加波山 〜秋惜しむ静寂の山〜


 

【茨城県 桜川市 平成23年11月26日(土)】

 巷に師走の声が聞こえ始めると、低山の紅葉もいよいよ盛りを迎えます。その紅葉を愛でながらのんびりと山歩きをしようと、また中年3人組が集まりました。いずれも日々ストレスと苦闘している面々。青空の下で気分転換でもして、なんとか年内乗り切ろうという趣旨です。
 
                       
 
 で、やって来たのは茨城県中部にある加波山。筑波山から北に延びる稜線上にある山です。
 午前7時30分、JR王子駅北口で2人をピックアップして、王子北ランプから首都高へ。事故渋滞で常磐道柏ICまでは混んでいましたが、その先はスイスイ。友部JCTから北関東道へ入り、桜川筑西ICで一般道に下りたのは9時半すぎ。そこから登山口までは15分くらいです。

 加波山?

 地元のコンビニ、セイコ−マートで食料を仕入れて、いざ登山口へ。やがて見えてきた山並みに、おお、あれが加波山か。きれいな稜線じゃないか。と、車を止めてパチリ(後刻、隣の足尾山と判明。)

 駐車場

 加波山は信仰の山で、山頂には加波山神社と呼ばれる神社があります。山の麓にはその里宮があり、そこの前にある駐車場に車を止めました。今日はここを起点として山歩きを始めます。


Kashmir 3D
 

 今日のルートは、駐車場(1合目)から歩き始め、左手に寝不動尊(2合目)が現れたらそこから尾根筋の山道に。採石場(5合目)のところで再び車道に出て、今度は谷筋に入ります。8合目を過ぎたあたりで林道を横切りると、ほどなく主稜線に到着します。主稜線をしばらく南下すると加波山山頂。復路は、往路の1本南側の筋を下りてきて、寝不動尊のところで往路に合流するというものです。

 

 駐車場からはしばらく舗装路を歩きます。この道は5合目の採石場まで続いていて、石の搬出に使われています。この辺りは「真壁石」という花崗岩の有名な産地なのだそうです。
 右手には筑波山。ここからだと7qあまりの距離でしょうか。yamanekoの家からも見える山ですが、当然のことながら裏表逆の姿で見えています。

 寝不動尊入口

 ほどなく左手に鳥居が現れました。寝不動尊の参道入口です。この辺りからもう民家はありません。中年3人組はここから舗装路を離れて、20mほどの参道を行きます。それにしても不動尊(不動明王)は仏教の信仰対象のはずですが、それが神社に祀られているとは。神仏習合の時代の名残でしょうか。

 

 寝不動尊の手前に案内板があり、右手を直進するとしばらく山道を歩いて3合目で舗装路に出るルートと、また、左手に行くと不動尊の裏手から山道に入り5合目で舗装路に出るルートと書かれていました。ここは当然に左の方へ向かうことにしました。

 

 神社の左手から小さな流れを渡って山道に入っていきます。足下には沢山の落ち葉。やっぱり舗装路を歩くよりこっちの方が断然いいですね。

 ウリカエデ  ミツバアケビ

 里山の紅葉。その素朴な色合いに心惹かれます。ウリカエデは全体に華奢な感じのするカエデ。一枚の葉の中に様々な赤や黄を流し込んでいて、水彩画のようです。ミツバアケビはやや革質でテカりのある葉が特徴。波打つ縁も柔らかい印象で、いい感じです。

 コナラ

 陽を受けて輝くように黄葉しているのはコナラです。この写真をじっと見ていたら、ほんのり焦げ目のついたスイートポテトを思い浮かべました。

 

 こんな風景の中をのんびりと歩けるなんて。これを贅沢と言わずして何という。たいていのストレスはこれだけで消えてしまうというものです。

 

 「錦絵」というような紅葉ではありませんが、春先からずっと働いてきた円熟の色合いとでも言いましょうか。

 採石場

 おお、採石場です。この日もガガガガッと作業をしていました。

 加波山

 山の方を見ると加波山の頂上が。これからあそこまで行きます。

ウリカエデ 

 これもウリカエデ。さっきのは5裂の葉。こちらの葉は3裂ですが、このぐらいの変異は普通のこと。

 

 5合目から舗装路に合流。でもすぐに山道になります。この先で舗装路は行き止まりなのです。

 コアジサイ

 まだ緑色をしているのはコアジサイの葉。緑色の色素クロロフィルが少し壊れてきた状態で、濃い緑色から黄緑色になってきています。
 コアジサイはアジサイに特徴的なあの装飾花がないのが特徴。両性花のみで虫を呼べるというのは、他のアジサイよりもいい匂いを出しているとか、何か優れた点があるのだと思います。意識して匂ったことないので、今後花の季節に見かけたら確認してみようと思います。

