多摩丘陵でフットパス 〜忠生から図師〜


 

 「忠生から図師」

【東京都 町田市 平成29年11月12日(日)】
 
 ずいぶん秋が深まってきました。今日は久しぶりに多摩丘陵のフットパスを歩こうと思います。秋晴れの下、どんな風景に出会えるでしょうか。


Kashmir 3D

 17回目の今回は、町田市の中部、忠生から図師にかけて歩きます。鶴見川が削った谷戸の縁を下ったり上ったりしながら辿ります。

 木曽バス停

 いつものとおり神奈中バスに乗って町田街道を南下。11時20分に木曽バス停で下車しました。ところで、町田街道って国道16号線に平行して交通量も多いのですが、片側1車線なので渋滞が頻繁に発生します。困ったものです。

 伝重寺

 さあスタートです。
 バス停からすぐのところにある大きなお寺、伝重寺。白壁の塀がよく目立ちます。慶長年間、1596年の創建だそうです。

 伝重寺の角を左(北側)に折れて、静かな住宅地に入っていきます。土地が平坦な上に高い建物がないので、空が広いです。

 モチノキ

 民家の庭にモチノキが。高さは5、6mくらいもありました。朱色の実をたくさん付けています。樹皮から鳥もちを作ったことで知られ…今はほとんど鳥もちなんて知らないか。

 こんな時期にも満開のアサガオが。そういう品種なんでしょうね。

 住宅地の路地を歩いて行くと正面に森が見えてきました。あそこは忠生公園です。この辺りは相模野台地(相模川の河岸段丘)で真っ平らな地形ですが、あの森の向こうからは多摩丘陵となり、谷戸が複雑に切れ込んだ地形が広がっています。ものすごく大袈裟に言えばグランドキャニオンみたいな感じです。

 相模野台地

 忠生公園の縁に沿って南側の公園入口に回り込みます。
 長閑な風景ですね。相模川の河岸段丘は4段ないし5段になっていて、ここは最上位面に当たります。武蔵野台地と同様に富士山や箱根山の火山噴出物が堆積した黒土なので、畑作には適しているでしょうね。

 ヘクソカズラ

 公園のフェンスにヘクソカズラの実がたわわに付いています。こういうの、あまり見かけませんが、ここが陽当たり良好の環境だからでしょうか。

 忠生公園

 忠生公園は、鶴見川の支流、山崎川が削った谷戸の最奥部の地形を利用した公園です。谷戸の中に下りて行きましょう。

 晩秋の晴天。見上げる空は高いです。

 両側を崖に挟まれた谷戸の底へ。この辺りは湿地になっています。奥の高いところに陸橋(道路)が見えますが、あの高さが台地面です。

 タイアザミ

 少なくなった花を訪れる小さなヒラタアブ。花はタイアザミですね。

 左手の崖の斜面を台地面に向かって上ります。

 忠生がにやら自然館

 上りきるとそこには「忠生がにやら自然館」というパークセンターがありました。「がにやら」とはサワガニが棲む谷戸という意味だそうです。

 さっき谷戸の底から見えていた陸橋の上から。この風景からは下に深い谷戸があるとは思えません。

 谷戸の底とはこれほどの高低差があります。ここから再び谷戸に下り、川沿いに下っていきます。谷戸の中にも民家がありますね。

 ヤツデ

 ヤツデの若い実。やがて黒くなっていきます。

 この辺りが谷戸の底部にあたります。川に沿って生活道路があり、両岸に集落が延びていました。

 山崎身代地蔵尊

 やがて車道に突き当たり、その角にはお地蔵様が。祠には「身代地蔵尊」とあります。由来を読んでみると、天明の昔、大飢饉の際に土地の長老たちが将来を担う若者に食料を譲り、自らは餓死していったという出来事があり、その長老たちの徳を称えてお地蔵様を建立したものだそうです。

 車道を少し歩きます。

 すぐに左手に折れて、緑地保全地区(左側の森)の脇を歩いて行きます。広いスペースがありましたが、ここは何でしょうか。

 ムクノキ

 ムクノキの実が熟していました。少しシワシワになっているくらいが美味しいです。干し柿に近い味です。

 しばらく行くとスイミングクラブの前に出ました。そこから坂を上って車道に出ます。(写真のビルは東京サラヤのお客様センターだそうです。)

 車道に出たら道なりに少し下って左手の道に入るとこんな感じ。見えている墓地はこの先の簗田寺のもの。道の右側にはパチンコ店の屋上駐車場があり、そこからの眺めが良さそうです。

