長谷寺 〜ぶらり江ノ電と花の寺〜


 

【神奈川県 鎌倉市 平成18年5月6日(土)】
 
 ゴールデンウィークもあとわずか。それにしても今年の連休はずっと良い天気でした。
 今日はぶらぶらと散歩がてら湘南の方へ出かけてみようと思います。
 
                       
 
 新宿から湘南新宿ラインで一気に藤沢へ。所要時間は50分ちょっとです。藤沢駅からは江ノ電(江ノ島電鉄)に乗り換えて「ぶらり途中下車の旅」をしながら鎌倉に向かい、あとはまた逗子発の湘南新宿ラインで帰ってこようという計画です。
 近場といえ名の通った老舗の観光地。人出が多いのは覚悟していかなければなりません。

 江ノ電鵠沼(くげぬま)駅

 藤沢駅で江ノ電に乗り換える時点でホームには人だかり。3両編成の電車はほぼ満員状態で発車です。
  「石上」、「柳小路」と通過して、3つめの「鵠沼(くげぬま)」で下りてみることにしました。特に目的はありません。乗客のほとんどは江ノ島駅か又は鎌倉駅を目指しているものと思われます。それ以外の駅で乗り降りする人は沿線で生活している人なのでしょう。あんなに人が乗っていたのに鵠沼駅で降りたのは自分たち(妻)を含めて4人だけでした。
 ここからは次の湘南海岸公園駅まで歩いてみることにしました。

 魚屋の裏手

 駅の周囲は普通の住宅地。小さな魚屋の裏路地にはアジが干物になるべく日光浴をしていました。ここの親父さんがまた気のいい人で、路地に迷い込まないよう次の駅までの道を教えてくれました。

 片瀬川

 静かな住宅街をしばらく歩いていくと川土手に出ました。片瀬川です。川の両岸にはプレジャーボートが一列に整列して繋留されていました。さすがは湘南。マリンレジャーのメッカです。
 ちょうど緑色の鉄橋を江ノ電が渡っていくところが見えました。自分たちはあの鉄橋の下をくぐって川沿いに南下します。川面にはカヌーを楽しむ親子。まっすぐ海まで下るのでしょうか。ここから海まではおよそ3qくらいです。

 オダマキ

 民家の庭先にオダマキが咲いていました。野生のヤマオダマキとは近縁でしょうが、こちらは園芸種です。
 調べてみると、オダマキは漢字では「苧環(お-たまき)」と書き、もともとは麻糸を中空に巻いた管のことで、距の立った花の形がこれに似ることから名がついたといいます。そもそも「苧」とはイラクサ科のカラムシのこと。昔はこの茎を蒸して繊維をとって丈夫で上質な織物を作っていたとのことです。
 
 しばらく川沿いに歩いてから橋を渡ります。すると、ウエットスーツ姿で片手にサーフボードを抱えた若者が自転車に乗って追い越していきました。一般的には非日常のシーンですが、ここでは普通に風景にとけ込んでいるから不思議です。

 ランチ

 どこからか踏切の音が聞こえてきます。江ノ電の線路が近いようです。時間がゆっくりと流れていくようで、体がすーっと軽くなるようでした。
 ちょうどお昼になったので住宅街の一角にある小さなイタリアンレストランに入りました。ゆっくりと昼食をとって、またぶらぶらと歩き始めます。

 湘南海岸公園駅

 レストランを出るとすぐに湘南海岸公園駅がありました。ここからまた電車に乗ることに。やっぱり満員でした。ここから「江ノ島」、「腰越」と進み、3つめの「鎌倉高校前」で下りることにしました。江ノ島駅を過ぎるとしばらく線路は商店街の中を通り路面電車のようになります。このあたりではスピードもゆっくりです。

 七里ヶ浜

 鎌倉高校前駅を下りると目の前には相模湾。道路の向こう側は七里ヶ浜です。今日は風が強く白波が立っていて条件が良いのでしょうか、多くのサーファーが海に入っていました。右の写真の奥に見える島影は江ノ島です。
 
 海沿いの道をゆっくり歩いて次の七里ヶ浜駅から三たび電車に乗りました。でも、なんか乗るたびに電車の混雑度が増すような気がするのですが…。
 「稲村ヶ崎」、「極楽寺」と進んで3つめの長谷駅で下車。ここから「あじさい寺」として有名な長谷寺に向かいます。もちろんこの時期はまだアジサイは咲いていません。

