石砂山 〜ギフチョウの舞う里山へ〜


 

【相模原市 緑区 平成27年4月12日(日)】
 
 「菜種梅雨」というのでしょうか、4月に入ってからぐずついた天気の日が続いています。気温も低めです。そんな中、今日は久しぶりに晴れの予報だったので迷わず山に行くことにしました。そろそろ新緑の季節ですし。場所は相模湖の南方に位置する石砂山(いしざれやま)(578m)です。この山は数少ないギフチョウの繁殖地として有名で、4月上旬の風のない晴れた日にはたくさんのギフチョウが乱舞するとのこと。つまり今日はまさにそれに当てはまる日なわけです。
 
                       
 
 午前8時半、ドリーム号で出発。橋本を経由して国道412号線を西進します。相模湖の手前で山の中に分け入り、離合困難な狭い道をくねくねと上っていくと、篠原というまるで隠れ里のような集落に出ました。ここが石砂山の北側の登山口になります(南側には道志みちからの登山道もあります。)。

 集落の小学校跡地(今は「篠原の里」というNPO法人の施設)の前にある駐車場にドリーム号を停めさせてもらいました。そこそこ広い駐車場でしたがほぼ満車状態でした。今日は統一地方選の投票日で、篠原の里が投票所になっているようでしたが、このたくさんの車は明らかに外部の人の車です。すでに多くの人がギフチョウを見に来ているようです。

 石砂山

 装備を整え、準備体操を済ませて、10時5分、スタートです。駐車場からはピラミッドのように均整のとれた石砂山の姿が望めました。


Kashmir 3D

 今日のルートは、駐車場から車道を南下し、途中から小径へ。民家が途切れたところに登山口があり、あとはまっすぐ頂上を目指すというものです。道に迷いようのないシンプルなルートです。帰りは来た道を戻ります。

 道祖神

 まずは車道を歩いていきます。道の脇に馬頭大士の石碑がありました。いわゆる馬頭明王です。本来は密教の仏だそうですが、その名から民間信仰として馬や家畜の守り神として崇められたとのことです。このような山里の路傍に祀られているのも、財産であり労働力でもある大切な家畜を守ってもらいたいという人々の切実な思いからなんでしょう。

 しばらく行くと小さな分岐が。ここは右手の小径に入っていきます。この時期、人家の庭先のようなところを大勢の人が行き来するのだと思いますが、地元の方の迷惑にならないように気をつけなければ。ゴミを持ち帰るのはもちろん、むやみに私有地に立ち入らないとか。ただガヤガヤするだけでも迷惑かもしれないし。yamanekoも山歩きをするときは極力地元の人に挨拶するようにしています。相手にとっては不審なよそ者だろうし、挨拶するだけでも安心してもらえるでしょう。また、会話の中で案外有用な情報を得ることができたりするんですよね。

 山里の春

 山里にも春が訪れています。どこかでウグイスの鳴き声も。まだたどたどしい感じです。

 ヒトリシズカ

 日陰の斜面に一群のヒトリシズカ。なんとも儚げな姿です。

 登山口

 生垣や畑のツツジなどの前にはあちこち人だかりができていました。みんな大きなカメラを構えていて、時折一斉にパシャパシャとシャッター音が。ギフチョウもちょっとした芸能人扱いです。
 民家や畑を横に見ながら歩いていくと左手に木橋が現れました。ここが石砂山の登山口です。

 登り始めはヒノキの林の中の急登。昨日の雨で若干滑りやすくなっています。登山道に入るとカメラマンはほとんど見かけなくなりました。

 シュンラン

 登山道脇にシュンランを見つけました。生き生きとしています。

 ヒノキの林はきれいに手入れされていて、林床にほどよく光が差し込んでいます。この状態を維持するのは大変な労力でしょうね。

 10時35分、林を抜けて尾根道に出ました。木立越しに石砂山のピークが望めます。

 落葉樹林の気持ちの良い山道。こんなところを歩けるなんて幸せなことです。

 ギフチョウ

 さっきから時折ヒラヒラと蝶が飛んでいましたが、たまたま足元の落ち葉の上に停まってくれました。ギフチョウです。みんなこの蝶を狙っていたんですね。しばらく観察のし放題、写真も撮り放題でした。でも、カメラマンたちはこんな写真ではなく、きっともっとフォトジェニックな一枚を欲しているのだと思います。

