ふれあいの里(県立青年の家) 〜NACS−J指導員講習会1〜


 

【広島県御調町 平成14年9月14日(土)】
 
 「御調町」と書いて「みつぎちょう」と読みます。
 広島県中央内陸部に位置する人口約8千人の穏やかな町です。
 丘陵地に水田が広がりその周りをアカマツ林が取り囲んでいる、そんな広島県の自然景観を代表するようなところで、「第320回 NACS−J自然観察指導員講習会・広島」が開催されました。
 主催は日本自然保護協会(NACS−J)と広島県自然観察指導員連絡会です。
 
 NACS−J(NATURE CONSERVATION SOCIETY OF JAPAN)が養成する自然観察指導員は、基本的に個人を活動主体として自然保護に取り組むものですが、より良い活動を行うために指導員同士が連携して活動していることが多くあります。そのひとつが広島県自然観察指導員連絡会です。
 この連絡会は、各県ごとに自主的に組織され、その設立経緯や形態も様々です。広島の場合、広島自然観察会の会員のうち指導員資格を持っている人達で組織しています。

 この講習会は2泊3日。日中は野外実習、夜は講義と、なかなかハードです。
 9月14日(土)、昼前に57名の受講者が集まってきました。そのうち10人は県外枠での参加で、遠くは八王子からやってきた方もいました。(エライッ!3年前に自分が受講したときには東は横浜、南は沖縄からの参加者もいました。みんなその後自分のフィールドで楽しく活動してるだろうか?)
 着席後もお互いが初対面なのでワイワイと談笑する様子もなく、みんな配られた資料に目をとおしているばかりです。

 開講式、オリエンテーションで講習会は幕を開けました。
 今回の講師は、NACS−Jからは、金田 平さん、佐藤仁志さん、大野正人さん。地元講師は、地質・地形担当の片山貞昭さん、動物担当の大丸秀士さん、植物担当で広島自然観察会代表の加藤正嗣さんという面々でした。
 そして運営スタッフはおなじみ広島自然観察会事務局から17人が参加しました。

 1時半から野外実習開始。テーマは「森を通して自然のしくみを見に行こう」
 まずは遠くから森をスケッチします。
 スケッチする姿、みんな結構さまになってるでしょう。上手く描けてるかって? 皆さんの名誉のために言っときますが、ポイントはあくまでも上手い下手じゃなく、どんなことに気がつくかなんです。
 ちなみにスケッチを見せ合う姿は見られませんでしたが。

 遠くから森を見たら、今度は近づいて見て、さらには森の中に入って内側から見てみます。
 金田さんの熱のこもったレクチャーに、はじめ遠慮ぎみだった受講者の皆さんも次第に引き込まれていったようでした。
 おかげで何気ない森の姿にもちゃーんとわけがあることに気づくことができました。

 ナツハゼの紅葉と果実

 

 いよいよ森の奥に入っていって、今度は森の土台、地面に目を向けてみます。
 足下の落ち葉の層をそっとめくってみて、深くなるにつれて落ち葉がどういう状態になっていくか、そうなっていく理由は何か、それがこの森に(森の姿に)どう関係しているか、などなどみんなで考えてみます。
 みんな「目からウロコ」どころか目ん玉自体が落ちてしまうほどでした。

 垂直にめくっていった落ち葉を並べてみました。
 左端が地表部で、右にいくほど深くなります。右端で地表から10pほどの深さです。
 落ち葉が分解されて土になっていく様子がよく分かります。これも森に住む小さな小さな生き物のおかげです。この作業をしてくれないと、そこいらじゅう落ち葉だらけになってしまうのですから。

                        

 夕食と入浴を終えて、6時半から3時間の講義です。テーマは「自然保護を考えよう」、講師は金田さんです。
 「自然保護」に対する認識や理解、思い入れなどは、まさに人それぞれでしょう。講義が始まる前の時点ではこの部屋の中に57とおりの「自然保護」があったと思います。
 解っているようで聞かれるとなかなか上手く説明できない「自然保護」について、「いろは」の「い」から丁寧に解説していただきました。(こんなこと言うのはおこがましいですが、)講師の話には長年の実践に裏打ちされた説得力があり、ちょっと感動ものでした。通常、夜の講義では睡魔に魂を売り渡してしまう人が多い中、みんな一生懸命に聞き入っていました。
 講義が終わる頃には、57とおりの「自然保護」の中にそれぞれ意義深い共通項の部分ができたのではないかと思います。

 講義が終わるとお楽しみの懇親会です。
 これでみなさん、一気に親しくなりました。はじめのうちは大人しく、やがて「地」が出て、挙げ句の果てには講師も受講者も関係なくなり、そうやって御調の夜は更けていきました。
 外の闇には秋の虫の音です。