多摩丘陵でフットパス 〜金森から下鶴間〜


 

 「金森から下鶴間」

【東京都 町田市 平成29年6月25日(日)】
 
 梅雨入りしてからというもの、あまり雨はなく、どんよりとした天気の日が続いています。特に週末の天気がすっきりせず、なかなか遠出にも踏み切れません。
 こんな時はフットパスを歩くのがちょうどよいので、今回は町田市の南端をぶらぶらしてみることにしました。
 
                       
 
 多摩丘陵フットパスは、町田市域を中心として多くのコースが設定されています。ほとんどがその名のとおり丘陵地を巡っていますが、町田市の南端部分は丘陵地から外れ、相模野台地の平坦地となっています。相模野台地とは、相模川が運んだ土砂によって作られた扇状地に由来する河岸段丘で、町田市南端部はその最上位面(全部で3〜5段あるそうです)にかかっているのです。


Kashmir 3D

 今日は、まず町田駅前のバスターミナルからつくし野行きの神奈中バスに乗り、市営住宅入口バス停で下車。そこから住宅地と農地が混在する地域を境川までなだらかに下っていきます。川を渡って神奈川県側に入り、河岸段丘の縁を歩いて、最後は再び東京都側に戻って、ゴールの南町田駅を目指します。

 市営住宅入口

 町田駅前からバスに揺られること15分。下車した市営住宅入口バス停は町田街道沿いにありました。
 時刻は12時40分を回っています。どこかで腹ごしらえをしないと歩き出せませんが。

 辺りを探すと、バス停のすぐ先に「みさきや」というラーメン屋がありました。「横浜らーめん」と幟に書いてあります。迷わず入って、最もオーソドックスなラーメンを注文しました(+玉子トッピング)。とんこつ醤油味で美味しかったです。スープまで完食。

 黒猫が…

 食後、あらためてスタート。まずは町田街道から南に延びる生活道路に入っていきます。

 金森湯

 しばらく行くと煙突が。どう見ても銭湯の煙突ですが、建物が普通の民家っぽいです。裏手だからか?と思って表側に回ってみましたが、やっぱりそんなに銭湯らしくありませんでした。
 しかしこの辺りは住宅地で、一戸建てが中心。一昔前でもおそらく農家と田畑が広がっていた地域だと思われ、それぞれ風呂付きの住宅ばかりだと思うのですが、銭湯として営業が成立するのでしょうか。

 タケニグサ

 空き地にタケニグサが繁っていました。最近住宅地でも見かけるようになった…、いや、野山まで宅地開発が進んだ結果かも。

 マサキ

 民家の垣根として植栽されているマサキに花が咲いていました。小さく目立たない花です。秋になると朱色の実が付き、これが庭木として喜ばれているのだと思います。

 お稲荷さん

 ぶらぶら街歩きをしていると、こういう小さな神社に良く出逢います。両脇に狐が控えていたのでお稲荷さんでしょう。「鎮守の森」的な役割なのか、立派なヒノキもありました。
 もともと稲荷神社は農業の神様だそうですが、後に産業全般の神様として敬われ、現代では企業の敷地の一角に小さな祠があるのを見かけたりします。傾向として稲荷神社は東日本に多く、写真のような屋敷神のものは特に多摩地域に多いのだそうです。

 キヅタに侵略されつつある建物。誰か住んでいるのだろうか。

 金森峯山特別緑地

 住宅地の中に小さな森が残されていました。「金森峯山特別緑地」だそうです。町田市のホームページには次のような説明がありました。「特別緑地保全地区は「都市緑地法」に基づき、無秩序な市街地化の防止に資する緑地、歴史的・文化的価値を有する緑地、生態系に配慮したまちづくりのための動植物の生息・生育地となる緑地等の保全を図ることを目的として指定するものです。(中略) 原則として竹木の伐採等樹林に影響を与える行為は禁止となります。現在市内では10ヶ所を特別緑地保全地区として指定しています。」
 昔はこの辺りは一面こんな様子だったんでしょうね。

 ウツギ

 緑地の中に何やら面白い形のものが。これはウツギの果実ですね。上に向かってひょろっと伸びているのは花柱が残ったもの。

 緑地のすぐ脇には道路が通っていました。写真右から左に横断して、更に南下していきます。

 ザクロ

 ザクロの若い実。畑の脇に植えてありました。空きスペースに植える植物は何かと役に立つものであることが多く、ザクロの場合、実が食用になるほか樹皮や花が生薬として活用されてきたとのことです。

 正一位稲荷大明神

 ここにもお稲荷さんがありました。鳥居をくぐって手を合わせ、「おじゃましてます…」

 道はなだらかな斜面を下っていきます。この辺りは境川の古い氾濫原でしょう。今でもまだ宅地より農地が多いエリアです。

 ナス

 水田ではなく畑が多いのは、水はけの良い火山灰土だからでしょうね。

 西田橋

 下りきると境川に至りました。橋を渡ると神奈川県です

 境川

 橋の上から下流方向を望む。左が東京都、右が神奈川県。その名のとおり都県境になっています。
 境川は、町田市の最高峰草戸山に端を発し、町田市南端部までほぼ都県境を流れ、その先は藤沢市などを流れて江ノ島の前で相模川に注ぐ、全長約50kmの川です。有史以来数々の氾濫が記録されていて、下流部の藤沢宿などは頻繁に大被害を被ったそうです。現代では写真のように護岸され、川筋も直線や緩いカーブを描くように改修されていますが、上流部の町田市相原町では今でも小腸のように激しく蛇行しています。ちなみに写真右側に住宅が並んでいますが、改修前の川筋は住宅の更に右手だったようです。

