蛇喰磐 〜伝説を生んだ水の彫刻〜


 

【広島県大竹市 平成15年9月13日(土)】
 
 台風14号が九州の西を通過してくれたおかげで、予報では雨の土曜日が一転青空に。でもまだちょっと風が強いようです。
 午前中はパークボランティアの幹事会があったので宮島へ。この島に渡るのはこれで今年何回目になるのだろう。もう10回くらいは行っているかも。しかし、宮島は一年中いつ行ってもどんな天気でもたくさんの観光客がいます。やっぱり正統派の観光地ですね。
 
 幹事会は昼までで終わりましたが、そのまま広島に帰るのもなんなので、さらに西に向かってドライブ。広島県と山口県との境を流れる小瀬川をさかのぼること約15qのところにある「蛇喰磐」(じゃくいいわ)に行ってみました。

 蛇喰磐(下流側)

 蛇喰磐は小瀬川と玖島川の合流点にある、花崗岩の河床が幅30m長さ200mにわたって露出している場所で、その上を流れる水が河床を浸食してたくさんの甌穴を造りあげています。
 広島県の地質を考えるときに必ずと言っていいほど顔を出すのがこの花崗岩。それもそのはず、中生代(恐竜の時代)後期に日本で一番大きな花崗岩体の形成がここ中国地方西部でおこったと考えられているのです。(当時は大陸の端に位置する地域だったのだそうですが。)
 現在の広島市から県北西部をとおり島根県に続く岩体と広島市から岡山県東部におよぶ岩体とを「広島花崗岩体」と呼ぶそうで、これが広島県内のいたるところでさまざまな地形を見せてくれているのです。

 蛇喰磐(上流側)

 蛇喰磐は、夏場は格好の水遊び場となって家族連れなどでにぎわう場所ですが、残暑とはいえ9月も半ばになるとさすがに人影もまばらです。
 今日は台風の影響で水量が豊富。いつもは露出している岩が水面下に沈んでいるものもあります。

 甌穴(水面下です)

 ひとしきり水の流れを見てまったりしたら、辺りの様子にも注意を向けてみましょう。

 ツリガネニンジン

 花冠が少しスマートなツリガネニンジン。ひょっとしたらサイヨウシャジンかもしれませんが、相違点が今ひとつ判然としません。

 サワフタギ

 サワフタギがコバルトブルーの実をつけていました。漢字で書くと「沢蓋木」。よく枝分かれして茂るので、沢に覆い被さるように生える木という意味でしょうか。昔、サワフタギの灰汁は紫根染めの媒染剤として利用されていたそうです。

 キリの花芽

 何の実かなと思ったら、キリの花芽でした。茶褐色の毛が密生しています。秋が深まると葉は落ちますが、花芽はこのまま冬を越して翌春の開花を待ちます。
 キリの材は日本の樹木の中でもっとも軽く、また木目が美しくてひずみが少ないので、タンスや下駄、金庫の内張などに使用されるそうです。

 チョウ?

 キリの枝に蝶らしきものが。羽根の幅は1.5pほど。羽根は透きとおっていて向こう側が透けて見えます。そっと触ると蝶とは異なり跳ねるような俊敏な動きで飛び去りました。調べてみると、これはスケバハゴロモといってウンカの仲間だそうです。
 
 ところで「蛇喰岩」の名の由来は、この近くにある三倉岳に棲んでいた大蛇がこの一帯の岩盤を食べてあのような地形になったからということです。

 三倉岳

 この三倉岳も花崗岩の山。中国地方屈指のフリークライミングのゲレンデでもあります。