日御碕 〜地球はやっぱり丸かった〜


 

【島根県出雲市 17年6月26日(日)】
 
 気がつけば6月も終盤。ということは今年ももうすぐ半分が経過してしまうということ。早っ。
 今年の前半を総括しようにもこれといったものもなく、この調子でただ漫然と後半になだれ込んでいってしまうのでしょう。(いいのか! それで。)
 
 まあ気張ってもしょうがないので、それはそれでよしとして、帰省したついでに日御碕(ひのみさき)に寄ってみました。日御碕は島根半島の西端に位置します。この前まで大社町(縁結びで有名な出雲大社がある)でしたが、今は出雲市と合併しています。 

 出雲大社まではのどかな田園風景の中を走りますが、その先は海に向かって切り立った断崖を縫うように延びる道路を走ることになります。一本道なので迷うことはありません。
 出雲大社から20分ほどで日御碕の駐車場に到着。ここで行き止まりです。駐車場の周りにはお土産屋さんが並んでいて、その店先をぶらぶら歩いていくとすぐに日御碕灯台です。

 日御碕灯台

 日御碕灯台の高さは地上43.65mで、なんと日本一! 海面からの高さは63.3mもあり、上に登ってみると足がすくむ感覚とともにその高さを実感できます。明るさは光度48万カンデラ!ってどのくらい明るいのか?(カンテラ48万個分じゃないですよね。) 明治36年に完成した石造りの白い灯台で、岸壁に立つその姿には長い歴史に裏打ちされた風格のようなものを感じます。きっと幾多の風雪に耐えてきたことでしょう。”お〜いら岬の〜、灯台守り〜は〜” 思わず「喜びも悲しみも幾年月」の一節を口ずさんでしまいます。(古いか。)
 ここはやっぱり登ってみなければ。
 この灯台の管理は第八管区海上保安本部境海上保安部が行っていますが、受付のおばちゃんはどう見ても地元の方の様子。もう一人のおばちゃんとともに世間話に花を咲かせていました。満開でした。

 水平線は水平じゃない

 急な傾斜の螺旋階段を、いったい何回転したのかも分からなくなるくらい回って、ようやく最上階に着いたときには息が荒くなっていました。そして、ドアから外に出てみると…
 高っっっ!まるで大空に浮いているかのような感じです。幸い風が強くなかったので良かったのですが、それでもじっと立っているだけでユラユラしているような錯覚に陥ります。でも眺めは最高! はるか眼下に遊歩道を歩く豆粒ほどの人たちが見えます。その先には2時間サスペンスのクライマックスにもってこいの断崖。そして島影ひとつない大海原。わずかに弧を描く水平線が地球が確かに丸いことを再発見させてくれました。(上の写真はワイドコンバータで撮影しているので丸みが強調されていますが、実際に目で見ても丸いように感じます。)
 でもまてよ。一目で見渡せる視野の角度が仮に約150度だとして、水平線までの距離が40qだとすると、弧の長さはざっくり計算して約100q。地球の円周は4万qだから、地球の円周の400分の1の長さを見ていることになります。ほんとにそれだけの長さで丸みを感じることができるのでしょうか。ひょっとしたら「地球は丸い」という先入観がもたらす錯覚だったりして。現に昔の人はガリレオが言うまで地球が丸いなんて感じていなかったのですから。

 ”海の安全は任せろ”

 灯台を下りて海沿いの遊歩道を歩いてみることにしました。
 海からの風が気持ちいい。日差しも強くなく絶好の散歩日和です。

 ハマボッス  さく果(空)

 松林の縁の岩肌にハマボッスが咲いていました。今がちょうど見頃です。脇には昨年作ったさく果が立ち並んでました。もちろん中は空っぽです。ハマボッスのボッスとは仏具の払子(ほっす)のことで、棒の先にフサフサとした毛がついた道具です。この花の姿が払子に似ているから名が付いたということですが、ホントに似てるかぁ?と先達の想像力には感心してしまいます。

 ママコノシリヌグイ

 どこででも見かけるママコノシリヌグイがかわいい花をつけていました。しかしこの名前もスゴイですね。「継子の尻拭い」ですよ。茎には下向きにびっしりとトゲが生えていて、いかに継子憎しといえどもこんなもので尻を拭われた日にはもう大変です。やりすぎだろ!と突っ込みたくなります。

 テリハノイバラ

 テリハノイバラはもっぱら地表を覆うように生え、あまり立ち上がることのない植物です。でも立派な木本。葉っぱがテカテカと照っているので「照り葉」です。この木は園芸用のバラの接ぎ木用の台木に利用されるのだそうです。ちょっと元気がないのは雨不足のせいでしょうか。

 モザイク

 日御碕一帯の断崖はみな五角形や六角形に割れたモザイクのような岩からできています。この辺りの岩は今から2〜3千万年以前に噴出した流紋岩でできているのだそうです。モザイクはその柱状節理の断面。もともと節理面で崩壊しやすいところにもってきて、日本海からの波浪をもろに受けるので、幾何学的な断崖を形作っているのだそうです。う〜ん、やはりここには船越栄一郎と片平なぎさがよく似合う。

 経島

 さっきからミャアミャアと騒がしい鳴き声が聞こえていましたが、ひとつ岬を回ってみるとすごい光景が待っていました。大小二つの岩の島全体にウミネコがビッシリと。ウミネコそのものとその糞とで島全体が白く見えます。
 この島は「経島(ふみしま)」といって、ウミネコの繁殖地として国の天然記念物に指定されている島です。意外ですがウミネコは渡り鳥。この経島には毎年12月頃に5000羽ほど飛来し(この狭い岩の上に5000羽!)、4〜5月に産卵して雛を孵すのだそうです。そして7月頃には北の海を目指して飛び立っていくのだそうです。

 超過密

 よく見ると島の最も高いところに祠のようなものが見えます。神様がウミネコたちを守っているのかもしれません。
 しかしなぜこの島なんだろうか。遠い北の海から飛んできたウミネコがあまたある島や岩の中からなぜこの島を目指すのか。このウミネコのこだわり、yamanekoにも気になります。


 

 イカ焼き

 駐車場まで戻ってきて、いい匂いにつられて土産物へ。昼食は出雲名物「割子そば」とイカ焼きです。このイカがまたプリプリとして…(以下、絶句) このとき一緒にビールが飲めなかったのが今でも心残りです。