多摩丘陵でフットパス 〜大蔵から金井〜


 

 「大蔵から金井」

【東京都 町田市 令和2年12月6日(日)】
 
 いつの間にか巷は師走になっていました。いろんなことがありすぎたこの一年。最後は身近なところでと思い、多摩丘陵をのんびりと歩くことにしました。
 場所は、町田市の大蔵地区北端から金井地区南端まで。鶴見川とその支流が削った多摩丘陵のアップダウンを散策します。今回は既設のコースではなく、自分でコースを考えました。
 
                       

 Kashmir3D

 多摩センターのバスターミナルから神奈中バスの鶴川駅行きに乗車。休日のこの時間は1時間に1本程度の路線です。

 井の花バス停

 9時50分に多摩センターを出発したバスは、尾根幹を越え小野路を経由して、20分ちょっとでスタート地点となる井の花バス停に到着しました。写真にはたまたま車が一台も写っていませんが、普段はひっきりなしに車が走っていて、道を横断するのも気を遣うほどのところです。



 歩き出しは10時15分。少し戻る形で車道を歩き、そこから小さな住宅地の中を通って小野路川の川縁に出ました。この川は鶴見川の支流で、約500m先で本流と合流します。そこまで川に沿って遊歩道が整備されています。

 ハゼノキ

 河原はいろんな植物の種子が着地したり流れ着いたりするので、見られるものも多様です。
 これはハゼノキ。紅葉がきれいな樹木ですが、人によっては皮膚がかぶれてしまうという、少しやっかいなやつです。

 クズ

 秋の七草のうちの一つ、クズです。マメ科の植物なので、実はエンドウ豆のような鞘状をしています。クズはいったんはびこるとなかなか根絶できないですが、この写真も繁殖力旺盛な感じが出ていますね。

 ネズミモチ

 ネズミモチ。河原で見るような樹木ではないのですが。これが水際に生えているということは、例えば、鳥が食べた実が糞と共にこの場に落ちたとかでしょうか。水辺は鳥が集まるし。

 イタドリ

 いろんなものがありますね。これはイタドリの果実。イタドリは草本ですが、大きくなると茎は幹のように太く固くなり、低木と遜色ない大きさに育ったりします。

 エビヅル

 ブドウ科のエビヅルです。鮮やかすぎない紅葉は和の風情があっていいですな。葉はヤマブドウに似た形をしていますが、二回りくらい小型です。

 屋敷林

 ぽつんと小島のように残っている屋敷林。ここを住み処にしている生き物もいるでしょうね。

 ホトケノザ

 ホトケノザです。それぞれの花の上に朝露が乗っているのが可愛いです。



 川沿いに200mほど歩きました。振り返ると長閑な里山風景。この辺り、ほんの2、30年くらい前までは「ザ・農村」だったでしょうね。

 芝溝街道

 スタートから30分ほど歩いて芝溝街道(都道57号線)に出ました。ここを横断して行きます。

 鶴見川

 鶴見川を渡ります。鶴見川は、町田市小山田の谷戸群に端を発し横浜市鶴見区で東京湾に注ぐ、全長約42kmの一級河川。流域内人口密度は日本一だそうですが、この辺りの様子からはちょっと想像がつきません。



 水際にムラサキシキブ。こういう取り合わせにはあまりお目にかかりません。



 元は細かく蛇行していた川筋がこの辺りでは直線的な流路に改修されています。写真の草地の斜面は扇形をしていて、こんなところが両岸に交互に出てくるのは、きっと元の蛇行の跡なんでしょう。

 薬師台通り

 川べりを歩いて大蔵橋のたもとに出たら左折して、薬師台通りの坂道を上って行きます。今日のゴールはこの道を2kmちょっと行ったところにありますが、実際に歩くルートは川の蛇行のごとくくねくねと、迂回したり丘を越えたりしながらその倍以上歩いて行きます。

 春日神社

 丘の中程まで来たところで左手の住宅地に入っていくと、その先に神社がありました。春日神社だそうで、参道に並ぶイチョウの巨木が由緒を感じさせます。いずれも10mくらいのところでスパッと切られていてちょっとギョッとしましたが、それはそれで威容を誇っていました。きっと近隣の落ち葉対策でしょうね。



