草戸山 〜里山にも春まだ遠く〜


 

【神奈川県 相模原市 平成25年2月16日(土)】
 
 寒い! かなり冷え込んでいます。家の窓の結露もハンパないことになっています。ここのところ天気の良い日が続いていたので、この週末はのんびりと近郊の低山で陽だまりの山歩きでもと思っていたのですが、週末になって関東地方は寒気にすっぽりと覆われてしまいました。ぶるるっ。
 さて、今回向かうのは相模原市と町田市と八王子市の境界に位置する草戸山。標高は364mですが眺望はなかなかのもの。町田市の最高峰でもあります。関東平野の辺縁の山は標高は低くても眺望の良い山がたくさんあって、お得です。
 
                       
 
 午前8時半、新宿駅の京王線ホームで職場の山仲間のMさんと待ち合わせ。もう一人の山仲間のTさんは、先月筑波山で痛めた足が完治していない(そう言いつつ卓球とかゴルフとかやっていますが)ということで、今回はお休みです。
 8時40分発の準急で調布まで行き、そこで相模原線に乗り換え。多摩川を渡り、なだらかな多摩丘陵を越えて行くと、眼前にパッと開けるように広々とした相模川の河岸段丘が見えてきます。ここまで来ると終点の橋本はすぐそこ。調布から25分ほどで到着です。橋本駅からはバスで移動ですが、乗り換えに15分ほど時間があったのでバスターミナルにあるロッテリアに入ってコーヒーで暖をとりました。外は空気がキンキンに冷えていて、バス停で待つという選択肢はあり得ませんでした。
 9時44分の大戸行きに乗ると、バスは町田街道を西進。ほどなく周囲の風景が「野辺の里」といった感じに変わってきます。15分ほど乗車して登山口最寄りのバス停「公会堂前」に到着しました。そこから小松というところにある登山口までは800mくらい歩きです。ただ、ここの道は長閑な風景に似合わずトラックがひっきりなしに通っていて、歩道を歩いていても怖いくらいでした。

 登山口

 登山口はつい見逃してしまいそうなところにありました。写真左に見切れている案内板がなかったら通り過ぎていたでしょう。で、そのとおりに通り過ぎて、まずこの近くにある川尻八幡宮というところに御朱印をもらいに行きます。

 結局、神社の社務所が無人で御朱印をもらうことはできず、再び登山口に戻ってきました。さて、軽く準備運動をしてから歩き始めましょうか。時刻は10時50分です。
 いきなりいい感じの山道です。この辺りの山は集落に近いので里山として昔から生活に密着した場所だったでしょう。この道も今は登山道ですが、昔は柴刈りや猟のための小径だったのだと思います。


Kashmir 3D

 今日のルートは、まず登山口から雑木林の中の道を行きます。基本尾根道とはいえ、アップダウンの少ない歩きやすい道です。本沢ダムを回り込んで少し登るともう草戸山の山頂。そこからは北に向かって進路をとり、高尾山口に向かって下っていきます。こちらの方は前半に比べて登ったり下ったりの差が大きめで、それなりに歩きごたえがありそうです。

 Mさん

 前を行くMさん。何人で山に行っても、先頭はいつもMさんで、しんがりはいつもyamanekoになってしまいます。Mさんは一貫して自分のペースを持っているので、先頭には適任です。何回か山に行っているうちに暗黙のルールのようになってしまいました。yamanekoは写真を撮りながら歩くので、最後尾が都合がいいんですよね。実は、年末の百蔵山のときにyamanekoが先頭で登ったのですが、ペースが速くなりすぎて全員バテバテになってしまいました(もちろんyamaneko自身も)。

 コウヤボウキ

 落ち葉を踏みしめて歩いて行きます。さすがにこの時期、花は期待していませんが、やはりこんなふうに色のあるものを見ると嬉しくなります。

 小松城跡

 ルートから少し外れたところに小松城跡というところがあったので、寄ってみることに。丘の上に森が開かれたところがあり、小さな祠が建っていました。解説板には「小松城跡 宝泉寺の裏山は山城の跡で、城主は永井太膳太夫。片倉城(八王子市)の出城であったと古くから伝えられています。山城の中心は丘陵の尾根にあって、前面の小松川、背後の穴川が自然の水堀を形成しています。空堀の規模などから室町時代から戦国時代初期の山城で、現在、墓地造成により南に延びる遺構は大半が消滅しています。(城山町教育委員会)」との記述が。城山町とは6年前に相模原市に編入された町で、津久井郡に属していました。

 さて、再び山道に戻りましょう。日射しは降り注いでいますが空気は氷のように冷たいです。いつもなら歩き出してしばらくすると暑くなって上着を脱ぐのですが、今日はまったくそんな感じではありません。

 11時30分、広場のようなところに出ました。評議原と彫られた石柱があります。

 評議原

 確かに軍勢を集めて評議をするには適した場所のようです。見渡してみると桜あり、紅葉ありで、今では軍勢ではなく地元の皆さんの憩いの場になっているのだと思います。花見シーズンには賑わいそうです。我々もベンチに腰掛けて休憩。Mさんがポットにコーヒーを入れてきていたので、美味しくいただきました。熱い飲み物がありがたいです。

 