 まだまだ枯れ色の山中、ミツバツツジ(の仲間)の鮮やかな花に目を奪われたりします。急な斜面に咲いているので近づくことはできませんでした。

 明るい尾根道を歩きます。集落にはあんなにたくさんの人が集まっていたのに、登山道は静かなものです。

 ミヤマセセリ

 舞っているのはギフチョウだけではありません。これはミヤマセセリ。「わたしも見てよ」って目の前に停まってくれました。

 石砂山の山頂まであと3百mとの道標が現れました。なだらかな山道もこの辺りまでで、この先最後の急登が待っているはずです。

 ブナ

 ブナの若葉。明るい緑色で軟毛に覆われています。枝先で軽やかに風に踊っていました。数ある若葉の中でもブナの若葉には特別に爽やかな印象を受けます。

 急登

 かなりの斜度の急登です。こんな感じでの坂道が延々と続いていきました。階段は足腰にこたえるんですよね。

 そのうち傾斜がなだらかになってきました。山頂も近いのか。

 山頂

 11時15分、山頂に到着です。のんびり登っても1時間ちょっとで到着しました。山頂にはそこそこ人がいるようです。

 焼山

 正面(南方向)には丹沢山塊の主脈北端に位置する焼山(1060m)がドーンと望めました。それに連なる黍殻山(1273m)、袖平山(1432m)なども。さすがは丹沢の山々。貫禄があります。

 石老山

 一方、東に目を転じれば、木立越しに石老山(702m)が。石砂山のすぐお隣さんです。
 山頂ではあちこちからギフチョウが飛んで来て、その都度カメラを持った人達がピタッと固まるのが面白かったです。そしてチョウが停まったら一斉にフォーカスの集中砲火。yamanekoはちょっと遠慮して(というかもう撮ったので満足して)、昼食のおむすびを頬張りながらその様子を見物させてもらいました。

 ダンコウバイ

 昼食後は山頂周辺を散策。これはダンコウバイの若葉ですね。先割れスプーンみたいな特徴的な形をしています。

 復路

 しばらく休憩したのちに山頂を後にし、来た道を戻りました。急な登山道を下っていきます。膝を痛めないように注意です。

 奥多摩

 北側の展望です。最も高いのが東京都との境に立つ生藤山(990m)。神奈川県の最北地点です。あの山々との間には相模湖があり、甲州街道(国道20号線)、中央道、中央本線なども通っている地峡になっています。

 鉢岡山

 すぐ手前にはこんなこんもりとした小山もありました。鉢岡山(460m)という山で、スタート地点の駐車場からも見えていた山です。ネットを見ると登る人もそこそこいるようでした。

 ミツバツツジを再び。きれいな花です。

 カンアオイ

 スギ林まで降りてきました。これがカンアオイ。ギフチョウの幼虫の食草です。花は地面に這うように咲き、色合いも地味です。アリなどが訪れるのでしょう。

 !!

 もう集落が見える辺りまで降りてきました。そこで見たのは盗掘の跡。往きに写真を撮ったあのシュンランが株ごとゴッソリ盗られていました(手前の株は難を免れたようです。)。ご丁寧にきれいに埋め戻してあります。さすがに素手では掘れないでしょうから、あらかじめ道具を用意して入山しているのだと思います。たいした罪の意識もなくやっているとしたらなんとも悲しい人間ですね。意識した上でやっているのなら単なる犯罪者です。

 12時20分、登山口まで降りてきました。ギフチョウを待つ人達が手持ち無沙汰な様子です。

 ここからは民家の前を歩いていきます。耕作放棄地のようなところに咲いていたサクラ(距離があったので種類は分かりませんでした。)。輝くような美しさです。
 この辺りの道沿いにもたくさんの人が。さすがに畑の中に入り込む人はいませんでしたが、でも、例えば小さな墓地の中に何人もが座ってシャッターチャンスを待ちながら昼食をとっていたりするの見ると、地元の人はどう思っているんだろうと考えてしまいます。墓地って先祖が眠る場所ですよね。

 ちょっと暗い気分になっていたのをきれいなツバキが払拭してくれました。園芸種ですが、こんなに見事な花が咲くんですね。

 帰り道

 12時35分、駐車場に戻ってきました。整理体操をして帰途につきます。
 帰りは南側に下って道志みち経由で戻ることに。写真は途中の山道の様子。この辺りはまだまだサクラが見頃です。

 石砂山(南面)

 最後に青野原から見た石砂山を。南側からだときれいな双耳峰であることが分かります。紅葉の季節もいいかもしれません。