深入山 〜川だ!山だ!JPRその1〜


 

【広島県戸河内町 平成14年10月5日(土)】
 
 いよいよ秋本番です。
 この週末は元気いっぱいの子どもたちと一緒に自然体験をしてきました。
 環境省のJPR(ジュニアパークレンジャー)に応募してきた小学校高学年の子どもたちの活動を、われわれ宮島地区PV(パークボランティア)たちがサポートするというものです。
 
 JPRは、1泊2日の自然体験活動を年3回行います。1回目は7月に宮島(カヌーで海上清掃など)、2回目は8月に大久野島(島内探検やマップ作り)と、いずれも海辺の自然と触れあってきました。
 最終回の今回は太田川と深入山。川と山の自然と触れあうことで、これらが海とも密接につながりあっていて、そして一つの循環する環境を形作っているということを理解しようというのがねらいです。
 そう、山や川が汚れれば海が汚れる、豊かな海の背景には豊かな川や山がある、ということです。

 広島駅バスターミナル

 9時15分、広島駅に集合。
 子どもたちは全員で31人。6つの班に分かれていて、自分の担当は第6班の5人でした。
 ちびっこ同士はもう3回目ですからみんな顔なじみ。久しぶりの再開でもすぐにじゃれ合っています。でも、サポートするPVは毎回新しい顔ぶれなので、この子達の中にうまくとけ込めるか若干の不安が…。

 「6班はこっち!」

 しかしそんなことは全くの杞憂でした。子どもたちの屈託のない笑顔のおかげで、あっという間にあだ名で呼べる関係になることができました。(ホッ…)
 体の大きな「たっくん」、姉貴分の「あーちゃん」、ひょうひょうとした「オースケ」、純真無垢な「もりりん」、そしておしゃまで小さな「ふーこ」。それぞれ違う個性の5人です。
 さて、どんな出来事がまっていることやら。
 
                  
 
 さあ、バスに乗り込んでいよいよ出発です。となりのシートにはもりりんが座ってくれました。これから太田川をさかのぼり、最終的には上流部にある深入山を目指します。
 やがて車窓には広い河川敷と共に蛇行する太田川が見えてきました。もりりんはこの夏、田舎のいとこと川で遊んだときのことを一生懸命に話してくれました。話したいことがいっぱいありすぎてもどかしいようです。
 そして、バスに揺られること1時間とちょっと。加計町にある「水の文化館」に到着しました。

 水の文化館

 リゾートホテルまでとは言わないもののどことなく宿泊施設の雰囲気を漂わす建物。それもそのはず、もともとこの施設は、ここから滝山川(太田川の支流)を少しさかのぼったところにある温井ダムを建設していたときの作業員宿舎なんです。
 今では水の文化館のほかにも、民族資料室や絵画展示室、ホールなどもあり、町民の文化施設として活躍しています。


 展示室


 広島工業大学HPより

 太田川の水系には日本でも他に類を見ないといわれる特徴があります。
 この川の流域となっている広島県西部一帯には、北東から南西に向かって走る断層が平行して何本もあり、山々はこれに沿った谷に削られ、航空写真で見るとまるでレンガを斜めにきれいに並べたように見えます。
 レンガ一つ一つが大きな山塊で、その隙間が谷です。海に浮かぶ宮島もそのレンガの一つで、谷の部分まで海水が進入して島になったことがよく分かります。(広島市中区西白島の中央公民館ロビーに飾ってある大型航空写真を見ると、なるほどと実感できます。)
 これは、この地域を覆っている花崗岩の節理の方向に断層が発達したからということです。
 太田川本流は、この節理の向きに沿いつつ、水の文化館がある加計町から90度方向を変え、左右から支流を集めながら瀬戸内海に注いでいるのです。

                  

 次は戸河内町までさかのぼって、河原で弁当を食べました。
 たっくんは一目散に水辺に向かい、早くも転んでズボンをびしょびしょに。オースケは中州の葭原の中へ。ふーこは、大きな岩の上にちょこんと座って弁当を広げていました。
 ふーこはいろんなものに興味を示し、道草、寄り道大好き。口数は少ないけどちょっと目を離すとチョロチョロとどっかに行ってしまいます。ひょっとしたら彼女には、大人はもちろん他の子どもたちにも見えない何か、たとえばピーターパンのティンカーベルのようなものが見えているのかも。そんな雰囲気を醸しているような子でした。
 
 昼食後は水棲生物の観察です。
 ここの護岸は「まほろば護岸」といって、生物の住環境に配慮した工法で施行されたものだそうです。
 ほんのわずかな時間で、たくさんの種類の生物に出会いました。カワゲラ(幼虫)、ヒゲナガカワトビゲラ(幼虫)、コオニヤンマ(幼虫)、ヒラタカゲロウ(幼虫)、サワガニ、ヨシノボリ、カワニナ…。子どもたちは大騒ぎ。あーちゃんも獅子奮迅の活躍です。最初、手ではつまめなかった川虫をもりりんもオースケもどうにかつまめるようになったようです。
 やはりきれいな水に棲む生物が多く見られました。というかこの生き物たちがいるからきれいな水を保てているといった方がいいのかも。
 観察後は、もといた場所に放してあげました。

 「コレ何だ!」  ヨシノボリ

 深入山の山村生活体験施設に到着してからは、宿泊室に荷物を入れます。
 子どもたちはもう嬉しくて嬉しくて。さっそくベッドによじ登り、オースケたちは基地ごっこを始めています。
 たのむから壊すなよ、ベッド。
 
                  
 
 夕食後、動物園に勤務する大丸先生の指導で、「木をつくろう」というネイチャーゲームをしました。

 「木をつくろう」

 ハサミやカッターの使い方はたどたどしいものでしたが、子どもたち同士でアイデアを出し合って作っていました。

 「あっ、葉っぱはハサミで切るより、手でちぎった方が感じが出るよ。」 あーちゃんのアイデアです。
 みんなの中で唯一立体的な葉っぱを作ったたっくん。棟方志功を彷彿とさせるふーこ。いろんな個性が光っていました。

 完成したところで「イェーイ」 ん?ふーこがいない!

 夜は更けていきますが子どもたちの目はランラン! すぐに寝付けるはずもありません。
 何度かカミナリを落とされて、ようやく眠りについていきました。