多摩丘陵でフットパス 〜三輪から王禅寺〜


 

 「三輪から王禅寺」

【川崎市 麻生区 平成29年2月19日(日)】
 
 わずかに春の気配を感じるようになってきた今日この頃。天気の良い日を選んで多摩丘陵でフットパスを歩いてみることにしました。今回のコースは町田市の東端、三輪から川崎市麻生区の王禅寺まで。住宅地と里山との際を歩く約5kmの道のりです。
 
                       
 
 午前中にドリーム号を車検に出して、その足で小田急線の鶴川駅へ。フットパスではもうお馴染みの駅です。ちょうどお昼時だったので、駅前の王将に入ってチャーハンを注文。出てくるのに案外時間がかかり、急いで食べ終えてダッシュでバス停に向かいました。


 Kashmir 3D

 駅前バス乗り場から11時50分発の鶴川女子短大行きのバスに乗車。乗客は自分以外にはおじいちゃんが2人のみで、長閑な雰囲気で走り始めました。三輪はまるで飛び地のように神奈川県に突き出した地域です(実際にはわずかに繋がっている。)。
 バスがその住宅地の狭い路地を走っているとき、小さなハプニングが。曲がり角で内輪差を間違えたのか、コンクリート壁にガリガリと。ありゃりゃ。あわてて運転手さんが降りて状況を確認し、しばらくどこかに電話をしていて、5分後くらいに再び走り出しました。こんなこともあるんですね。

 妙福寺前バス停

 そんなことがありつつも、予定通り妙福寺前バス停で下車。辺りは田園地帯で、yamanekoの田舎と遜色ない程度の長閑さでした。 時刻は12時10分、ここから歩きがスタートです。

 妙福寺

 まずはバス停の名前にもなっていた妙福寺に向かいます。 バス停から1分で到着しました。ケヤキの高木にヤドリギがいくつも寄生していますね。

 ここは日蓮宗のお寺。山号は長祐山。南北朝時代の創建だそうです。入ってみるとかなり広い敷地でした。ネット情報によると約4千坪だそうです。ただ人影はなく、境内は静かでした。
 よく考えると、お寺の境内が基本的にだれても立入自由というのは、心が広いというかなんというか。ありがたいことです。入らせてもらう方もお寺の人がいたら挨拶くらいはしないとダメですね。

 ヤドリギ

 葉を落としたケヤキ。もう何年もヤドリギと共生しているのでしょうね。

 忍冬(スイカズラ)

 境内を一回りしてから、お寺の敷地を出て脇の小道に入りました。しばらくここを歩いていきます。
 生垣のスイカズラが新しい葉を伸ばし始めていました。名前のとおりこの冬の寒さを耐え忍んできたんでしょう。

 三輪住宅団地

 三輪住宅団地の縁を歩いて行きます。この辺りは昭和の終わり頃に宅地開発されたところ。そのせいか南欧風の住宅が軒を連ねると言った風景ではなく、良き昭和の落ち着いた風情を見せていました。


 オオイヌノフグリ

 宅地は里山に接していて、畑の畦にはこんな春の使者も群生していました。オオイヌノフグリです。

 白梅

 民家の垣根を越えてせり出すように枝を伸ばしていた白梅。家の人に断わって写真を撮らせてもらいました。野山歩きで集落を歩くときは、土地の人にこちらから進んで話しかけるようにしています。カメラとか持っているので、不審者に間違われないようにという意味もあって。

 住宅地の反対側は里山や畑。多摩丘陵の穏やかな風景ですね。

 恩廻公園

 細長い公園に出ました。地図には恩廻公園とあります。解説板によるともともとここは鶴見川の川筋だったとのこと。河川改修の直線化で元の蛇行した川筋を埋め立て、公園化したとのことです。Ω形に蛇行した川をくびれのところでバイパス化してつなげ、くねったところを埋め立て農耕地にすることを昔から「川廻し」といいますが、恩廻公園の名もこれに由来したりするのでしょうか。
 東京都(町田市)はここまで。ここから一瞬だけ横浜市(青葉区)に入ります。

 カワラヒワ

 恩廻公園の木に群れで停まっているカワラヒワにしばし歩みを停める。風切り羽の黄色い模様が鮮やかです。

 水車橋

 恩廻公園の先に鶴見川が現れました。ここに架かる水車橋で左岸に渡ります。横浜市はここまで。向こう側は川崎市(麻生区)です。

 県道12号線

 橋を渡ってすぐに県道12号線(横浜上麻生線)に突き当たり、左折して柿生方面に歩きます。

 国道を150mほど歩き下麻生交差点を右折すると、いきなりの田園風景。畑の脇を進み、昔は庄屋さん?と思うような大きなお屋敷の縁を歩いて行きます。建屋といい屋敷林といいまさに「豪農」という言葉がぴったり。

 これは住宅地の中にあった小さなお稲荷さん。鳥居の奥に小さな石造りの祠がありました。その後の木立はイチョウでしょうか、祠の何倍もある立派な「社叢」です。

 門前無人市

 お屋敷の門前には野菜の無人市も。広大な「家庭菜園」で収穫したものなのかな?(小作人のひがみ)

 キミノセンリョウ

 無人市の脇に植えられていたキノミセンリョウ。「君の…」ではなく「黄実の…」

 お屋敷を離れ、公団住宅の横を歩いて行くとこんもりとした社叢が。幟柱の石柱には子ノ神社と彫られていました。鳥居の手前にある由緒を記した看板によると、出雲大社の分霊を勧請した神社で、祭神は大国主命とのことです。