 駐車場からの眺めです。概ね北方向を見ています。あの稜線の高さがもともとの地面の高さだそう。多摩丘陵は、上総層群と呼ばれる海成の地形が隆起し、その後平坦だった地表をほぼ平坦面がなくなるほど櫛の歯状に河川浸食されたものと考えられています。なので、多摩丘陵を遠くから眺めると、高さの同じいくつもの稜線が重なって、一つの平坦な台地のように見えるのです。その様子から古来から「多摩の横山」と呼ばれていたそうです。
 ところで、左手奥の稜線が住宅に浸食されていますね。あの辺りは野津田地区でブロードヒルズ(!)という名の住宅地のようです。

 簗田寺

 こちらが簗田寺。江戸時代前期創建の曹洞宗のお寺だそうです。

 簗田寺の前をさらに進むとT字路に突き当たり、右に折れるとこんな階段が。この高低差も鶴見川が削った多摩丘陵の斜面のようなものです。

 図師駐在所前

 鶴見川の畔まで下ってきました。図師駐在所の横です。ここでちょっと道に迷ってしまい、写真奥に向かって進みそうになりましたが、本当は左手に行くのが正解でした。

 こっちが進むべき道です。

 畑の脇からよそ者を警戒するネコ。おじゃましてます。

 のんびり気持ちの良い里道。

 トウネズミモチ

 道端でトウネズミモチが実を付けていました。この実がネズミの糞に似ているということで「ネズミ」の名前が付いたのだとか。「トウ」は中国原産という意(ただのネズミモチは国内に自生)、「モチ」はモチノキの葉に似るからだそうです。でもモチノキ科ではなくモクセイ科。

 斜面を横切る小径を行きます。フットパスのコースでなければ一生歩くことはなかったでしょうね。

 芝溝街道

 芝溝街道に出ました。業務スーパーの先で横断して、鶴見川沿いに更に進みます。

 キンカン

 長慶寺というお寺の参道でキンカンが見事に実っていました。子供の頃食べた記憶では、甘いのは皮の部分で、実はかなり酸っぱかったように思います。

 長慶寺

 こちらがその長慶寺。斜面の上にあり、見上げるような感じでした。

 鶴見川

 鶴見川もこの辺りまで来るとかなり細い流れになります。源流まで3kmちょっとくらいでしょうか。

 比較的新しめの住宅地の先に左手に上っていく道があり、そちらへ。上には緑地があるようです。

 図師日影坂下公園

 道はS字を描いて斜面を上っていきます。ここは図師日影坂下公園というところだそうです。適度に色づいている木々がいい雰囲気を醸していました。

 市営室内プール

 上りきったら住宅地の先に大きな建物が。これは市営の室内プール。こんなところにこんなものがあったとは。町田市民なのに知りませんでした。奥に見える煙突は町田リサイクル文化センターというゴミ処理施設で、おそらくそこから出る余熱を室内プールに使っているのでないでしょうか。

 カンナ

 プールの先の小さな谷戸に下りて行きます。畑の脇にカンナが植えられていました。この花の咲く様子を「燃えて揺れてた」と表現したミュージシャンがいましたが、深紅で大ぶりの花弁が本当にトーチの先の炎のようです。

 フットパスのガイド地図によると、谷戸を下りたところには大賀ハス(古代ハス)の蓮田があるやに記されていましたが、いってみると宅地に変わっていました。この先の尾根の上にある大賀藕糸館(おおがぐうしかん)の委嘱で大賀ハスを栽培していたとのことでしたが、なにぶん地主さんの協力あってのことなので。ちなみに「藕糸」とはハスから採れる細い繊維のことで、美術工芸品の材料などになるのだそうです。

 この先で小さな谷戸はどん詰まりとなり、ほとんど獣道のような藪の中を歩いて尾根の上に登っていきました。夏場はクモの巣などで大変でしょう。

 さくら通り

 小径を上りきるとこんな感じ。通称「さくら通り」といいます。ちょっと北方向に行ってみましょう。

 尾根緑道の東端

 ここが尾根緑道の東の端。ここから北西に向かって約10kmにもわたり、尾根上に緑地が延びています。西端は八王子市鑓水の多摩美術大学の先。yamanekoが諸々活動している小山内裏公園もその一部を構成しています。

 大賀藕糸館

 尾根緑道からすぐのところに大賀藕糸館がありました。障害者通所作業所で、お菓子や手芸品を製作・販売しているようです。この日は休館でした。

 忠生都営住宅前バス停

 大賀藕糸館で引き返し、桜美林大学横の坂を下って町田街道へ。
 1時45分、忠生都営住宅前バス停に到着。ここが今回のフットパスの終点です。
 今回は多摩丘陵の南端と相模野台地の北端とが接する辺りを歩きました。宅地と農地、山野とが混在する、この辺りに特徴的な風景を楽しむことができました。ここからはまた神奈中バスに乗って帰ります。さて渋滞はどうでしょうか。