東館山高山植物園 〜(スキーリゾートで百花繚乱後編)〜


 

 (後編)

【長野県 山ノ内町 令和4年7月16日(土)】
 
 志賀高原、東館山高山植物園での野山歩き。後編です。(前編はこちら
 



 長野県北部の志賀高原。その中心部にある東館山は長野オリンピックのアルペン競技会場にもなったスキーリゾートのメッカです。その東館山の山頂部に高山植物園があります。
 まず、ゴンドラの山頂駅から東側に谷を下り、下りきったところまでが前編でした。ここからは谷筋を南に進み、武衛門池まで行ったらまた山頂部に向かって登って行きます。ちょうど三角形を描くような道筋です。

 ゴゼンタチバナ

 やや林間といった環境のところでゴゼンタチバナに出会いました。和モダンなテイストでyamanekoの好きな花です。

 ミツガシワ

 午後1時、武衛門池にやって来ました。6畳間くらいの広さの池で、一面をミツガシワやミズバショウの葉に覆われていました。
 そのミツガシワは春から初夏にかけて咲く花なのですが、奇跡的に一輪だけ花が咲いていました。しかも最も綺麗な状態で。本来はたくさんの花で花穂を構成するのですが、一輪だけ残っているとは。yamanekoを待っていてくれたのか。左の写真ではもう実ができつつあるのが分かります。

 ズダヤクシュ

 これはズダヤクシュ。もう実ができていますね。

 ヤナギラン

 さて、また斜面を上っていきます。
 このヤナギランはさっき(前編)見た株より成長が進んでいるようです。

 イワイチョウ

 シュッとした立ち姿のイワイチョウ。花冠は純白で花弁の縁が波打っていて、清楚なブラウスのようなイメージです。

 ヤグルマソウ

 再び草原エリアにやって来ました。ヤグルマソウの花が咲いていました。2m近くにもなる大型の植物です。

 サンリンソウ

 これはサンリンソウ。白い花弁のようなものは萼片で、普通は5個付いていますが、写真のように5個より多いものもままあります。yamanekoは8個(うち1個は花冠の下の茎に付いていた)というものを見たことがあります。

 ウマノアシガタ

 ウマノアシガタ。低地の野山でも馴染みの植物です。風に揺れて涼しげでした。別名のキンポウゲの方が通りがよいかもしれません。

 ゴゼンタチバナ

 こちらはゴゼンタチバナの御一行。葉が4個の株と6個の株のものがあり、6個付いている株は秋に実を付けます。

 ツルコケモモ

 亜高山帯から高山帯に生えるツルコケモモ。高さ10センチほどの樹木で、特段ツル性ではないようです。茎が地を這うのでそれがツルに見えたのかも。

 キヌガサソウ

 おお、キヌガサソウです。花冠を取り囲む苞の大きさは座布団ほども。それが数個集まるとなかなかの迫力ですな。

 ハクサンチドリ


 ハクサンチドリ。この花を初めて見たのは大菩薩嶺だったか。出会うと嬉しくなるランです。

 サンカヨウ

 サンカヨウはもう実を付けていました。熟すともう少し紺色が濃くなります。この花を初めて見たのは中国山地の猿政山でした。

 クルマバツクバネソウ

 民芸品のような姿をしているのはクルマバツクバネソウ。ツクバネソウの基本構造は4の倍数でできています。この花を初めて見たのは…、どこだったっけ? 山梨県の黒岳だったか。

 エンレイソウ

 エンレイソウは漢字では「延齢草」。なんか縁起が良さそうな名前ですね。この花を…、もういいですね。(ちなみに中国山地の冠山でした。)

 マルバダケブキ

 深山のやや湿ったところに生えるマルバダケブキ。高さは1mを超える大型の植物です。葉も大きいです。

 シャジクソウ

 マメ科特有の蝶形花。シャジクソウです。放射状に出る小葉を車輪に、茎を車軸に例えてのネーミングとのこと。いろいろ考えるものですね。ちなみに新種の命名に際し学名にはルールがありますが、標準和名の命名には特にルールはないのだそうです。



 山頂近くまで上がってきました。ちょうどここがオリンピックのアルペン大回転のスタート地点だったところ。写真の奥に向かって飛び出していく形です。
 大きな谷を挟んで向こうに蓮池地区のホテル群が望めます。あそこから谷を回ってここまで来たのです。長いゲレンデが見えていますが、その部分はトンネルになっていました。
 ここからは今までいた谷とは反対側の南斜面を下りながら観察をしていきます。

