泉自然公園 〜谷地・早春の静けさ〜


 

【千葉市 若葉区 平成19年2月25日(日)】
 
 2月ももうそろそろ終わりです。都心は暖かい日が多いのですが、これが人間の集中により増幅されたものなのか、それとも関東全体がやっぱり暖かいのか。そんな疑問を解決すべく、今日は千葉市郊外の里山や畑が広がる中にある泉自然公園に行ってみました。
 
                        
 
 さてさていつものように首都高に乗ったドリーム号は7号線から京葉道路へ。そのまま千葉市中心部を通り過ぎ、千葉東金道路に分岐して高田ICで高速を下ります。そしてほどなく自然公園の入り口に到着。時刻は10時半をまわっていますが、ここはやっぱり下総台地の上にあるだけあって、車を下りるとシンとした空気が漂っていました。

 霜柱

 ここ泉自然公園は、小さな川の支流が里山の谷地に入り込んだ地形を利用して、その周辺の自然ごと公園になっているところです。公園といってももちろん街中にあるような公園ではありません。(「谷地(やち)」とは小さな谷の奥まったところで、湿った環境の場所をいいます。「やと」とも「やつ」ともいいます。里山とは切っても切れない間柄です。)
 歩き出してすぐ、まだ霜柱があちこちに見られました。霜柱は、地中の温度が0℃より高く、地表の温度が0℃以下のときに、毛細管現象で地表にしみ出した水分が柱状に凍結したもので、関東地方の赤土などではできやすいのだそうです。そういえばマサ土(風化花崗岩土)の多い広島ではあまり見かけませんでした。

 ヤブツバキ

 斜面の小径を下って谷地にやってきました。ヤブツバキの花が重たそうに付いています。この花は花期が長く11月くらいから翌年の4月くらいまで入れ替わり咲いています。子供の頃、ヤブツバキの花筒を萼から抜き取ってその根元にある蜜を吸って遊んでいました。甘いんです、これが。

 タチツボスミレ

 おぉ、ここに春の使者が。タチツボスミレです。枯れ葉に覆われた斜面から顔を出しています。
 この季節、花粉症でけっこう辛いのですが、こうやって春が近づいてくる足音を聞きたくてやっぱり野山に出かけてしまいます。

 ため池

 谷地は細長くいくつかに区切られていて、奥の方は菖蒲田に、手前の方はため池になっていました。池の中には大きなコイが。
 今日は気温は低いですが風がないのでじっとしていても冷えてはきません。こんな日は梢を往き来する鳥を観察するのには適しています。さっきからギィギィというコゲラの鳴き声が聞こえてきているので双眼鏡で探してみると、池の畔の木の幹をコツコツと突きながら螺旋状に登っていっていました。

 里山のクヌギ

 里山のクヌギは成長すると伐採され、その切り株から新しい芽を出し再生していく。これを繰り返して根元の方がいびつな形になっているものが多いです。そのサイクルは約20年。山仕事をするために下草は定期的に刈られ、これらは飼料や肥料として活用されました。また、打った枝は薪にしました。こうやって手入れをされることにより、森は適度の光と風を取り込むことができ、多様な植物や動物の命を育む場所として機能してきたのです。
 人々の生活様式が変化し、里山を利用しなくなると…。

 ニリンソウ

 なだらかな斜面にニリンソウの葉が広がっていました。この花は地下茎で増えるので群生することが多いのだそうです。イチリンソウとニリンソウ。花冠はイチリンソウの方が大ぶりですが、yamanekoとしてはニリンソウの清楚な姿の方を好ましく感じます。(1週間後、この公園のHPにニリンソウが咲き始めたと報告されていました。)

 マガモ

 池には10羽ほどのカモが浮かんでいました。なんとも長閑な光景です。このマガモ、この場所に棲みついてアヒル化したものではなく、正真正銘のマガモです。今は水面でのんびりと過ごしていますが、今年はいつもより早く春がやってきそうなので、この先慌ただしい旅立ちになるのかもしれません。

 早春の里山風景

 一筋目の谷地を過ぎ、反対側の丘を登りきってまた二筋目の谷地に下りていきます。どうですか、この典型的な里山の風景。あと二月もすれば新緑に彩られるのでしょうが、今は早春の日差しを余すことなく受け入れて、山肌一面にその恵みを行き渡らせているところです。

 ニシキギ

 枝に薄い板状の翼がある特徴的な樹木。ニシキギです。翼はところどころ欠落していますが、よく見るとある芽から同じ線上にある次の芽までの一枚の翼のうち、根元に近い部分半分ほどが残り、枝先に近い方の半分が欠落しているのがほとんどです。ちょっとわかりにくいかもしれませんが、若い枝では欠落する前の状態が見られますので、それと比較すれば分かりやすいかもしれません。

 ニシキギ(若い枝)

 ニシキギはその名のとおり秋には錦のように紅葉します。葉のサイズは小さいので豪勢さはありませんが、根元から放射状に伸びる枝全体に真紅の葉がびっしりと付いて、それが日に照らされている姿は、それは見事という他はありません。

 フッキソウ

 植栽でしょうか、フッキソウが開花の準備を進めていました。開花といってもフッキソウには花弁はなく、写真で蕾のように見えているのは雄しべで、茶色に見えるのは葯です。寄り添った4本の雄しべが軽く開いた状態が開花。高さは20pほど。漢字では「富貴草」と書き、あたかも草本のようですが、これでもれっきとしたツゲ科の樹木です。

 満開

 日向のツバキはご覧の状態。これも植栽でしょう。つやのある葉が日光を照り返し、自ら発光しているように見えます。

 そろそろピーク

 もうじき3月。スギ花粉の飛散がピークを迎える頃です。公園の中にある杉林も重たそうに花粉をため込んでいるようです。ひと風吹けば一気に大量の花粉を放出するでしょう。谷地では春にはまだ間がある様子でしたが、丘の上では春はすぐそこ。サクラの木も全体が白っぽく見えます。
 
 さあ、これからさまざまな命が輝く季節になります。森で、水辺で、里山で、小さな驚きと感動を与えてくれる、そんなドラマに出会えるでしょう。花粉なんかに負けてはいられません。(来週もどっか行くぞー!)