鳩ノ巣渓谷 〜渓流歩きの後はサッパリと〜


 

【東京都 奥多摩町 平成27年8月16日(日)】
 
 いつのまにか世の中はお盆真っ只中のようで、テレビが各地の渋滞情報を頻繁に伝えています。この週末、涼しい山に行くにはこの渋滞と正面から向き合わなければならないので、どこか近場で涼しいところはないかいなと思案し、奥多摩の渓谷に行ってみることにしました。結果やっぱり暑かったです。
 
                       
 
 家を出たのはもう11時を回っていました。給油を済ませてから圏央道へ。高尾山ICから入って八王子JCTを越えて日の出ICで一般道へ。距離は短いですが、八王子市街の混雑を避けるにはこの区間高速に乗るのが良いでしょう。高速を下りてからは多摩川の右岸を上流に向けて走っていきます。

 駐車場

 JR青梅線の古里駅前で国道411号線へ。次の鳩ノ巣駅の前を通り過ぎてすぐのところにトンネルがあり、その入り口の手前を右に入り線路をくぐると無料駐車場があります。30台くらいは停められるでしょうか。時刻は1時くらいでしたがほぼ満車状態。なんとか空きスペースを見つけてドリーム号を駐車しました。
 準備を済ませ歩き始めたのは1時半。この時期、面倒くさくても日焼け止めを塗るのを忘れてはいけません。日焼けをすると思いのほか疲れるのです。


Kashmir 3D

 奥多摩にはいくつも渓谷がありますが、今回訪れたのは鳩ノ巣渓谷。渓谷に沿って延びるJR青梅線でいうと、鳩ノ巣駅から終点の奥多摩駅までの2駅分の区間を歩きます。
 江戸時代、この辺りには上流から一本流しで送られてくる木材の大規模な貯木場があり、その材木を筏に組む土場とともに飯場小屋が建てられたそうです。その飯場に祭った水神社の森に2羽の鳩が仲睦まじく巣を営んだ様子が、働く人々の心を和ませ、いつしか鳩ノ巣飯場と呼ばれるようになって、これが地名になったのだそうです。(奥多摩ビジターセンターのパンフより)

 鳩ノ巣トンネル

 歩き始めてすぐ、国道を横断し、トンネル入り口の左にある側道に入っていきます。

 すぐに左手に川に向かって下る道が現れました。結構な急坂。一気に標高差30mを下ります。

 下りきると吊り橋が現れ、ここを渡ります。たもとにあるのはその名も「ぽっぽ」という喫茶店です。

 鳩の巣小橋

 この吊り橋の名前は鳩の巣小橋。◯◯大橋というのはよく見かけますが、小橋とは。

 橋の上からの眺め。下流方向です。多摩川が削った深い渓谷です。

 こちらは上流方向。ちょっとした岩の河原で水遊びをしている人がいますね。

 橋を渡って川の右岸に延びる小道を進みます。

 タマアジサイ

 タマアジサイ。ピンポン球のような蕾がほころび、これから花序が展開するところです。ボタンヅルの花をアレンジしているところが洒落てますね。

 鳩の巣小橋

 振り返って吊り橋の方を見上げるとこんな感じ。

 ボタンヅル

 ボタンヅルは今がちょうど盛りの頃。

 シロヨメナ

 これはシロヨメナ。暑い中にも少しずつ次の季節が忍び込んできているようです。

 道は川岸の地形に応じて上ったり下ったり。

 盛夏とはいえ、水辺の近くは若干暑さが和らぐようです(涼しいとまではいかない。)。

 ヤブラン

 崖っぷちに咲くヤブラン。渓流をバックにいい感じです。

 急な階段で高度を上げます。石積みがしっかりしているところをみると、昔は重要な生活道路だったのかも。

 階段を上った先にはちょっとした広場があって東屋のある休憩スペースになっていました。 ここに飯場などの施設があったのかとも想像できる広さです。

 植林地ですね。植林が盛んだったのは戦後のことと聞いたことがありますが、こんな管理のしにくい場所にさえも…、いや、筏に組んで下流に運ぶことを考えるとむしろ都合の良い場所だったのかも。

 白丸ダム

 木立の間からなにやらいかつい構造物が現れました。白丸ダムです。1963年にできたダムで、重力式コンクリートダムという型式になるのだそうです。管理が東京都交通局というのはなんで? ここで貯めた水を下流にある発電所に送水して発電しているのだそう。都営地下鉄で使っているのでしょうか(いや売電ですよね。)。ちなみに上流にある有名な小河内ダムは東京都水道局の管理だそうです。

 ここから先は平成23年3月の大地震で発生した斜面崩落により通行止になっているので、ダム本体の最上部を通って対岸に渡ります。

 魚道

 途中、下流方向を眺めてみると、なにやら緩い階段のようなものがありました。解説によるとこれは魚道とのこと。ダムによって魚の遡上が妨げられることから、魚が上流側に通り抜けられるように作られた専用通路です。ダムができてから38年後の2001年に国土交通省が作ったものだそうですが、なんで今更? と感じるとともに、いったいどの程度魚が遡上しているのだろうという疑問が湧いてくるのを禁じ得ません。

