黄金崎 〜秋・暖地の海岸を歩く〜


 

【静岡県 西伊豆町 平成18年11月3日(金)】
 
 11月に入り山々は紅葉の真っ盛り。でも今回は海の方へ向かってみたいと思います。
 目的は温泉。仕事がひとヤマ超えたので、ゆっくりと疲れを取ろうということで。できたら夕日を見ながらとか。ということでネットで調べてみると、西伊豆が良いという結果になったのです。東伊豆より混まないし。
 
                        
 
 午前6時、ドリーム号に乗り込んで出発です。首都高3号渋谷線からそのまま東名高速へ。3連休の初日ということもあって交通量はかなりのもの。ナビを見ると東名の東京料金所(川崎にあるのに。)あたりから渋滞表示が出ています。
 昨夜3時間しか寝ていないので、トロトロ走っていると眠気が襲ってきました。なので港北PAで妻と運転を交代。その後気がついたら神奈川県西部にある中井PAまで来ていました。もうじき静岡県です。再び運転を交代。ここからは箱根の山塊を迂回するように山あいを走り、御殿場を超えて沼津ICで一般道へ。そこから伊豆半島に向かって南下します。

 黄金崎の駐車場

 伊豆半島のつけ根に位置する修善寺を過ぎると、明らかに地形が変わってきます。起伏が激しいのです。伊豆半島はフィリピン海プレートの先端にあって、日本列島が乗っているユーラシアプレートと衝突しその下に潜り込んでいく(年間数pのスピードで)現場なのだとか。衝突してギュギュッとシワが寄った地形なのでしょう。
 午前10時、黄金崎の駐車場に到着。ここには遊歩道があり、海岸まで下りていくことができます。

 遊歩道

 目の前に広がるのは駿河湾。今日は空気中の湿度が高いのか、正面に見えるはずの富士山は霞んで見えませんでした。
 海に突き出る岩壁はプロピライトと呼ばれる安山岩で、今から3500万年前頃、安山岩の割れ目から熱水が進入して生成されたものなのだそうです。もともと緑色だったものが、長い年月を経て、淡青色、黄色、黄褐色と変化していったものとのこと。今でも少し青みがかっている部分があります。 

 ツワブキ

 今年もツワブキが咲く季節になってきました。いたるところで鮮やかな黄色の花を開いています。名の由来は「艶葉蕗(つやばぶき)」。写真でも分かるとおり、葉は厚くつやがあります。この葉は民間薬として火傷や打撲の治療に使われていました。yamanekoも子供の頃、大腿部を火傷したときにこの葉を貼り付けてもらったことがあります。

 トベラの群落

 この辺りは冬でも比較的暖かいのでしょう。海に向かった斜面にトベラの群落が形成されていました。

 穏やかな海

 それにしても穏やかな海。yamanekoが子供の頃を過ごした日本海とはまったく異なる表情の海です。瀬戸内海も穏やかですが、あちらには川の流れと見間違うような潮の流れがあり、やはりこんな感じとは違うのです。

 展望台へ

 展望台へと続く階段を上ります。見上げると上昇気流をとらえて弧を描きながら上っていくトビの群れ。穏やかな小春日和です。いやまだ立冬を迎えていないから「小春日和」はおかしいか。晩秋のポカポカ陽気の一日です。

 伊豆半島の山々

 海岸線沿いの湾の向こうに伊豆半島の山々が望めます。水際から1000m近くまで一気にせり上がる山々。同じように駿河湾も一気に深く沈み込んでいるのです。

 ウバメガシ

 ご存じ備長炭の原材料、ウバメガシです。暖地の海岸近くの山地にに生育するブナ科の低木です。神奈川県から沖縄県までの沿岸地に自生しているそうです。名の由来は春先の新芽が初め焦げ茶色をしていて、おばあさんの目の色に似ていたからとのことです。
 さて、ここから林の中の小径をたどって、足下に見える入り江に下りてみましょう。

 ヒヨドリジョウゴ

 林の中にヒヨドリジョウゴの瑞々しい実がぶら下がっていました。見た目は美味しそうですが、有毒です。

 ダイビング

 入り江に下りてみて気がついたのですが、ここはどうもダイビングスポットのようです。ダイバー専用の休憩ハウスがあったり、ウエットスーツを引っかけて水気を切るための物干しがあったりで、ダイバーにとっては至れり尽くせりのようです。ざっと数えて7、80人はいました。中にはインストラクターに付いて教習中のグループもいくつかありました(上の写真も)。

 イソギク

 海岸のあちこちに黄色い小さなキクが群落を作っています。イソギクです。遊歩道沿いでもたくさん見かけました。このキクは、千葉県の犬吠埼から静岡県の御前崎までの太平洋岸に生育しているのだそうです。

 イソギク

 葉の表面は緑色ですが縁は白く、遠目にもくっきりとして見えます。裏面は銀白色です。花に顔を近づけると少しムッとするような異臭がありました。ちなみにこの花は栽培されて菊人形の着物部分に使われるのだそうです。

 「家族の肖像」

 今日はめずらしく家族での野山歩きです。みんな思い思いに海を楽しんで(?)いるようです。

 イソギンチャク

 潮が引いた後の岩陰にイソギンチャクが並んでいました。新手のスイーツのようにも見えますが、確かに触手をしまい込んだイソギンチャクです。(さっき、「イソギク」に「ンチャ」を入れると「イソギンチャク」になることに気がついて、オオっと感心しました。…、それだけのことです。)
 
 岬や海岸でゆっくりと過ごしたので、昼食も兼ねて近くにあるガラスのテーマパーク「黄金崎クリスタルパーク」へ行ってみることにしました。この辺りはガラスの原材料「珪石」の一大産地だったところで、一時期日本の板ガラス生産を支えていたところなのだそうです。
 ここは万華鏡の展示も素晴らしく、何度感嘆の声を上げたかしれません。

 万華鏡の中の世界

 さて、肝心の温泉はというと、クリスタルパークでたっぷり時間を使ってしまった結果、時間もすっかり遅くなってしまい、堂ヶ島辺りの観光ホテルでは立ち寄り温泉の時間が過ぎてしまっていました。(もちろん泊まりの部屋は満室でした。3連休ですから。) 携帯サイトとナビで検索すると、どうやら少し内陸に入ったところに道の駅があって、そこには町営の温泉があるとのこと。海辺で夕日を見ながらというわけにはいきませんでしたが、露天もあり、十分くつろげました。ちなみにここの露天風呂、男湯も女湯も外から丸見えです。

 道の駅
 「花の三聖苑伊豆松崎」

 風呂から上がって休憩室のような広い部屋で一眠り。畳の上で大の字になっていると、二の腕やふくらはぎから疲れの成分が溶け出していくようでした。