皇居東御苑 〜都心のやすらぎ空間〜


 

【東京都 千代田区 平成21年2月1日(日)】
 
 先日、今期最初の花粉症治療に行きました。治療といっても薬をもらいに行っただけですが。でも、もう今年もそんな季節になったんですね。早いなあ。
 たまの休み、最近はいつも昼頃まで寝ているので、出かけるにしてもどうしても近場になってしまいます。でも冬晴れの日の午後は都心でのんびりと過ごすのもまたいいものです。
 
                       
 
 ということで、今日は東京のど真ん中、皇居東御苑に行ってみることにしました。

 法務省旧本館

 地下鉄の霞ヶ関駅で丸ノ内線を下車。地上に出ると無人の官庁街です。ここから皇居に向かってしばらく歩くとバロック洋式のような荘厳な建物が。これは法務省の旧本館で、あの関東大震災にも無傷で建っていたという堅牢な建築物です。

 桜田門

 法務省旧本館のはす向かいが桜田門。皇居の最南端にある門です。ちなみに警視庁はこの門の正面にあるので別名「桜田門」と呼ばれています。この日も皇居外周を走るランナーがたくさんこの門をくぐっていきました。城郭の門をくぐるとほとんどの場合直角に曲がった先にもう一つ門があります。この門と門の間の空間は四角形で、周囲を高い石垣などで囲まれた空間となっています。これは「枡形」といって、ここで表門から侵入した敵の勢いを止めて迎え撃つための戦略的要塞です。また、出陣の時などに軍勢が集まって鬨の声を挙げたりするのもこの場所です。
 今日は、この桜田門から皇居外苑を通り、皇居東側に位置する大手門から東御苑に入ります。そこから三の丸、本丸へと進み、お堀を渡って北の丸公園へ。最後は田安門で九段下に出る予定です。

 皇居外苑

 皇居外苑は北の丸公園とともに環境省が管理する国民公園で、完全に公開空間です。今日のメインである東御苑は、この外苑と北の丸公園にはさまれた地区で、こちらは宮内庁が管理する皇居の一部。なので開苑、閉苑の時間が決まっていて、中も皇宮警察がきっちり警備しています。ちなみに皇族が居住しているのは江戸城の付随庭園だった吹上庭園と本丸の西にある西の丸地区です。もちろんここは立ち入り禁止です。
 それにしても外苑はだだっ広いですね。その向こうには丸の内のオフィスビルが建ち並んでいて、手前の無人っぷりとの間で異常な対比を見せています。

 蛤堀

 坂下門付近までやってきました。さすがに皇居だけあって、樹木がいちいち巨大。写真のように大きなクスノキやクロマツなどの常緑樹が勢いよく茂っています。

 キンクロハジロ

 桔梗堀でくつろぐキンクロハジロ。皇居は大都会東京の中にあって豊かな自然を残す貴重な場所で、その中にはたくさんの動植物が暮らしているそうです。このカモたちは定住者ではなく、冬の間だけ訪れるいわば別荘生活者のようなもの。自分たちが特別な場所に来ているといることを理解しているでしょうか。いるわけないか。

 春近し

 大手門から東御苑に入ります。いきなり紅色の梅が出迎えてくれました。さっきの外苑とは異なり、ここにはたくさんの人が訪れています。もしかしたら外苑はあまりに広いので人が目立たなかっただけなのかもしれません。

 マンサク

 三の丸から二の丸へ。高い石垣の内側で日陰になっているところは、やっぱりシンと冷えてきます。枝先の蕾をようやくほころばせたマンサク。知らない人が見たら枯れたドライフラワーと思うかもしれませんね。

 ミツマタ

 ご存じ紙幣の原材料となっているミツマタ。枝が3つに分かれることから名前が付いたということです。もっさりしたのが花芽でその上に槍の穂先のように突き出ているのが葉芽です。3月も半ばにもなると咲き出すでしょう。満開のミツマタは本当に豪奢な雰囲気です。

 本丸跡

 本丸跡に上がってきました。ここで出迎えてくれたのは大きなケヤキのカップル。街路樹として見かけるものは交通の邪魔にならないように何回も剪定され、本来の姿を見ることはできませんが、ケヤキが自由に成長するとこういう形になるという見本のような木です。「箒を逆さにしたような形」といわれるのも納得です。

