雲取山 〜深まる秋、奥多摩の盟主へ(後編)〜


 

 (後編)

【東京都 奥多摩町、山梨県 丹波山村、埼玉県 秩父市 平成27年10月4日(日)】
 
 職場の同僚Nさんとの雲取山登山。後編です。(前編はこちら

 雲取山周辺の山々。今回のルート上で望むことができる山々です。


Kashmir 3D

 こちらは今日のルート。現在、小雲取山の手前まで来ています。

 小雲取山

 ヨモギノ頭との鞍部から急な登りに喘ぐこと20分、小雲取山に到着しました。ただ登山道はピークは踏まず、その数m手前で雲取山方面に折れています。

 山頂見ゆ

 小雲取山からしばらくは急な登りはなく、じわじわと高度を上げていく感じ。そしてついに雲取山山頂が視界に入ってきました。おお、あれか。でもなんかその手前に急な登りが見えていますが。

 甲武信岳

 山頂左肩のずっと奥には累々とした山の連なり。最奥でひときわ高く聳えているのは甲武信岳(2475m)です。甲州、武州、信州に接する山だから甲武信岳というネーミング。あの向こうは長野県なんですね。

 カラマツ

 カラマツも黄葉が始まっていますね。

 山頂直下

 さあ最後の登りに差し掛かりました。ここもなかなかの斜度です。ちなみに山頂に立っているのは避難小屋。さあ、気力を振り絞って登りますか。

 避難小屋

 亀の歩みのごときペースでなんとか登り切りました。まだ新しい避難小屋です。都が管理しているのだそうです。中を覗いてみると、男性が一人、バーナーで食事を作っている最中でした。話を聞いてみると、なんか一般にはあまり使わないルートで何日かかけて縦走しているとのこと。ベテランの域に達しているような人でした。

 東南東方向

 ここからは都心の方角もよく見えました。左手の山が本仁田山なので地図にあてはめると東南東の方角。まさしく新宿とかそっち方向を向いていることになります。ただ、遠くは霞んでいて高層ビル群は見えませんでしたが。あと、左手に見える丸みを帯びた白いものは西武ドームか。

 真の山頂へ

 山頂は南北に長い地形をしていて、避難小屋はその南の端、三角点は北の端にあります。

 雲取山山頂

 2時40分、ようやく雲取山の山頂に到着しました。登り始めてから5時間15分。ほぼコースタイムどおりです。
 山頂では中年の女性が一人、おにぎりを食べていました。お断りをして写真を。それにしてもちょっとじっとしているだけで寒さを感じます。なんか冬の夕暮れのような雰囲気です。

 三角点の隣に古い標石がありました。「明治十五年十二月 内務省地理局」と彫られています。高さ約30cm。地中に埋まっている部分も含めると結構な大きさだと思います。当然人の手で持って上がったんでしょうね。調べてみると、内務省地理局は明治10年に発足し、明治17年に陸軍参謀本部にその機能を移すまでの7年間しか測地測量を行っていなかったそう。そのわずかな期間にここを訪れたんですね。

 山荘へ

 山頂は寒いので今夜の宿に向けて歩き出すことにしました。ここから標高差にして180mほど下ります。

 道はご覧のような急傾斜。転がり落ちそうです。

 と思ったら木が転がっているところも。ここはくぐって行きます。

 黄葉もバックが青空なら清々しいのでしょうが、なんかうそ寒い感じのする風景です。

 山頂から下ること20分、雲取山荘が見えてきました。

 雲取山荘

 昔の小学校の木造校舎みたいな雰囲気。よく見るとログハウス風ですね。

 3時15分、雲取山荘に到着しました。まずは前庭のベンチに荷物を置いて整理体操です。これをやっておかないと後で体がガタガタになるんですよね。その後建物に入ってチェックイン。部屋は相部屋で、夕食は午後6時、明日の朝食は午前5時だそうです。5時、早っ。
 部屋に入ると既に年配の男性2人組が休んでいました。どうやら上りの登山道で見かけた人たちのようでした。さて、夕食までは2時間半。とりあえず缶ビールを飲んで、コタツに入って寝ることにしました。

 夕食

 そしてようやく夕食の時間。80人くらい収容できる食堂がほぼ満席でした。これが入れ替え制で2回転するようなので、結構な宿泊人数です。メニューはこんな感じ。ちょっとボリューム不足じゃないか?