 評議原からしばらく行くと辺りが開けました。整備された感が漂っていて、眼前の急な階段の上にはガードレールも見えます。この急な階段、手すりが赤いですが、これは道路のさらに上にある金比羅宮の参道です。梢越しに赤い鳥居がちょっと見えていますね。

 金刀比羅宮

 息を切らせながら階段を登って道路に上がり、そこからまた階段を登って金刀比羅宮に到着しました。だーれもいません。こぢんまりとした静かな境内です。しかし金刀比羅宮といえば海上交通の守り神。なんでこんな山の中にあるんでしょうか。

 それにしても、境内から見える眺めのすばらしさよ。相模川の河岸段丘に広がる橋本や町田の市街、その奥に横たわる多摩丘陵、さらに遙か遠くには新宿、川崎、横浜の高層ビル群。標高は高くないもののその眺望は一級品です。

 本沢ダム

 金刀比羅宮の山を裏手に回り込むと、そこにはダムが。本沢ダムというロックフィル型のダムです。ダムの高さ73m、幅234mとなかなか大きく、用途は発電用だそうです。ダムというとコンクリート製の高い壁を思い浮かべますが、ロックフィル型は石などを積んで造られていて、見た目はなだらか。中心部に水を通さない粘土質の遮水壁が入っているということです。

 城山湖

 ダム湖は城山湖という名前でした。城山町の時代の名残でしょう。対岸の中央右のピーク(雲がかかっているところ)が草戸山です。

 ダムを渡った先から階段を登って再び山道に入ります。

 湖を左に見ながら。木立越しに見える水面ってのもいいですな。

 城山湖

 湖水が早春の光を反射しています。写真で見ると「終日(ひねもす)のたりのたりかな」って感じですが、相変わらず空気は冷たいです。

 しばらく行くと道は湖から離れて長い階段に。

 そして一つピークを越えるとその先に山頂が見えてきました。

 草戸山山頂

 12時15分、草戸山の山頂に到着しました。登山口から1時間半弱です。ほとんど汗をかくことなくここまで来てしまいました。

 松見平休憩所

 山頂にはざっと30人くらいが休憩していました。東屋には先客がいたので、軒下に腰を下ろしてまずは昼食です。それにしてもこのように名もない(失礼)山であってもたくさんの登山客がいるんですよね。ほんと山好きの人が多いんだなと思います(さすがに山ガール率は低かったです。残念。)。

 昼食

 今日は寒いので辛いラーメン。蒙古タンメンのカップ版です(スープが喉に直撃してむせ返りました。)。おかずはウインナーです。

 下山路

 山頂には40分ほど滞在。異動時期も近いので、希望的観測を含め二人でいろいろ予想し合ったりして過ごしました。山に来てまで職場の話とは。不健康というか、これが憂さ晴らしというか。
 そして12時55分、下山開始です。

 ここからは北に向かって歩いて行きます。

 草戸峠

 1時5分、草戸峠に到着。峠といいつつピークの上の分岐となっています。ここは左手へ。

 高尾山

 草戸峠からもひたすらアップダウンを繰り返していきます。
 しばらくすると左手に開けた風景が。あれは高尾山ですね。木立の中に薬王院などの仏閣が見えています。きっとあっちは人が多いでしょうね。山ガール率も高いでしょう(しつこいか。)。

 シロダモ

 yamanekoたちはというと、行き交う人もまばらで、シーンと静かな山歩き。
 この緑はシロダモ。枯れ色の中でよく目立っていました。厳しい寒さでも葉緑素が壊れないということでしょうか。照葉樹の葉は、葉が硬く頑丈で表面がクチクラ化しているものが多く、これが葉緑素の保護に関係しているのでは。

 何個目かのピーク。日射しを背に受け、ゆっくりと越えていきます。

 スギ

 スギの雄花。気温が高くなってくると、ぶわっと花粉を放出するんでしょうね。ニュースで毎年のように「去年の○倍のの量と予想されています」とか言っていますが、これを聞くたびにどよーんとした気分になります。いったいどうやって予測を立てているんでしょうね。

 四辻

 1時55分、下山開始から1時間で四辻という分岐までやって来ました。京王の高尾山口駅に向かうにはここを左手に下っていきます。高尾駅なら直進です。

 だんだん下界の音が聞こえてくるようになりました。落ち葉で足元が滑りやすいので、最後まで気が抜けません。

 下山

 四辻から10分弱で住宅地に下りてきました。ふー、やれやれです。

 

 一つ上の写真の右手に写っている梅の木に、気の早い花が。咲いたはいいものの寒さに震えているようでした。

 

 国道20号を渡ると高尾山駅ももうすぐです。ああ、今日も楽しい山歩きができました。とうとう最後まで上着を脱ぐことはありませんでした。
 駅に向かう道は売店や食堂など観光地の商店街になっています。yamanekoたちも蕎麦屋に立ち寄って、ビールで打ち上げを。山菜などをつまみに1時間ほど。後半、お店の人がお新香をサービスしてくれたりして、楽しいひとときでした。
 
 京王高尾山口駅からは6つ先の北野駅で準急に乗り換え。幸いにも座れたのですが、ほどよくアルコールが入っていたので意識を失いながら新宿に戻ってきました。いびきはかいていなかったと思います。