 ゴンズイ

 ゴンズイの花芽は写真のとおり無骨な感じ。これが初夏に小さく清楚な花を開き、そして秋には紅く毒々しい感じの果実を熟させます。花芽、花、果実でずいぶんと印象の変わる木です。魚にゴンズイというのがいますが、何か関係があるのでしょうか。そういえばさっき見たマンサクも魚に同じ名前のものがいますね。シイラの別名ですが。

 ハクウンボク

 羊毛のセーターを着てあったかそうなのはハクウンボクの冬芽。こんな姿をしているのを初めて知りました。花は白磁色で、多数が房状に垂れ下がる姿は、気品にあふれています。以前、西中国山地の奥深くで満開のハクウンボクに出会い、落ちた花冠が辺り一面を真っ白に覆っていたあの場面をいつまでも忘れることができません。感動でした。

 アブラチャン

 なんか先端に密集していますが、アブラチャンの冬芽は丸い2個の花芽とその間に尖った葉芽があるのが定型のパターン。写真もよく見ると、その組み合わせのものが何組か寄り集まっていることが分かります。早春の里山で黄色の花を咲かせているのに出会ったりすると、ほっこりとした気持ちになります。

 カンザクラにメジロ

 日向はポカポカ陽気。カンザクラの枝先をメジロが行ったり来たり。薄桃色の花冠に嘴を突っ込んで蜜を吸っていました。

 天守台

 本丸の北端に天守台がありました。思ったより大きくないといった印象です。でも、天守閣は戦闘時の司令塔ですから、むしろ平時の仕事場である本丸がこれほど広いということの方が城の巨大さを物語っています。あの「松の廊下」跡も本丸の一角にありました。調べてみると、天守閣が完成したのは二代将軍秀忠の代だそうで、その後三代将軍家光の代に大改修して地上58mの国内最大の天守閣を完成させたのだそうです。でも、そのわずか19年後に「振り袖火事」と呼ばれた明暦の大火で焼失し、その後再建されることはなかったのだそうです。時代は太平の世になったということでしょうか。(まてよ、暴れん坊将軍では天守閣が映ってなかったか?)

 トサミズキ

 名前のとおり高知県のみの自生するトサミズキ。このように公園などに植栽されることの多い木です。さっきのアブラチャンといいこのトサミズキといい、早春に咲く花は黄色いものが多いような木がします。

 平川堀

 天守台の裏手にある北桔橋門(きたはねばしもん)を抜けると平川堀です。天守閣に近いだけに警備が厳重だったそうで、石垣の高さも高く、また、門の名前からも分かるとおり、跳ね橋が架けられていたそうです。この辺りの石垣は「野面(のづら)積み」といって、地震に最も強い工法なのだそうです。堀を渡ると北の丸公園。間に首都高の都心環状線が走っています。

 ニホンスイセン

 北の丸公園は公開空間なので、散策やジョギングの人たちが多いです。あと、科学技術館や日本武道館もここにあります。解説によると、ここ北の丸公園は春日局や千姫の屋敷があった場所なのだとか。わずかな人数で広大な敷地を占有してたんですね。

 北の丸公園

 日射しがだいぶん斜めになってきました。穏やかな冬の午後、といった感じです。

 日本武道館

 ミュージシャンが目指す究極の場所、日本武道館。今日は特にイベントはなかったようで、静かな佇まいでした。

 ソシンロウバイ

 武道館の前で甘い香りを振りまいていたのはソシンロウバイです。半透明の花弁が日射しを鈍く反射していました。あぁ、のんびりするなぁ。

 田安門

 そして最後に田安門。北の丸公園の北端にあります。この堅牢な門の向こう側が枡形となっていて、左に曲がって堀を渡ると靖国通りです。

 千鳥ヶ淵

 門を出て堀を渡るともう夕方。急に冷えてきました。この後、靖国通りを西に向かってぶらぶらと歩き、坂を下って市ヶ谷駅を目指しました。

 市ヶ谷駅の駅ビルで冷えた体を休めることに。
 立春前の一年で一番寒い時期。でもそんな中にもちゃんと春を迎える準備が進められていました。なんか嬉しくなりますね。花粉症さえなければいい季節です。