 とはいえ今イチョウの黄葉がまさに盛りで、大量の黄色の葉を付けていました。
 この神社は、江戸時代中期に奈良の春日大社から分神されて創建されたのだそうです。明治後期には近隣の7社をこの春日神社に統合したのだとか。現在の社殿は昭和9年に建てられたものだそうです。以上、解説板から。

 落葉

 境内を覆うイチョウの落ち葉。綺麗ですが近くに住んでいる人にとってはそうも言っていられないものかも。何かに活用できないですかね。

 鶴見川

 再び鶴見川沿いに戻り、鶴川方向に歩いて行きました。歩道には散歩やジョギングをしている人がパラパラと。



 鶴川団地方面の風景。長閑です。ざっくり遠くの尾根までの間がこの鶴見川が削った低地。尾根の向こう側は片平川(鶴見川の支流)が削った谷戸ということになります。

 アオゲラ

 右手の森の中からコツコツと木を叩く音が聞こえてきました。よく見るとアオゲラが一心不乱に木をつつき餌を探しています。アオゲラはキツツキの仲間ではやや大型で、黄緑色のジャケットに赤い帽子がお洒落。見つけると気分が上がります。

 チャノキ

 鶴見川の川筋を離れて南側の丘の斜面を上ります。これはチャノキの花。思いがけず清楚な花に出会いました。

 オナガ

 畑の柿の木にオナガが。その名のとおり尾羽が20〜30cmとかなり長いです(体自体はムクドリ程度)。羽の色も薄青色で綺麗なのですが、いかんせん鳴き声がギャー…。群れていることが多く、なかなか目を引きます。ただ、分布は東日本に限定していて、yamanekoは関東に引っ越してきて初めて見ることができました。



 おお、昭和の農村風景。令和の今にも健在のようでした。ここだけ切り取ってみると、yamanekoの子どもの頃とたいして変わりません。



 丘を上り振り返った北側の風景。右手遠くに国士舘大学の学舎が見えます。正面奥の高地は真光寺辺りですね。こうやって見るとほとんど平坦地に見えますが、実際に歩いてみるとなかなかどうして。



 これは民家の庭先にあった見事なモミジです。仰ぎ見るようにして写真を撮りました。

 つるべ坂

 丘を上りきると、今度は反対側に下って行きます。この細道は「つるべ坂」というそう。確かにつるべも転げ落ちそうな急坂でした。



 坂を下ると農地はこんな感じに。さっきとは違い住宅地とのせめぎ合いが見られます。

 薬師金井通り

 薬師金井通りに出て振り返ると、さっき越えてきた丘が見渡せました。この辺りは鶴見川の支流、金井川が削った低地になります。



 薬師金井通りの反対側に広がる宅地に入り、また坂を上っていきます。この辺りは元々の丘陵地を川が細かく削って谷戸を延ばして行った地形なので、およそ広い平地というものがありません。

 

 緑地があったので入ってみます。

 金井5号緑地

 明るい樹林の公園でした。名前は「金井5号緑地」だそう。なんとも無機質な名前ですね。地元の人とかはどう思っているのでしょうか。



 なかなかいい感じじゃないですか。近所にこんな緑地があると嬉しいですね。



 緑地に付随してこんな広場も。小さな子ども連れの家族も満足できそうです。



 緑地を抜けて、再び民家の間の路地を歩いて行きます。カクカクッと不規則に曲がっていて、こういう道を歩くのは楽しいものです。もちろん近隣に迷惑のかからないよう静かに、です。

 榛名坂

 再び薬師金井通りに戻ってきました。今度はこの坂(榛名坂)を上って行きます。

 センニンソウ

 今日はぽかぽかの小春日和。上り坂では軽く汗ばむくらいです。
 民家の生け垣に繁っていたセンニンソウ。これは果実です。羽毛のようなものを仙人の髭に例えてセンニンソウという名が付けられたそうです。



 坂を上るとローソンが。時刻は12時30分。ここで昼食を調達することにしました。
 坂の上に吊り橋が見えていますが、その両側は緑地になっていて、買い物が終わったらまず右側の緑地に入り、次に橋を通って左側の緑地に向かいます。

 榛名坂交差点

 ローソン近くの榛名坂交差点(一つ前の写真を撮った辺り)。さっき写真右手から坂を上ってきて、この交差点を写真左側の道に入っていきます。

 金井関山長島緑地

 その緑地に入っていきまます。「金井関山長島緑地」なんかいろんな地名を並べた名称になっていますが、地域の皆さんのいろんな思いを調整しきれなかったのかもしれませんね。もっと明快な名前にはできれば良いと思うのですが。



