすでに息が荒く、うっすらと汗までかいてきました。
 振り返ると防府の街が見えます。眼下に新幹線の線路が走っていて、ときおり轟音とともに通り過ぎていきます。

 遠くに右田ヶ岳

 10時55分、石船山の山頂に到着。360度の展望があります。荒い息が治まるまでここで小休止することにしました。すぐに体が冷えていきます。
 さっきの雪雲は海の方に抜けたのか、北の方からやって来て今は南の海岸の方に雪のカーテンが見えます。右田ヶ岳のバックは青空です。山頂の三角点は中の峰(上の写真の右のピーク)にあります。一方、西の峰(同左のピーク)には右田ヶ城跡が。この城は鎌倉末期の築城で、何度か城主が入れ替わりながら戦国時代には毛利氏と大内氏との戦いに飲み込まれていった歴史を持ちます。
 
 石船山を下り始めてすぐに鞍部に到着。さあ、ここから本格的な登りが待っています。
 胸を突くような登りに息が上がります。ときおり下山してくる人とすれ違いますが、「コンニチワ」の挨拶もハアハアと荒い息にとぎれがちです。
 足場の岩を確かめながら一歩一歩登っていきます。ときにはスリルのある場所もあって、眼下を覗き込むと背中がスーッと…。

 霜柱

 マサ土の間に染み込んでいた水分が凍って霜柱のようになっていました。陽が昇ると溶けて夜半にはまた凍る。凍ると膨張し溶けると収縮する、この繰り返しで土をほぐし風化を進めていくのです。
 登りながら時季はずれの紅葉のからくりが分かりました。赤はモミジではなくハゼノキが遅れて紅葉の盛りを迎えたもの。黄はシロモジとかではなく晩秋に間違って芽吹いたコナラの若葉が寒さにやられたもの。これが遠目にはみごとな紅葉に見えたのです。今年の天候はホント植物泣かせです。

 日陰には雪が

 登山道脇の日陰には雪が残っていました。昨夜降ったものでしょう。まだフワフワしています。
 一掴みしてみると、久しぶりの雪の感触。握った手の中ですぐに溶けていきました。

 アカガシ

 途中、立派なアカガシが出迎えてくれました。登山道で唯一、存在感のある樹木でした。
 枝に残っている葉は例外なく傷んでいました。こんな風当たりの強いところでいくつもの台風に耐えてきたのかと考えたら、ポンポンと幹をたたいてねぎらいの言葉をかけずにはいられませんでした。

 西の峰へ

 11時35分、中の嶺と西の嶺との間の鞍部に出ました。まずは左の西の峰に向かいます。
 すぐにピークに到着。ここから主峰の頂上がすぐそこに見えます。南の海の方を見ると目映いばかりの明るさ。素晴らしい眺めが広がっています。

 隣の主峰  南の展望(眼下に石船山)

 さて、次はいよいよ山頂のある中の峰へ向かいます。いったんさっきの鞍部に戻って、反対側の急な岩を登ります。

 「山頂だ!」

 11時50分、山頂に到着。上空の雲はほとんどなくなり太陽がまぶしいくらい。でも相変わらず気温は低く、風は身を切るように冷たいです。山頂には5、6人の先客がありました。日の丸が立っているのは今日が旗日だからではないはずです、あきらかに。

 山頂の広場
 岩のテーブルから

 山頂の広さは10m四方くらいの平らな土の部分(左上の写真)と、同じくらいの広さの岩のテーブル。その先は断崖です。
 コナラもネジキもその枝に紅葉がまだ残っていました。そういえばこの山は花崗岩の岩山なのにアカマツはあまり見かけませんでした。
 
 昼食の前にぐるりと景色を見渡してみましょう。
 北西には大内峠の向こうに山口市の市街地が見えます。その背後には東鳳翩山。北には物見ヶ岳、北東には石ヶ岳。いずれも雪に覆われています。山口県中部は中国山地の西の端にあたることから脊梁部の標高も低く、また日本海までの距離も近いので、北西の季節風に乗って瀬戸内沿岸のすぐ近くまで雪雲がやってくるのです。

 北東方向(佐波川を挟んで矢筈ヶ岳(右))

 確かに雪雲が北西から次々とやって来ていました。眼下には佐波川がゆるい蛇行を繰り返しながら流れています。
 南には周防灘。そしてその向こうには九州の山並みがくっきりと見えています。

 ♪翼をください…

 昼食はいつもどおりカップラーメン。今日はカレー味です。あとオムスビ2個。これも定番です。

 ネジキ

 ネジキの花。咲いたはいいもののこれからが冬本番。訪れてくれる虫もないままに枯れていく運命です。(悲)
 
 12時半、下山開始。すっかり冷えて指先まで冷たくなりました。
 下りは意識的に歩幅を小さく。滑りにくいし、ヒザへのダメージも少なくすることができます。
 
 1時半、登山口の天徳寺に下りてきました。体がポッポして指先まで暖かくなっています。今は冷たい風も気持ちいいくらい。
 わずか3時間の行程でしたが、変化があり景色も良かったので満足度高めです。これでリベンジを果たすことができました。


 帰る前に防府天満宮に寄ってみました。
 防府は菅原道真が太宰府に下る途中に立ち寄った場所で、防府天満宮は道真の死の翌年(904年)に建立されたといいます。道真を祀ったのは日本でここが最初で、北野(京都)、太宰府(福岡)とともに日本三大天神と称されているそうです。
 境内にはたくさんの参拝客がいて、まだ正月気分満々といった勢いでした。
 
 帰りは国道2号線を3時間半かけて広島へ。渋滞はありませんでしたが、山歩きの時間より長かったとは…。