縮景園 〜しめくくりも晴天の観察会〜


 

【広島市中区 平成14年12月15日(日)】
 
 広島市街の中心部にポッカリと広がるオアシス、縮景園。
 本年最後の観察会はここ縮景園で、冬の鳥の観察を中心に行われました。
 
 素晴らしい青空のもと、風もなく、日向にいるとポカポカと暖かい。(日陰にいるとシンと冷えます。) 今回も楽しい観察会になりました。

 開会のお話

 恒例となっている開会の話は「季節の移り変わり」について。
 なぜ季節はめぐるのだろうか。これを地球の動きで説明されました。
 地球の中緯度地帯に四季があるのは、地球の自転軸が公転面に対して(何度だったか忘れたけど)傾斜しているから。その傾斜を保ったまま公転することによって、単位面積当たりに太陽から受けるエネルギーが季節ごとに変化するからなんだそうです。(実際には対流とか放射とかいろいろ複雑なんでしょうが。)

 要は、太陽の周りを回りながら、熱をたくさん浴びる位置にいる時が夏、浴びる量が少ない位置にいるときが冬ってこと。
 
 ここでちょっと太陽系の小ネタを調べてみました。太陽系の9個の惑星のうち太陽に近いほど公転周期が短く(円周が短いのだから当然といえば当然です。)、一番内側の水星では地球時間にして58日で太陽を一周するそうです。最も時間がかかるのは一番外側の冥王星で248年弱もかかるのだとか。また、スピードも内側ほど速く、水星は冥王星の10倍のスピードで公転しているのだそうです。
 
 一方、自転はというと、地球より大きい惑星では地球より短く、木星では約10時間で1回転するのだとか(!)。地球より小さい金星では1回転するのに243日もかかり、これが金星の1日です。金星の公転周期は224日だそうですから、何と1日がたたないうちに1年が過ぎてしまうことになります。仮に金星に四季があったとすると1日のうちに四季が移ろっていくということでかね。おもしろいですね。
 
 ついでに太陽系全体の姿はというと、直径600mほどの大きな円の中心にソフトボールが1個、これが太陽です。そこから5mおきに仁丹の粒が計4個。これらは水星、金星、地球、火星です。そこからはいっきに離れて約100mおきにパチンコ玉が4個。これらは木星、土星、天王星、海王星です。そしてさらに150mほどはなれて芥子粒が1個。これが冥王星です。
 想像してみてください。太陽系って極めて疎な空間なんですね。こうしてみると惑星探査衛星のボイジャーは星から星へと長く孤独な旅を続けていたことが分かります。

 本日のリーダー、太田さん

 話を縮景園にもどしましょう。

 縮景園は広島藩主浅野長晟が別邸の庭として造ったものだそうです。
 都会のまん中にありながら結構静かです。

 サクラの標本木

 縮景園にはサクラやウメなど何種類かの植物の標本木があり、変わったところではススキやアジサイなんてのもあります。
 標本木とは気象台が生物季節観測のために利用している植物で、各県ごとに指定されています。気象台の職員が目視で観測するため、気象台の近くにあり周辺の環境が変わりにくいところにある植物が指定されるのだそうです。
 縮景園にはサクラの標本木が5本あり、この5本のいずれかの木に3輪以上の花が咲いたら「開花宣言」となるそうです。

 「ほら、あそこに」
 「おぉー」

 ふだんは鳥の姿を認めてもなかなか種類までは特定しにくいものですが、指導員と一緒に観察すると、こんなにもたくさんの鳥たちが身の回りで暮らしているのかとあらためて驚きます。
 遠くのイチョウの梢にはツグミ、目の前の枝にはアトリ、この季節でも緑の葉をたくさん付けているクスノキの葉陰ではヤマガラやメジロが飛び交っていました。庭園の池にはアオサギやコサギ。木の幹に防寒用のねぐらを造営中なのは小型のキツツキのコゲラです。

 庭園の北側は京橋川です。その川岸に立つエノキにめずらしいものがあるとの説明が。
 みると木の幹になんだか小さな穴(径5oくらい)がたくさん空いています。その数、ざっと50個くらい。

 これはヒラアシキバチという蜂が中から食い破って出てきた跡だそうで、こんな街中で見られるのは極めて珍しく、広島県で確認されているのはここを含めて2カ所だけだとか。
 ヒラアシキバチはエノキの幹の衰弱した部分をえらんで産卵管を突き刺し卵を産み付けるのだとか。このとき幼虫が木を食べやすいように産卵と同時に腐食菌を植え付けるのだそうです。
 固い木肌にドリル状の産卵管を突き刺すのは命がけの営みで、ヒラアシキバチは産卵後力尽きてそのまま死を迎えた後も、その骸を産卵管でつなぎとめられたまま朽ちていくそうです。次の世代に命を引き継いでいくための壮絶なドラマですね。
 写真上部の針のようなものが残った産卵管で、この奥にはきっと卵があるはずです。

 キチジョウソウ  ヒイラギ

 花の少ない冬でもキチジョウソウやヒイラギなどが目を楽しませてくれました。特にヒイラギはこのサイトのロゴマークのひとつですから愛着があります。

 サンシュユの実

 時計を見るともう12時を回っていました。
 暖かい日差しがこの庭園を包み込んでいます。結婚を控えたカップルが和装の先撮りをしている光景も微笑ましく、本当にのどかな気分にさせてくれます。あとは茶屋で甘酒でも…
 いや、この日はこの後忘年会でした。昼間から。