 食事を終えて部屋に戻ってもまだ6時半くらい。消灯は一応9時なんですが、同室のお二人さんはすでに本格的な睡眠モードに入っていました。仕方がないのでNさんと二人、ちびちびと酒盛りを。この焼酎がなかなか美味かったです。で8時就寝。

 翌朝

 翌朝、4時半に目が覚めました。他の人はもっと前から起きていたようです。昨日の夕方寝たにもかかわらず一度も目が醒めることなく熟睡してしまいました。で、5時に朝食を済ませ、その後部屋に戻って二度寝です。(いや寝過ぎだろ。)
 6時過ぎになってようやく出発の準備を始めました。外に出ると乳白色の世界。どうやらすっぽりと雲の中に入っているようです。

 出発

 準備体操をして6時25分出発。まずはこの階段を登ります。

 薄暗い針葉樹林の中、苔が空気中に漂う水分を集めて生き生きとしていました。

 山頂までの道が急であることは昨日下りてきているので分かっていましたが、寝起きの体にはやはりきついです。

 山頂再び

 6時50分、山頂が見えてきました。一足先にNさんが到着しています。

 昨日とは逆で、頭上のみ雲がなく、その他は白い雲に包まれています。このまま雲が霧散してくれれば良いのですが。

 午前7時、晴天は半ば諦めて、山頂を後にしました。

 小雲取山へと向かう急な下り。雲の中に下りていく感じです。

 これはカラマツの幼木ですね。雲の粒が葉先に取り込まれて水滴に。おお、雲取の名前のとおりだ。こじつけ気味だけと。

 道は一旦なだらかに。

 小雲取山を過ぎ、ヨモギノ頭も過ぎてどんどん高度を下げていきます。

 イタヤカエデの落葉。ここだけ見ると晩秋の雰囲気ですね。

 雲取小屋を過ぎテント場まで下りてきました。この雲の中、テントを撤収している人がいたので「夜は寒くなかったですか」と声をかけたところ、ダウンのシュラフなので寒くはなかったが、テント内の結露が厄介とのこと。なるほど。

 サラサドウダン

 これはサラサドウダン。暗い紅色が趣深いです。果実は垂れ下がりながらも上を向こうとしています。

 幻想的な雰囲気。ここは黄泉の国か。

 ブナ坂

 8時5分、ブナ坂までやってきました。ここでNさんの靴の何度目かの大規模修繕を行いました。
 本来ならここから昨日パスした七ツ石山の山頂を目指すところですが、この天気なので巻き道を行くことにしました。山頂からの雲取山の眺めが楽しみだったのに。昨日行っておけばよかったと後悔しきりです。

 雲取山

 悔しいので、以前撮った雲取山の遠景を。これは8年前、真南に14kmほど離れた松姫峠から見た雲取山です。右端のピークは七ツ石山ですね。

 トリカブト

 往きには気がつかなかったトリカブト。枯色の景色の中で紫色が鮮やかです。

 七ツ石小屋への分岐で休んでいた若い夫婦。楽しい人たちでした。さあ、ここからは長い下り道です。さくさく歩くぞ。

 鴨沢に向けての長い尾根道を下っていきます。

 堂所

 9時10分、堂所を通過。Nさんの靴はもう修復不能の領域に。

 マムシグサ

 単調な下りですが、時にはこんなものも。これはマムシグサの実ですね。

 いつのまにか白いベールがなくなりました。雲の下に出てきたのです。ここでNさんの靴底は完全に脱落。しかも両足です。靴紐で縛り直すも、安物のウチワみたいにベロンベロンしていました。すれ違う人たちもギョッとした表情でした。中には苦笑を隠しきれなかった人も。

 小袖乗越の駐車場を過ぎ、民家近くまで下りてきました。あとちょっとです。頑張れ靴底!

 奥多摩湖

 奥多摩湖の湖水が見えてきました(あの橋から向こうが東京都です。)。下界は朝からこんな天気だったんでしょうね。

 鴨沢集落

 10時20分、鴨沢のバス停に下りてきました。山頂からの所要時間は3時間20分。なんとか無事に下山できて安心しました。

 バスの時間までは約7分ほど。これを逃すと次は午後1時台という恐ろしいダイヤです。ぎりぎり間に合ってラッキーでした。
 
 バスに揺られること35分、奥多摩駅に到着しました。ちょっと早めですが駅の近くで昼食をとることに。「寿々喜家」という昭和にタイムスリップしたかのような大衆食堂に入り、とりあえずビールで乾杯。蕎麦をつまみにまったりとしつつ反省会。まあ天気はいまひとつでしたが、なかなか中身の濃い2日間でした。
 
 帰りは11時39分発の電車で。立川でNさんと別れて、八王子、橋本を経由して、1時半前には帰宅しました。