今熊山 〜新年早々実のある山歩き〜


 

【東京都 八王子市 平成26年1月2日(木)】
 
 年が明けて平成26年。平成の世もいよいよ第2四半世紀に入りました。早いものですね。yamanekoもここ数年ドックのたびに気になるところが見つかるそんな年頃なんですが、なんとか健康を維持して、今年もたくさん野山歩きをしたいと思っています。
 
 さて、そんな正月、元日は雑煮とお屠蘇とお節料理を味わったあとは家でずっとゴロゴロしていたので、早速二日目は気分転換と体をほぐす意味でも野山に出かけることにしました。場所は八王子市の北端にある今熊山(505m)。今熊神社という神社があるとのことなので、初詣を兼ねて登ります。
 
                       
 
 正月2日のホリデー快速は、予想に反してというかやっぱりというか、がら空きでした。10両編成のうち、前4両が秋川号で武蔵五日市行き、後6両が奥多摩号で奥多摩行き。途中、拝島駅で切り離してそれぞれの目的地に向かいます。この電車はいってみれば休日登山者のための編成なのです。yamanekoは前寄りの秋川号に乗車して終点の武蔵五日市駅に向かいました。

 今熊山

 拝島で切り離しが終わった後は更にがらがらになって1車両に2、3人しか乗客がいませんでした。これが都内を走る電車だとは。そして9時54分、秋川号は武蔵五日市駅に到着しました。駅前に出てみると南西の方角に今日の目的地、今熊山が見えました。周囲の山々と同化して、特別に存在感を放っている様子はありません。昔から生活に密着した里山といった風情です。


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 さて、ここからは京王バスで登山口に向かいます。今熊神社の参道は山を越えた八王子市の側にあり、今日は南側の正面から今熊山に登って、北側のあきる野市側に下り駅に戻ってくるルートをとります。

 「今熊山登山口」バス停

 10時29分発、京王八王子駅行きのバス乗車しました。秋川を渡って住宅地を走り、トンネルを抜けると今熊山登山口バス停に到着。時刻は10時35分です。

 熟し柿

 バス停で柔軟体操を済ませてから、おもむろにスタートです。
 民家の庭先にぼってりと熟した柿が。鳥のための残し柿にしてはちょっと数が多いようですが。地面に落下して破裂した跡もたくさん残っています。柿の実の収穫はお年寄りには辛い作業で、やむを得ず放置することも多くなっているのだとか(この家がそうなのかは分かりませんが。)。山間部では熊の餌とならないようにボランティアの「柿もぎ隊」が高齢者宅の柿を収穫したりしているそうです。

 

 トンネル出口に戻る形で歩き出すと左手に道が延びていて「今熊神社入口」と立派な石柱が建っていました。多くの信仰を集める神社のようです。登山道はここを直進です。

 ヘクソカズラ
 

 民家のフェンスにヘクソカズラの実がたわわに付いていました。美味そうに実っていますが鳥が食べているという話も聞いたことがありません。もちろん人様も。

 オオイヌノフグリ

 おおこれは早春の使者。オオイヌノフグリですね。まもなく寒の入りだというのに早々と姿を見せてくれました。気持ちがホッとします。

 凍結

 静かな道を歩いて行きます。道沿いに流れる小川は凍結していました。日陰はシンと冷えています。

 

 集落の小径をさかのぼること30分(普通の人なら15分)、今熊神社の遙拝殿が現れました。さっきからときおり自家用車の往来がありましたが、日常生活の通行というよりおそらくこの神社への参拝者だったのでしょう。

 遙拝殿

 今熊神社の本殿は今熊山の山頂にあります。昭和初期に山頂の神社が焼失し、後にこの地に遙拝殿が建てられたのだそうです。民家も途切れた谷あいの地にしては立派な建物で、このときも地元の人と思われる参拝者が数人訪れていました。

 

 今日は山頂の本殿にお参りするので、遙拝殿はスルー。右手の鳥居をくぐって階段の道を登っていきます。

 ジャノヒゲ

 参道はすぐに小石が転がる土の道になりました。足元にはジャノヒゲの蒼い実が。緑色の葉に隠れていても光沢のある実は目立っています。

 

 やがて植林地の伐採跡が現れました。この先、道はその中を延びているようです。

 ヒヨドリジョウゴ

 朱色の液果を付けているのはヒヨドリジョウゴ。これもを陽を受けて輝いていますね。

 

 振り返るとこれまで登って来た道が見下ろせました。参道の左右にだけヒノキの並木が残されていて回廊のようになっています。

 タチツボスミレ

 さっきのオオイヌノフグリにも驚きましたが、ここにタチツボスミレが咲いているとは。辺りを見渡してもこの一株のみです。自然界にはときどきこういったせっかちなヤツがいるんですよね。

 フユイチゴ

 これは食べられるフユイチゴ。撮影後に美味しくいただきました。

 

 遙拝殿から登ること40分、見晴らしの良い休憩スポットに出ました。眼下の市街地は武蔵五日市駅のあるあきる野市の中心部。写真では判然としませんが右手奥には埼玉ドームが見えていたので所沢辺りでしょう。方角としては北東です。

 

 ここからは尾根道になります。参道の左右の木に注連縄が渡してあって、これをくぐっていきます。

 

 右手を見上げるとピークらしきものが。あそこが今熊山の山頂でしょうか。

 