 

 落ち葉を踏みながら一歩一歩登っていきます。その葉を落とした木々の梢は、日光を遮ることなく地面まで届けてくれます。ありがたや。

 ヒノキの森

 8合目あたりからヒノキの植林地に入りました。さっきまでとは違って薄暗いです。ヒノキの森特有のいい匂いがします。
 ところで芳香剤などに用いられる成分にヒノキチオールというのがあるのを知っている人もいるでしょう。ヒノキの森の匂いはその成分によるものだとばかり思っていましたが、なんと日本のヒノキからは採れないのだとか。知らなかった。これまで観察会などで何度か「このヒノキの森の匂いは…」とか言ってしまったような気がします。(日本ではヒバから精製しているのだそうです。)

 ヒノキの球果

 足下から拾い上げたヒノキの球果。裂開して種子を出してしまった後ですね。

 コアジサイ

 こちらのコアジサイはクロロフィルがほぼ壊れきってしまって、元からあった黄色の色素が見えている状態です。

 

 11時45分、稜線に出たところに鳥居と神社がありました。

 

 どうやらここは加波山神社の拝殿のようです。御朱印ハンターのMさんが社務所に声をかけましたが、忙しかったのか断られたようでした。
 ここからさらに尾根沿いに登っていくと山頂に至ります。

 

 花崗岩が露出した尾根道を行きます。空気はひんやりとして、いつもはぽかぽかの指先が冷たく冷えています。

 ブナ

 堂々たるブナが現れました。関東地方では、地形によって異なりますが、低いところでは標高600mくらいから出現します。中国地方では確か900mくらいからだったはずですから、やはりこちらの方が寒冷なのかもしれません。

 

 この時期はこういった山道を歩くのが何より楽しい。いい休日です。

 

 これぞ紅葉。イロハモミジです。見ようによっては商店街の電柱に取り付けられているやつみたいでもありますが。

 

 12時ちょうど、いくつかの祠を過ぎて本殿に到着。加波山にはもともと別々の3系統の神社があり、それぞれに里宮、山上拝殿、山上本殿を持っているので、稜線上にいくつもの祠があります。なのでどれがどれだかよく分かりません。

 北西方向

 稜線上唯一展望が開けているのがここ。北西方向の眺望が素晴らしかったです。鬼怒川が長い年月をかけて作った平野の向こうには奥日光の山々。ここからは距離にして約80qです。

 

 ズームしてみるとこんな感じ(写真にマウスオーバーで山名表示)。手前の横に伸びる低い山並みが茨城県と栃木県との県境になります。

 

 さっきの祠から5分くらい歩くと現れる別の本殿。眺望はありませんが、周囲に腰を下ろすことができる岩などもあるので、ここで昼食にしました。

 

 時刻はちょうどお昼ですが、気温は低いです。今日はバーナーを持ってきているので、暖かいラーメンを。でも食後にゼリーを食べたらまた冷えてしまいました。

 

 じっとしていると寒いので、さっさと下山することに。動いているとなんとかなるのです。

 

 見上げるとこんな風景。いやあ、しみじみいいですな。

 ウリハダカエデ

 こちらはウリカエデではなくウリハダカエデ。両方とも木肌がマクワウリのような模様をしているから、似たような名前が付けられています。

 筑波山

 関東平野にぽっかりと浮かぶ小島のような筑波連山。ここから南に向かって一列に並んでいます。

 

 麓には鬼怒川やその支流の河岸段丘が広がっていて、こんもりとした森と耕作地、それと西日を反射した民家の屋根が散らばっています。晩秋の午後です。

 3合目

 1時50分、3合目まで下りてきました。山道はここまで。ここから舗装路を下ります。

 加波山

 1合目近くから振り返って見る加波山。穏やかな姿をしていますね。駐車場まで戻って山歩きは終了。出会う人も少なく、静かな山歩きでした。
 今日はこれから筑波連山の東側に移動し、石岡市にある「やさと温泉ゆりの里」という温泉施設に寄って帰ります。以前1度行ったことがあるところで、食事処では美味しい茨城ポークを使った料理が食べられます。地元のJAが経営しているようで、売店には農産物もたくさんありました。
 さあ、冷えた体を温める温泉に向かってGO!