 子ノ神社

 さらに由緒には、寛永4年(1627年)に富士山が噴火した際にこの辺りにはおびただしい降灰があり、村人が天変地異の前兆と驚き畏れて、翌年、この地に子ノ神社を建立したとありました。現在の社殿は昭和3年に改築されたものだそうです。

 狛犬

 なかなかイケメンの狛犬。よく見ると子犬を愛しんでいるのが分かります。こういうタイプの狛犬、ときどき見かけます。

 早野の里

 子ノ神社を後にし、早野川を渡ると、広い場所に出ました。整然と区画整理された農地が広がっています。この平地、もとは鶴見川の氾濫原でしょう。道端にはオオイヌノフグリやホトケノザなど、早春の小さな花たちが咲いていました。

 しばらく行くと、こんもりとした里山が見えてきました。ここからあの山の際を左に辿って行きます。

 早咲きの桜。カワヅザクラでしょうか。七分咲きといったところです。

 五郎池

 谷戸の入口に五郎池という溜池がありました。カモでもいないかなと覗いてみると…

 カワセミ

 碧い光が水面すれすれに滑るように飛んできて水際の梢に停まりました。おぉ、カワセミです。いつ出逢ってもハッとする美しさ。下の嘴がオレンジ色なので、雌ですね。

 ハンノキ林

 太郎池を過ぎ、谷戸を遡っていくと、ハンノキ林が。場所的にここはもともと水田だったのではないでしょうか。ハンノキはかなり湿った環境でも育つ樹木で、水田の跡地は好適な場所です。

 雄花がずいぶん伸びています。これが開花の状態。背景にうつっている丸っこいものは昨年の実です。

 上の池

 更に谷戸を遡ると再び溜池が。上の池という池だそうです。

 コサギ

 水際で採餌中のコサギをしばらく観察していると、足でチョイチョイっと探り、ひょいっとガマガエルをつまみ上げました。さすがに餌としてはでかすぎたのか、すぐにリリースしていました。

 谷戸の奥

 上の池を過ぎ、更に更に谷戸を遡っていきます。谷戸も最奥部に近づくと水が少なくなるので、もっぱら畑に用いられていました。もっと遡ると畑にも適さず、柴刈り場として利用していたりします。谷戸は里山に深く切れ込んだ谷のような地形の人が住みづらい場所ですが、水田、畑、柴刈り場と人々の生活に欠かせない生産の場でもあったのです。また、定期的に人の手が入ることによって、様々な生き物が谷戸やその周辺で生きていくことができてきました。そんな谷戸が多摩丘陵にはまだあちこちに残っています(水田や畑は少ないですが。)。

 谷戸のどん詰まりは稜線に向かう斜面に。まさに柴刈り場です。

 そして稜線に上がってみるとこの風景。広々としていますね。北側に広がる王禅寺地区です。

 その王禅寺地区に丘を下って住宅地の道を歩いて行きます。さっきまで森の中にいたのがウソのよう。

 しばらく歩くと琴平神社が現れました。すごく立派な標柱です。鳥居の奥に…、なんか尋常でない角度の階段が伸びていますが。

 琴平神社

 階段に恐れをなして、鳥居の右手にある坂道(こっちもかなり急角度)から上がると、綺麗に整地された広い場所にぽつんと神社がありました。しかしずいぶんと新しいですね。調べてみると、平成19年に放火で拝殿と本殿が焼失したそうで、今あるのは平成23年に再建された本殿なのだそうです。敷地が広いのは、本来この本殿の前に拝殿があったからですね。

 王禅寺ふるさと公園

 琴平神社の裏手は「王禅寺ふるさと公園」という広い公園の南端部でした。休日にはたくさんの家族連れで賑わうそうですが、ここは端っこなので閑散としていました。

 住宅地のヘリを通って歩いて行くと、王禅寺の入口が。ここを入っていきます。この辺りの王禅寺という地名は、ここ王禅寺から名が付いているんですね。よっぽど由緒のあるお寺なんでしょう。

 王禅寺参道

 参道の脇には見事な梅園。参道も昔ながらの風情です。

 二王門

 参道を奥まで歩いて行くと階段が現れ、その中ほどに二王門が。「星宿山」と山号名が掲げられていました。宗派は真言宗です。

 王禅寺本堂

 王禅寺の創建は奈良時代だそうです。やっぱり凄そうなお寺です。日本の歴史をそのまま見てきたような古刹なんですね。鎌倉時代には、日本最古の甘柿の品種「禅寺丸」が発見されたところだそうで、今も境内に原木が残っているそうです。

 アオキ

 アオキの実が朱く色づいていました。

 王禅寺ふるさと公園

 お寺を離れ歩いて行くと、また広い公園が。子どもたちの歓声で賑わっていました。ここも王禅寺ふるさと公園の一部のようです。どんだけ広いんだ。

 王禅寺東二丁目バス停

 そしてバス通りに出ました。ここの王禅寺東三丁目バス停が今日のゴールです。時刻は14時15分。ずいぶん歩いたような気がしますが、それでも2時間ちょっとのウォーキングでした。さて、ここからバスに乗って新百合ヶ丘駅に向かいます。
 3月になるとぐっと春が近づいてくるでしょう。楽しみです。(花粉はこれからピークを迎えますが。)