 ダムを渡りきって対岸の丘に登るとなにやら建物が。これは魚道の見学施設だそうです。中に入ると受付っぽいブースがあり、中におばちゃんが2人いましたが、特段何をすることもなく、世間話に興じていました(単なる留守番役?)。魚道の建設により少なくとも地域の雇用には貢献できているようです。それともボランティアかな。



 魚道を見学するためにはこの螺旋階段を下りていかなければなりません。数えてみたら140段。結構深いです。結局貯水面の高さまで下りなければならないわけです。

 魚道

 最深部まで下りてみるとなんてことはありませんでした。下流側から昇ってきた魚道がダム本体を貫いて上流側につながっているだけ。もちろん無人です。写真は上流側を見ていて、出口の先は貯水面になるわけです。
 この施設、必要か?とも思いましたが、、もともと魚道が作られたのは多摩川が「魚がのぼりやすい川づくり」のモデル河川に指定されたことが発端とのこと。こういう社会貢献的なものも組み込まないと選定されにくいのかも。指定後、国交省が10年近い時間と30数億円を投じて魚道を作り、東京都に引き継いだそうですが、ランニングコストまでは面倒をみてくれなかったとみえます。もっと活用すればいいのに。ちなみにどのくらいの魚が遡上しているかはよく分かりませんでした。

 さて、ここからは車道(国道411号)を歩きます。車がすぐ脇を通っていくのでちょっと危ないです。

 JR青梅線

 この廃墟のように見える構造物はJR青梅線の鉄橋とトンネル。頼りなげな梯子は保守用でしょうか。

 馬頭観音

 路傍に馬頭観音が。通行人の安全を祈ったものでしょうね。

 数馬峡橋

 白丸駅(鳩ノ巣駅の次の駅)を過ぎたところにある数馬峡橋を渡って再び右岸側に行きます。

 橋の中央部から下流方向を見た景色。左が下流側、右が上流側です。この険しさを見ると、昔は川船が有効な交通手段だったんだろうなと思います。

 橋を渡るとちょっと小洒落た建物がありました。アースガーデンというカフェとのことです。

 白丸ダムからの通行止区間を避けた形で再び多摩川の右岸を歩いていきます。

 イワタバコ

 岩の壁を伝う水の雫。なんかありそうだなと思っていると、ありました。イワタバコの花です。 紫色の花がなんとも涼しそうです。実際、湿った環境の場所に咲くので、体感温度も低めなんだと思います。

 マツカゼソウ

 マツカゼソウがすっくと立っていました。なかなか均整のとれた姿をしています。花冠は8mmほどで、これでもミカンの仲間。でも実はミカンのようにはなりません。

 一面にイワタバコが生えている壁。いい雰囲気です。

 イワタバコ

 イワタバコの名は葉がタバコの葉に似ているところから付けられたとのこと。実際のタバコの葉はもっと巨大ですが。ずっと眺めていてもいいくらい、綺麗な花です。

 数馬西トンネル

 やがて小さなトンネルが現れました。中は涼しい、かと思いましたが、そんなでもありませんでした。

 立派なガードレールが現れ、道も整備されたものになってきました。集落が近いのか。

 海沢集落

 やはりしばらく行くと集落が現れました。海沢という集落のようです。海沢川という支流が多摩川に合流する場所に当たります。正面の白い建物は東京電力の氷川発電所とのこと。あの発電所の上には調整池があり、上流の奥多摩湖から山の中を貫通させたパイプで引いた水をいったんそこに貯めて、そこから一気に落として発電をしているようです。

 海沢大橋

 いったん海沢川の川筋まで下ってから対岸の道に上がりました。するとこの風景。奥に見える海沢大橋を渡って再び国道411号を歩きます。

 新氷川トンネル

 しばらく歩くとトンネルが見えてきました。新氷川トンネルです。ここは左側の旧道へ。その先に「もえぎの湯」という入浴施設があるはずで、これを楽しみにここまで歩いてきました。もう汗びっしょりです。

 もえぎの湯

 3時45分、もえぎの湯に到着しました。すると、建物の周囲にたくさんの人が所在無げに滞留しているではないですか。どうやらたくさん人が来すぎて入場規制をしているよう。ざっと100人近くはいるようです。係の人に話を聞いてみると、お盆のときとか年に数回ある大混雑の日なのだそうです。しょうがないのでyamanekoたちも整理券をもらって待つことにしました。
 で、待つこと40分、番号が呼ばれてようやく中に入ることができました。待っている間から蒸し暑かったのですが、入った途端に降り出したようで、露天風呂(ちゃんと屋根はある)でバケツをひっくり返したような雨を見ながらゆっくりと湯に浸かりました。入場規制のおかげで混雑することもありませんでした。
 入浴後、外に出てみるとさっきまでの雨が嘘にように上がっていて、気温も少し下がっているよう。さてここから奥多摩駅まで歩きます。距離にして800mくらいです。

 奥多摩駅

 奥多摩駅に到着すると、次の電車は5時40分発の青梅行き。しばらくホームで休憩です。一便前に出発する全席指定のお座敷列車が停車していましたが、これは立川から南武線に入って川崎駅まで行くのだとか。ちょっと変わった運行ルートです。
 yamaneko達は青梅行きに乗って2駅先の鳩ノ巣駅で下車。駐車場で待っているドリーム号に乗り換えて帰途につきました。帰りの道は渋滞はなく、7時半頃には家に帰り着きました。なかなか楽しい渓流歩きでした。