 日向を歩いている分には暖かいんですよね。アウターはたたんでリュックの中です。

 

 おっ、石垣が組んであります。山頂か? いやいや、ここも休憩場所のよう。広場のようになっていて、東京都が設置したトイレもありました。この辺りは都立の秋川丘陵自然公園になるのだそうです。

 筑波山

 休憩所からは関東平野を横切って遠く筑波山の姿も望めました。ここからは100q弱の距離です。そしてそこから左に視線を移すと、栃木の山々の向こうに雪を被った男体山までも(こちらは写真には写りませんでした。)。

 

 山頂はもうすぐそこです。さあ一休みしたら歩き始めましょう。

 クマシデ

 見上げるとクマシデの果穂が。もうだいぶん崩れていますね。

 

 参道の階段はかなり傷んでいる様子。下に遙拝殿ができてから山頂の本殿にお参りする人も少なくなったのでしょう。

 

 12時15分、山頂に到着しました。まずは今熊神社にお参りです。遙拝殿に比べてすいぶんとシンプルな造りです。賽銭箱もなかったので、申し訳なかったのですが頼み事だけお願いしておきました。

 山頂広場

 山頂は広々としていました。テーブルとベンチが設置されていて、桜の木も多いので、春には花見も良いかもしれません。さあ昼食にしましょう。

 昼食

 今日のお昼はコンビニで調達した冷凍の鍋焼きうどん。バーナーで加熱します。寒い時期にはこれに勝るものはないですね。ハフハフ言いながらいただきました。

 

 食後は山頂からの眺めを楽しみました。東の方角には新宿や渋谷の副都心が見えています。ここからは約45qの距離です。スカイツリーも見えていますね。
 今熊山には「呼ばわり伝説」があるそうです。呼ばわり伝説とは、探したい人がいるときにこの山に登っていなくなった人の名を大声で呼べばやがてどこからか戻ってくるという言い伝えです。今でも今熊神社では行方不明者の探索祈願が行われているそうです。その昔、ここから叫んだ人の目に映った風景はどんなものだったでしょうか。

 

 ひとしきり景色を楽しんだ後はおやつタイム。これもコンビニで買ったものです。最近のコンビニスイーツは侮れませんよね、美味しくて。

 

 山頂では1時間ほど休憩して、1時15分、下山開始です。今熊山の北側の谷に下りて行きます。これが結構な急傾斜で、小股でちょこちょこと用心深く下っていきます。

 

 途中から谷筋に入ると空気も湿り気を帯びていました。それにしても誰とも出会いません。静かな山歩きです。

 新多摩変電所

急な傾斜がおさまって森を抜けると、秘密の要塞、いやそんな感じの変電所が現れました。人影はなく時折ジジジッと放電っぽい音がするのみ。まるで隠れ里のようなところに巨大な変電所があるので、なんか違う世界に迷い込んだような錯覚を覚えました。

 

 変電所から再び山道に入りましたが、その先はアップダウンは緩やかで快適に歩けました。

 ヤブコウジ

 ヤブコウジは葉の下に隠すようにして実を付けます。この時期、当然のごとく花との出会いはほとんどないので、こういった実が心を和ませてくれます。

 ヤブラン

 この黒い実(正確には種子)はヤブランのもの。今日目にした実はみんな光沢がありますね。今回は丸くつややかな実にたくさん出会いました。

 ナンテン

 野生のナンテンですが、実はもちろん、葉も輝くような朱色をしていて、ひときわ目立っていました。普通は朱い実に緑の葉というのがよく見かけるパターンのような気もします。この木は崩れた山肌に生える痩せた株でしたが、本当に見事としか言いようがありませんでした。やはり心を打つような美は庭先ではなく野山で出会うものなのかもしれませんね。

 広徳寺

 2時35分、獣害防止用の電気柵を越えると高徳寺という古刹が現れました。どうやら麓に下りてきたようです。ずいぶん歩いたような気がしますが、1時間20分ほどで下りてきたことになります。ここからは坂道を下って小和田の集落を通って駅に向かいます。

 小和田地区

 秋川が削った低地に民家が点在しています。ここが小和田集落。奥の街並みは檜原街道沿いの家々です。檜原街道は秋川の先の河岸を上ったところに通っている道で、小和田集落との高低差は30mくらいもあります。

 秋川

 集落を抜けて秋川を渡ります。この川は多摩川最大の支流で、その源流は三頭山の三頭沢です(去年の11月に歩いた。)。川の水は冷たそうに澄んでいました。

 武蔵五日市駅

 3時5分、武蔵五日市駅に戻ってきました。さて帰りの電車はと検索してみると、直近の便は途中での乗り換えが多いようです。なので、何便かをやり過ごして3時55分発のホリデー快速で帰ることにしました。これだと中野までは乗り換えなしで、しかも始発のこの駅からは座れる可能性大なのです。

 

 電車の時間まで駅前の喫茶店、その名も「やまねこ亭」でお茶をすることに。yamanekoはチャイ、妻はミルクティーで疲れを癒しました。
 
 帰りの電車は無事に座れました。立川辺りから混んできましたが、それでも立っている人は数えるほど。やはり正月で人出も少ないのでしょう。中野での乗り換えの際にいったん改札を出て、ブロードウエイ近くのお好み焼き屋さんへ。ここで夕食を食べて帰宅しました。
 
 新年最初の野山歩き。楽しく、また、お参りもできて良かったです。今年一年良い年でありますように。