 タテヤマウツボグサ

 タテヤマウツボグサ。ウツボグサの高山型です。これから花序が伸びるところかな。

 オヤマシモツケ

 これもシモツケの高山型。ただ、別の種ということではなく、一品種とされているようです。花序や葉がかなり小型なのが特徴だとか。

 イブキジャコウソウ

 イブキジャコウソウ。こんなに小さくても立派な樹木です。
 この花を初めて見たのは島根県の立久恵峡でした。yamanekoに自然観察の世界を教えてくれた仲間と一緒に岩場を登ったのを覚えています。

 クルマユリ

 葉が車輪状に輪生するからクルマユリ。平地では見かけないユリです。

 タカネナデシコ

 繊細な花、タカネナデシコ。カワラナデシコの高山型で、花弁が深く裂けるのが特徴とのこと。

 オオバナノヒメシャジン

 ヒメシャジンはもともと小型だから名前に「姫」が付くのですが、それでいて「大花」とはどういうこと? 確かに花冠は大きく、ソバナの花冠くらいのサイズがありました。

 トリアシショウマ

 トリアシショウマの花序はよく分枝し、ボリューム感があります。満開のこの姿、打ち上げ花火に見えなくもないか。

 モミジカラマツ

 繊細な雰囲気の花ですね。モミジカラマツです。糸状のものは雄しべなんですよね。

 ハクサンフウロ

 ハクサンフウロが咲いていました。右の花はほんのりピンク色、左の花はうっすら紫色。株ごとに個性があるようです。

 クガイソウ

 クガイソウはこれから開花というタイミング。花の時期には花穂が青紫色になります。



 眼下に見えているのはリフトの高天原山頂駅。ここから歩いて行けます。が、あれで下ると駐車場とは全然違うところに着いてしまいます。

 バイケイソウ

 やや湿った林内で出会うことの多いバイケイソウ。こんな草原のようなところに咲いているとは。なかなか気骨のある立ち姿をしていて、特に山梨県の櫛形山で出会ったときが印象的でした。

 グンナイフウロ

 グンナイフウロ。グンナイとは「郡内」と書き、これは山梨県の桂川流域の昔の呼び名。山梨県は甲府盆地を中心とした「国中」(くになか)と郡内とに分けられるのだそうで、今でも県民の中にライバル意識があったりするのだそうです(笑)(郡内出身の知人弁)。

 ヨツバヒヨドリ

 これはヨツバヒヨドリですね。開花はこれからで、花序はまだ小さいです。



 2時15分、ゴンドラの山頂駅に戻ってきました。

 西館山

 駅舎の展望テラスに上がってみました。正面に見えているのは西館山。左下にさっき見た高天原山頂駅が見えていますが、そこからリフトに乗ると西館山の麓に着きます。雲の切れ間、遙か下界に街並みが見えているのは中野市辺りになると思います。

 シラビソ

 展望テラスの目の前にシラビソがあり、枝に紫紺の球果がたくさん並んでいました。その姿はどこかユーモラスでもあります。
 さあ、さすがにお腹が空いてきたので、そろそろ下山しましょう。

 山麓駅

 2時40分、山麓駅まで下りてきました。今日は数々の花に出会えて、ゴンドラの中で静かに回想してもまぶたの裏が百花繚乱の状態でした。

 オヤマシモツケ

 山麓駅から駐車場までの間でも花々が。オヤマシモツケが「お疲れ様、待てきてね」と言ってくれているようでした。

 クロヅル

 これはニシキギ科のクロヅル。名前のとおりツル性の樹木です。「今日は楽しませてもらったよ」こちらからも挨拶しておきました。
 さあ、駐車場に移動です。なんと駐車場は山麓駅よりも30mくらい高いところにあるのです。

 駐車場

 駐車場は急斜面から突き出すようにデッキ状に作られています。ドリーム号Vが待っていてくれました。



 その駐車場から山麓駅を望む。ここに登ってくるだけで足がパンパンになりました(シャトルカートもあります。)。
 さて、ここから写真奥に見えている蓮池地区に向かい、そこで国道292号線に合流して麓の渋温泉に帰ります。
 
 今回は、植物園とはいえほとんど自然の中での花々を見ることができました。標高2000m前後の高山で、可憐に、そして逞しく咲く花々にいっぱい元気をもらいました。感謝、感謝です。(この後宿に帰って温泉にも元気をもらいました。)