可部冠山 〜来年の使者が舞い降りた?〜


 

【広島市安佐北区 平成14年12月28日(土)】
 
 年末年始企画の第一弾として「日だまりの山歩き」を提案したときには考えてもいなかったのですが、先日来の寒波で山はすっかり雪景色でした。
 集合はふもとの南原峡に9時30分。日の当たらない谷間の道を行くと、キンキンに冷えた空気が頬を刺します。

 コウヤミズキの冬芽
 (花芽)

 沢沿いに立つコウヤミズキの花芽はいまにもはじけそうに膨らんでいますが(実際すでに開花した花芽もありました。)、季節はやっぱりまだ冬。芽の下の雫も氷となって、その中に澄んだ青空を閉じこめていました。
 
 南原峡をどん詰まりまでさかのぼると、さあ、いよいよ登山道です。

 足元に注意

 この道は登山道として開かれたものではなく、古くは「石見街道」と呼ばれ、江戸初期に参勤交代のための官道として整備されたものだそうです。
 石見の国(島根県西部)浜田藩の殿様が、中国山地を横断して広島経由で江戸に向かったのです。
 浜田今市(島根県旭町)−市木(島根県瑞穂町)−中山(広島県千代田町)−本地(同)−可部(広島市安佐北区)−広島 の行程約120qを3日間で歩いたそうです。一行は一日目の宿を市木で、二日目の宿を本地でとり、しっかり休んでそれぞれ三坂峠、可部峠の難所に備えたのでしょう。
 今日はそれを逆にたどり、可部峠で街道から逸れて山頂を目指します。

 可部峠も間近

 道はだんだん険しくなりますが気温が低いので汗は出てきません。

 稜線が見えてきた

 ときおり樹上の梢から雪が落ちてきて、これがまた見事に首筋に命中するんです。そのたびに「アウッ」とか「ウオッ」とか悲鳴が聞こえてきます。

 可部の町並み(南方向)
 A:高松山 B:福王寺山 C:呉裟々宇山 D:二ガ城山 E:松笠山
 F:阿武山 G:古鷹山(先週登った山)

 12時20分、山頂(736m)に到着。
 360度の展望が広がっています。上空には雲がかかってきましたが、可部の町並みやさらに南の広島湾には光のベールが降りています。あぁ、登ってきてよかった。

 西には海見山(870m)  東には備前坊山(789m)の向こうに
 白木山(889m)

 ひととおり景色を楽しんだら昼食です。
 幸いほとんど無風だったので過ごしやすかったのですが、やはり寒い。箸を持つ手が痛いほどです。

 メシだ、メシ!

 昼食が終わったら、おもむろに雪を丸めだす人が二人。大きな雪の塊で何かを造りはじめました。
 おもしろそうなので、みんなも参加します。

 「ここはこうしてっ、と。」

 ジャーン! 完成です。
 「荒削りな中にもキラリと光る才能を見いだせる作品」(某氏評)だそうです。

 来年の干支は

 可部冠山の山頂に雪のヒツジが舞い降りました。
 「年末に見晴らしのいい山に登って来年を見通しのいい年にしよう」が今回の企画のキャッチコピーだったのですが、ヒツジが早くもやってきたところをみると来年はきっといい年になることでしょう。
 それにしても、明日あたり登ってきた人はきっとビックリするぞ。

 下りは滑りやすい

 そろそろ下山です。また陽が差してきました。
 冠山と名がつくだけあって頂上部が烏帽子状に突出しているため、下りはじめはかなりの急傾斜です。
 ふだん使わないような筋肉を総動員して、滑らないように降りていきました。尾根沿いにいくつかのピークを上り下りしながらふもとの南原峡を目指します。
 
 途中、石采の滝、加賀津の滝を巡って、駐車場に着いたのは4時を回っていました。
 心地の良い疲労とともに車に乗り込んで、解散です。あとは安全運転で家に帰り着くだけです。