 長谷寺

 パンフレットによると、長谷寺は天平8年(736年)の開創で、鎌倉でも有数の古刹だそうです。山門を入ると庭園があり、そこから鈎型に折れながら階段が続いていて一段上の本堂に至ります。山の斜面の広い敷地に作られていて、寺でありながら要塞のようにも感じました。

 オモダカ  バイカイカリソウ

 オモダカは武家の家紋として愛された花。葉が鏃型であるがゆえです。武家政治の舞台となった鎌倉によく似合う花かもしれません。
 バイカイカリソウの写真を撮るときはいつもローアングルです。

 ジュウニヒトエ  エビネ

 ここのジュウニヒトエは少し紫の色加減が強いようです。ちなみに後ろの丸い葉はユキノシタのものですから。念のため。
 エビネの方は黄色型。バックに本来の色のものがちらっと写っています。ここまでは山門をくぐったところにある庭です。

 コバノタツナミ  ミヤコワスレ

 本堂のある上の段に続く階段脇です。
 白花のコバノタツナミ。輝くような白。この純白さ加減は洗濯洗剤のCMで庭一面に干されている洗濯物の色です。
 ミヤマヨメナから育成された園芸種、ミヤコワスレ。曰くありげな名前なので調べてみると、その昔、承久の乱で佐渡に流された順徳天皇がこの花を見るとその間だけは都を忘れられる、と宣うたことによるとのこと。承久の乱といえば1222年。その頃すでに園芸種として育てられていたということか、しかも佐渡で。???

 キバナホウチャクソウ  シラユキゲシ

 キバナホウチャクソウは中国原産。日本には観賞用として入ってきたもののようです。
 右の写真、花の名前がわからなくてかなり悩みました。4弁で多数の雄しべが放射状に付いている姿がクサノオウに似ていることからケシ科の花ではと思っていましたが、どうやらこれも中国原産の花のようで、「白雪芥子」だそうです。フキのような葉も特徴があります。

 アジサイ園から

 本堂の段まで上がってくると境内は人、人、人…。なので本堂の背後の斜面にあるアジサイ園に上がってみることにしました。あとひと月もするとこっちが人であふれるのでしょうが。
 アジサイ園から門前に開けた街並みを見下ろしてみました。向こうの山の麓には大仏様が座っているはずです。

 シャガ  エビネ

 少し薄暗いところで見かけることが多いシャガです。よく見ると華麗な花なのですが、なんとなく陰気なイメージを抱いてしまいます。
 寄せ植え状態のエビネ。エビネの塊根は古いものの横に新しいものが付いて、どんどん横につながっていくと聞いたことがありますが、それで横一列に並んでいるのでしょうか。(いや違うでしょう。)
 ここまで「超」が付くほどスローペースで来たので結構時間が過ぎてしまいました。さて、そろそろ少しずつ下りていきましょう。

 ホウチャクソウ  シャクヤク

 こちらは在来のホウチャクソウです。シャクヤクも中国原産。日本に在来のものはヤマシャクヤクとベニバナヤマシャクヤクだとか。どうもこのお寺には中国原産の植物が少なくないようです。

 シャクナゲ

 園芸品種としてあまりにも多彩なシャクナゲ。でもやっぱり白いものがすっきりしていて親しみがもてますね。
 
 さてさて、花であふれていた長谷寺でした。まだまだ紹介できていない花もありますが、このへんでまた江ノ電に戻ることにしましょう。
 と、駅に向かったのですが、同じような人が駅に向かって大量に流れていたので、急遽道を折れて鎌倉に向かって歩くことにしました。「由比ヶ浜」、「和田塚」、「鎌倉」と3駅分です。ちょっと距離があるかなとも思いましたが、商店街をひやかしながら歩いていたら割と早く鎌倉駅に着いてしまいました。

 パワー補給

 パンパンに張ったふくらはぎを休めようということで、駅近くのティールームへ。ここで小一時間ボケーっとしてから電車に乗りました。帰りの湘南新宿ラインは幸運にも座れたのでラッキーでした。
 
 今日は思いがけずに花三昧の一日になりました。連休を楽しい思い出でしめくくることができて大満足です。