 緑地の中はこんな感じ。いくつか彫刻などが配置されていましたが、あまり憩いの場的な雰囲気はありませんでした。常緑樹が多く、鬱蒼とした感じがあったからかもしれません。



 そして吊り橋を渡ります。

 榛名坂

 吊り橋の真ん中で立ち止まり、東側、歩いてきた方角を見てみます。右手前にローソンの屋根。向こうに榛名坂交差点が見えました。その奥から坂を上ってきたことになります。

 薬師台

 反対の西側の風景。こっちは薬師台の街並みです。すごい整然としていますね。酔って夜中に帰ってきたら自宅を間違えそうです。



 通りの奥に見えた紅葉。あの色や樹形からすると、左からイチョウ、コナラ、メタセコイヤですかね。どうやら「とんがり帽子公園」という場所の樹木のようです。



 橋脚に絡まるツタ。真っ赤に紅葉していました。

 サクラ

 時刻は12時45分。歩き始めて2時間半が経過しました。橋を渡りきったところにあったベンチに腰掛け、昼食としました。コンビニで購入したハンバーガーです。
 食後、足下の落ち葉を見ながら今年の野山歩きを振り返りました。コロナ禍でいろいろ気を遣いましたが、なんとなく野山でのスタンダードが分かってきた気がします。

 金井3号緑地

 休憩後、体が固まらないうちに動き始めることにしました。橋を渡った先にある緑地は金井3号緑地といいます。ここを歩いて行きます。



 緑地の中を歩いて南下していきます。そして丘のピークで住宅地に出ました。

 ナンキンハゼ

 南向き斜面にある何段かのひな壇の中に大塚公園という公園があり、そこに白い実をたくさん付けたナンキンハゼがありました。遠目にはまるで白い花が咲いているみたいでした。



 住宅地の南斜面を下って行き、下りきるとそこは今日3回目の金井川筋です。
 今日のゴールは正面の丘を上ってその反対側に下ったところ辺り、木倉川(これも鶴見川の支流)が削った低地になります。それにしても見渡す限り住宅地。丘ごと住宅地に飲み込まれている感じですね。



 下りきったら西側の薬師台通りに向かいます。

 スケッチブック

 何回目かの丘上りです。途中、住宅地の中にある「スケッチブック」という喫茶店で休憩することにしました。チーズケーキが美味かったです。

 金井遊歩公園

 丘のピーク一帯を占める金井遊歩公園。ここが今日最後の緑地です。いつの間にか日差しが弱くなってきていますね。冬の陽は暮れるのが早いです。



 東側の風景。遠くに稜線状につながっている高地があり、その上に和光大学の学舎が見えていますね。その向こうは神奈川県です。



 こっちは北側。歩いてきた方角です。正面の丘はさっき昼食をとった緑地です。スタートした大蔵地区はその向こう側です。



 この最後の緑地で思いがけないご褒美が待っていました。もう遅いかと思っていたモミジの紅葉です。



 写真では若干茶色っぽく見えていますが、肉眼では深紅でした。



 赤、黄、緑の三色。バックの青も入れると四色ですね。



 公園を抜けて坂を下りきると金井1丁目交差点。もうゴールもすぐそこです。

 調整池

 交差点の横には調整池があり、そこにコサギが来ていました。写真には見切れていますが、アオサギやバンもいて、ここは鳥たちのオアシス的な場所になっているようでした。餌となる小魚がいるんでしょうね。
 調整池とは、宅地開発などで雨水が地中にしみこまなくなり、地表を流れ一気に洪水などにならないよう、そういった水を一時的にためておくことができる人工の池です。なので深い割には普段は水位が低い(あるいは空の)コンクリート空間になっています。



 そして今日のゴール、金井小学校前バス停に到着しました。時刻は13時55分。ずいぶん歩いた気がしますが3時間半ちょっとでした。けがもなく良かったです。
 ここからはバスで町田駅に向かい、そこからJR横浜線経由で帰宅します。
 
 コロナでゴタゴタしたこの一年。それでもあちこち野山歩きを楽しむことができました。日々流れてくるニュースを見てもいつもの日常が戻ってくるのはまだ遠そうです。決して慢心することなく、そして窮屈になりすぎず、新しい年も野山に楽しませてもらおうと思います。