鯉が窪湿原 〜湿原をわたる初夏の風〜


 

【岡山県新見市 平成17年5月11日(水)】
 
 ♪卯〜の花〜の匂う垣根に〜 って、季節はあっという間に初夏です。いい季節になってきました。
 今日はようやく代休が取れたので、ドリーム号を走らせて岡山県は新見市にある鯉が窪湿原に行ってみることにしました。今回はただぶらぶら歩くだけが目的。溜まった老廃物(ストレス)を湿原の浄化作用できれいにしてもらおうということです。(yamanekoにストレスなんてあるのか、という声が聞こえてきそうですが。)

 レンズ雲

 途中の車窓からポッカリと浮かぶレンズ雲を見かけました。10種雲形では高積雲の一種です。こんなのをぼんやり見ているだけですでにリフレッシュされていくようです。
 
 中国自動車道を東に向かい、東城ICで下りてR182へ。すぐに県境を越えて岡山県に入ります。ここは哲西町という町でしたがこの3月に周辺町村とともに合併し、今では新見市となっています。
 高速を下りてから約10分。「道の駅鯉が窪」前のT字交差点を右折して、田んぼの中の道をたどって山ひだの奥に入っていきます。山々の緑が一段と濃くなってきていて、目にしみるようです。

 資料館

 11時50分、湿原入口の資料館に到着。掲示してある花暦を見てみると、今咲いているのはリュウキンカくらい。この湿原を彩る花々の多くは7月から8月にかけて開花するもののようです。でもリュウキンカはオグラセンノウと並んで、この湿原を代表する植物。そういった意味ではナイスタイミングでした。 

 展望台から

 資料館からしばらく行くと堰堤があり、その向こうに鯉が窪池が満々と水を湛えています。この池は約300年前の元禄年間に潅漑用として造られたものだそうで、湿原はこの池の奥、いくつもの谷地状になったところに広がっています。その広さ、合わせて約6.3ヘクタール。池と湿原の縁を廻る遊歩道を一周すると約2.4qになるそうです。

 イカルの声が…

 遊歩道の順路は反時計回り。今日は平日とあって、人と出会うことはほとんどありません。静かな散策です。
 道ばたにはコバノガマズミが花をつけ始めていました。葉がスエードのような手触りでまだ十分に柔らかい。
 林の奥からイカルの澄んだ声が。鳥の鳴き声からも初夏の訪れを感じることかできます。

 ギンリョウソウ

 鯉が窪湿原は標高550m。資料館の解説によると、ここ鯉が窪は「西の尾瀬」と呼ばれているそうですが、尾瀬より1000m以上も低いところにあって様々な植物が自生しているのだそうです。
 今から1万年前までは日本列島は大陸と陸続きになっていて、多くの植物が入り込んできていました。(見てきたわけではありません。以下同じ。) 氷期なので気候は寒冷。したがって北方系の植物が勢力を広げていたのですが、やがて氷期が終わると気温の上昇にともなって北に移動していきつつも、高原や湿原ではこれら北方系の植物が一部残って定着していったといいます。一方、南方系の植物は氷期の間に絶滅してしまったものもありましたが、暖流の影響で沿岸部に生き残ったものも少なくなかったと考えられています。そして、これら南方系の植物は氷期が終わると北上し、各地に定着していくことに。このような経緯で、ここ鯉が窪湿原では多様な植物が見られるのだそうです。

 林を通り抜ける風のザワザワという音が心地よい。アップダウンもほとんどなく、楽に歩ける遊歩道です。

 ナラリンゴ

 遊歩道沿いでおもしろいものを見つけました。ミズナラの芽の部分にリンゴのようなものがくっついています。大きさはピンポン玉ほど。光沢がありまさにリンゴのようで美味しそうです。
 これは通称「ナラリンゴ」と呼ばれる虫コブで、主にミズナラに作られるものです。正式名称はナラメリンゴフシ。虫コブの名前は、「寄生される植物名」+「虫コブができる部分」+「形態的特徴」+「フシ(虫コブのこと)」という並びで命名されることが多いそうで、「ナラ類(主にミズナラ)の芽の部分に作られるリンゴのような虫コブ」だから「ナラメリンゴフシ」です。ちなみに作ったのはナラメリンゴタマバチ。明らかにまず虫コブありきで名前を付けられていますね。このハチももっとしっかりとした固有の名前を付けてほしかったでしょうに。

 リュウキンカ

 リュウキンカが一面に咲いています。まさに満開。
 この植物も北方系の植物が遺存したものと考えられています。氷期が終わってもここに残って1万年を過ごしてきたのでしょう。

 カムリタケ

 湿原の木道の脇にカムリタケが。消え落ちる間際の線香花火を逆さに立てたような姿をしています。湿地に積もった枯れ葉から栄養をとって成長するのだそうです。
 入口の資料館の開花情報にも「カムリタケ開花」と掲示されていましたが、これも「開花」って言うのでしょうか。

 初夏の湿原

 遊歩道の杭の上でヤマカガシが日向ぼっこをしていました。彼らは体が温まらないとなかなか活動できないのでしょう。カメラを向けようとすると、面倒くさそうに藪の中に入っていきました。
 辺りには早くもハンカイソウが葉を広げ始めています。夏にまた訪れたいところです。
 


 帰りに寄った帝釈峡。
 こちらは様々な花が咲き乱れていました。

 ヤマルリソウ

 ウツギ

 ホタルカズラ

 コンロンソウ

 ラショウモンカズラ

 ヤマブキソウ

 ジュウニヒトエ

 チドリノキ

 フタバアオイ  ニリンソウ  バイカイカリソウ  オドリコソウ

 ツバメが忙しそうに飛んでいます。きっと巣作りの真っ最中なのでしょう。