払沢の滝 〜今年も緑滴る季節に〜


 

【東京都 檜原村 平成20年5月18日(日)】
 
 5月、野山の緑が日に日に濃くなっていく季節。木々の多くはこの時期に花を開き、夏を迎える頃には果実を実らせ始めます。なので、梅雨の頃からめっきりと花の数が減ってしまうのです。野山歩きの魅力は花だけではありませんが、やっぱり花に出会うと楽しいものです。
 ということで、昨日も山に出かけたばかりですが、今日もちょっとの間だけ出かけることにしました。
 
                       
 
 向かったのは東京都(島嶼部を除いて)で唯一の「村」である檜原村。その村の東部にある「払沢(ほっさわ)の滝」です。
 首都高4号から中央道へ入り、八王子JCTから圏央道へ。あきる野ICで高速を下りて、あとは秋川沿いに山に分け入っていきます。東京といえどもこの辺りまで来ると、かなり自然も豊かになります。

 駐車場にドリーム号Uを駐めて、まずは辺りを散策。車道脇の壁面をシダやら苔やらがびっしりと覆っていて、しっとりとした雰囲気です。

 ジュウモンジシダ

 比較的分かりやすい姿をしているジュウモンジシダ。シダはどれもこれも同じに見えて、なかなか名前を覚えられません。(ていうか、敬遠しているから覚えられないのです。)

 ウワバミソウ  雄花

 渓流脇の斜面などに群生するウワバミソウ。山菜として食用にされます。これはクマさんにとってもごちそうなのだそうで、深山に分け入ってこの群落にごっそりと食べ跡があったりすると、おもわず辺りを見回してしまいます。

 コクサギ

 葉の付き方をよく見てみると…。おや、ちょっと変ですね。
 植物の葉の付き方は多くの場合「互生」といって左右交互についています。あと、互生に比べて数は少ないですが、同じところから左右に出ている「対生」、同じところから輪を描くように並んで出ている「輪生」というのが代表的です。
 このコクサギの葉は十字対生の変形で、右、右、左、左、右、右…と、二つずつ交互についています。これを「コクサギ型葉序」といい、かなりめずらしい付き方です(コクサギ自体はあちこちで見かけるので、特にめずらしい植物という訳ではありません。)。

 ホオノキ

 サラダボウルサイズのホオノキの花。「豪奢」の一言です。花の寿命は短く、開花後間もなく雌しべ(花の中央)を取り囲んでいた雄しべがぱらぱらと落ちてしまいます。(上の写真でも、落ちた雄しべがレンゲのような花被片に溜まっています。) ホオノキは花も葉も日本の樹木でナンバーワンの大きさだそうです。

 ガクウツギ  雄花

 全体の印象からコガクウツギだと思いましたが、図鑑にはコガクウツギは本州では伊豆半島以西に分布すると記されているので、ここではガクウツギとしておきます。
 白い花弁のようによく目立つ装飾花の萼片で昆虫を招きます。その中心に花があり雄しべも雌しべもありますが、果実を作る機能は退化しています。その代わり装飾花の周りに地味ながら両性花があり、こちらが受粉し、果実を実らせる役割を負っています。

 払沢の滝

 駐車場から歩くこと10分。yamanekoのような観察しながらゆっくりと歩いても、せいぜい20分で払沢の滝に到着します。払沢の滝は「日本の滝百選」にも選ばれている名瀑なのだとか。滝壺から見えているのは4段に分かれている全体像のうちの再下段のもの。その落差は26mで、全体では60mにもなるのだそうです。真冬には完全に凍結して氷のモニュメントを創り上げ、それを目当てに多くの写真家が訪れるそうです。

 ヒメレンゲ

 今回のページは全体に緑色ばっかりですね。
 流れの脇の岩場にヒメレンゲの黄色い花が。滑りやすい飛び石を伝って、花のもとまで行ってみると、星の輝きのような小さな花が一面に咲いていました。

 仕事に埋もれる日々、野山に出かけることで気持ちをリセットすることができています。ちょっと裏山に、という訳にはいきませんが、車や電車を使えばいろんなところへ行くことができます。さて来週はどこに行こうか、楽しみに考えながら一週間を乗り切りたいと思います。