 橋を渡ってすぐ右折。左手の緑地に入っていきます。

 おそらく河川改修前はこの森の中を境川が流れていたものと思われます。

 ハグロトンボ

 懐かしいハグロトンボ。子どもの頃、川遊びをしているときよくこのトンボを見かけました。

 モンシロチョウ?

 白い蝶は何でもモンシロチョウということにしていまいがちですが、そもそも紋の黒い模様がないですね。

 緑地を抜けると住宅地の際を歩きます。右手は境川が削り残した段丘崖で、比高は10mほど。上の段に上がるとまったく違った世界が広がっていて、国道16号バイパスという大きな道路とロードサイド型の商業施設が連なっています。

 ユキノシタ

 段丘外の下藪にユキノシタが咲いていました。よく見るとペーパークラフトのような可愛い形をしています。

 ムラサキカタバミ

 こちらはムラサキカタバミ。鮮やかな紫色をしていますね。普通のカタバミは黄色です。

 比高が数mとなった辺りで上の段に上がります。

 公所浅間神社

 しばらく行くと神社が現れました。公所浅間神社だそうです。「公所」は「くぞ」と読み、この辺りの地名となっています。文字のとおり役所のあったところという意味のようです。この辺りを公所上村、境川河畔に下りたところを公所下村と呼んだそうで、今でもそれぞれバス停にその名を留めています。
 ちなみに、この神社は、国道16号バイパス建設のために昭和50年にこの場所に移転してきたのだそうです。その移動距離650mほど。

 国道16号バイパス

 国道16号バイパスが下位の段丘面に下るところ。ここでは左右が切り通しになっています。国道16号は、「東京環状」とも呼ばれ、都心から概ね35kmくらいのところを環状に通している国道です。総延長は約330km! 相当の交通量があり(写真ではそうでもなさそうですが)、各所で渋滞が発生しています。そのためバイパスも多いです。

 公所下村に下りてきて、高架になっている16号バイパスの下をくぐります。

 クリ畑

 高架をくぐるとクリ畑がありました。なんとも長閑ですな。

 ゼニアオイ

 住宅地の中の路地を歩いて行きます。道端にゼニアオイが綺麗に咲いていました。ほとんど雑草的な扱いになっていますが、もともとは江戸時代に観賞用に移入されたものが帰化したのだそうです。なにしろ寒さに強いのだとか。

 二津屋橋

 再び境川を渡ります。東京都側に戻る形になります。ここにきてぽつぽつと雨が降ってきました。

 ハグマノキ

 散策路のようなところに珍しい木を見つけました。ハグマノキです。枝先になにやらモヤモヤとしたものが付いていますね。別名をスモークツリーというそうです。これは、花の後に花柄が伸びそこに細かな毛が密生するからなのだとか。この木を初めて見たのは小石川植物園でした。もう20年近く前のことです。

 鶴間公園

 東急田園都市線の高架をくぐって、線路沿いに歩くと、すぐに大きな公園が現れました。ここは鶴間公園です。「鶴間」という地名は、ちょうど東京都町田市、神奈川県相模原市、同大和市の3市が境を接するこの辺りの広い地域にわたっていています(町田市に鶴間、相模原市に上鶴間、大和市に下鶴間という地名があり、お互いに接しています。)。地名:の由来は、昔この地に遠征した武将の元に鶴が舞い降りたということから「鶴舞」→「鶴間」と転じたとのことです。
 同じ地名が県境を挟んで両方にあるというのは、その境が川となっている場合によくあり、これは氾濫などにより流路が変わって同一の地域内を分断したような場合などに起きる現象です。この境川の流域にも「小山」や「相原」、「矢部」などは、東京都と神奈川県にそれぞれ向かい合って存在します。

 人影の少ない公園内を歩いて行きます。

 公園を突っ切る形で通り抜けるとこんな感じ。急に街になりました。ゴールの南町田駅もすぐそこです。

 南町田駅(東急田園都市線)

 2時50分、ゴールの南町田駅に到着しました。ずいぶん歩いたような気がしますが、それでも2時間ちょっとの道のりでした。雨脚もちょっと強くなってきたようです。
 南町田の駅前には今年の2月までグランベリーモールというショッピングモールがありましたが、今は周辺再開発に伴い閉鎖されていて、2年後に再オープン予定だそうです(開発は東急電鉄)。ということで、駅前には見事に何もないので、とりあえず長津田まで電車に3駅ほど乗って、お茶でも飲んで帰ることにしました。今日は天気はすっきりしませんでしたが、梅雨どきなので、まあしょうがないですね。