多摩丘陵でフットパス 〜成瀬から金森〜


 

 「成瀬から金森」

【東京都 町田市 平成27年10月25日(日)】
 
 このところ天気は安定していますが気温の日差が大きく、天気予報でも「9月上旬並」と言ったかと思えば数日後には「11月中旬並」とか言っています。この週末も昨日は汗ばむような陽気でしたが、今日は北寄りの風が吹き関東には冷たい空気が流れ込むとか。こうやって往ったり来たりしながら少しずつ冬に近づいていくんでしょうね。
 さて今回はフットパス歩き。前回歩いたのは6月だったので4箇月ぶりのフットパスになります。コースは、JR横浜線の成瀬駅から町田駅までの一駅区間。相模川の河岸段丘が多摩丘陵に接する辺りに位置する高低差の少ないエリアです。移動距離は7kmちょっとになります。
 
                       
 
 午前10時半過ぎに家を出て、橋本駅で横浜線に乗り換え、横浜方面に南下すること6駅。11時10分に成瀬駅に到着しました。

 成瀬駅南口

 成瀬駅の出口は南北にあり、ロータリーや路線バスの乗り場があるのは北口。お昼前ですが静かなものでした。今回のスタート地点は南口になるのでそちらへ移動。おもしろいことに南口は北口より1階分高くなっていました。で、南口に出てみると北口の5倍くらい長閑な感じ。駅前には、これから歩く金森地区と成瀬駅とを結ぶコミュニティバス「かわせみ号」が停まっていました。


Kashmir 3D

 今日のコースは成瀬駅から横浜線沿いに歩き、その後一旦境川まで下って、再び横浜線沿いに戻ってくるもの。そのほとんどが金森地区になります。この辺りは相模野台地(相模川と多摩丘陵に挟まれた河岸段丘)の最上位面に位置していて、多摩丘陵のような谷戸による細かな浸食はほとんどなく、平坦地が広がっています。ただ、その上を流れる境川の川筋は周囲から若干低くなっています。

 JR横浜線

 駅近くのコンビニでおやつを買って、11時30分にスタート。しばらくは線路沿いを町田駅方面に戻ります。横浜線はこの辺りでは段丘(北側の恩田川が削ったもの)の縁を通っていて、線路の向こう側は一段低くなっています。

 セイタカアワダチソウ

 線路脇の空き地にセイタカアワダチソウが茂っていました。秋ですな。

 しばらくして住宅地の中に入りました。この提灯は地元自治会が設置した防犯防災提灯だそうです。この辺りの民家の庭先にいくつか設置されていました。

 松葉谷戸公園

 住宅地の裏手に残された自然「松葉谷戸公園」の中に下りて行きました。ここだけぽっかりと森が残っているのは、台地面から切れ込んだ谷戸地形が住宅地としては適していなかったからなのかもしれません。公園といっても鬱蒼として人影はなく、昼間のこの時間だから落ち着いて歩けますが、夕方とかは寂しい感じなのでは。

 すぐに谷戸の奥に突き当たり、そこから斜面を登っていきます。

 公園を抜けるとまた住宅地に。民家の庭先に柿が実っていました。高いところに残っているということは鳥たちのために残してあるのかも。こうやって民家の庭木を眺めながらぶらぶら歩くのも楽しいです。

 お稲荷さん

 丘の上の平坦地にはまだ耕作地もあちこちに点在しています。畑の際に小さなお稲荷さんがありました。背後には鎮守の杜ならぬ一本のイチョウの木。やはり寺社の樹木はこんな小さな祠のものであってもむやみに伐採するようなことはないようです。

 シャリンバイ

 お稲荷さんの垣根にはシャリンバイが実を付けていました。シャリンバイには葉の細長いものと丸っこいものとがあり、それぞれホソバシャリンバイ、マルバシャリンバイと区別されているようです(中間型もあるとのこと。)。

 真っ平らな丘の上に畑が広がっています。この辺りは民家はまばら。観光農園のようなところで家族連れがサツマイモ掘りをしていました。

 ネギ畑

 こっちはネギ畑ですね。

 町田街道

 田園風景の中を縫うようにしながら南下していくと町田街道に出ました。しばらくこの道沿いに歩いていきます。
 町田街道は交通量が多にもかかわらず基本片側1車線で、しかも路線バスも頻繁に運行しているので、慢性的に渋滞している道路です。並行して国道16号が走っているので、この道の拡幅などは本気で考えてはいないのだと思います。

 クシュクシュ

 昼時になったので店を探しながら歩いていると、美味しそうなカレー屋を見つけました。店名は「クシュクシュ」。調べてみるとヒンディー語で「嬉しい」とか「幸せ」という意味のようです。

 これはキーマ

 ポークとキーマを注文。予想に違わず美味しかったです。お客さんは近隣の人が多いようで、店員さんたち(おそらくインド方面の人)との会話を聞いていると、地元に愛されている店だということが伝わってきました。

 金森天神山市民の森

 食後は町田街道を100mほど南下し、右折して緩やかに坂を下っていきます。この傾斜は境川の川筋に向かう斜面です。ほどなくこんもりとした雑木林が見えてきました。

 金森天満宮

 林の中に入ってみると金森天満宮という神社(というか祠)が静かに建っていました。ここでもやはり日本人の精神性が発揮されているのか、小さな社に不釣り合いなほど広い鎮守の森が残されていました。

 目黒町田線

 金森天満宮の森を出るとまた住宅街。この辺りはほぼ斜面を下りきったところになります。町田街道との標高差は10mちょっとです。

 鶴金橋

 神奈川との都県境になっている境川を渡ります。架かっているのは鶴金橋。神奈川側が相模原市の鶴間地区、東京側が町田市の金森地区。なので鶴金橋というのだと思います。

 泉龍寺

 橋を渡ってすぐのところに大きなお寺がありました。長い塀に囲まれ、奥の方には三重の塔も見えています。入り口に人の背丈よりも高い大きな岩をくり抜いて彫られたお地蔵様が。へー、お地蔵様がお出迎えか、と眺めていたのですが、後でここが裏口であることが判明。ずいぶん立派な寺です。 で、こっち(右の写真)が正門。三重の塔は昭和50年台に建てられたものだそうです。ちょうど法要をされていたので、境内に入るのはやめておきました。

 境川

 折り返す形で再び境川まで戻ってきました。ここからこの川の左岸を遡ります。改修され緩やかなカーブを描いていますが、左岸の住宅地の中には細かく蛇行する改修前の川筋も残されていていました(三面護岸ですが)。現在の川筋からゲートで水の流入を遮っているところをみると、増水時の遊水池として使われるのではないかと推察。境川の蛇行の様子は相模原市立環境情報センターのHPに分かりやすい解説がありました。ちょうどこの辺りの地図が掲載されています(こちら)。

 ゲート近くで水面を覗き込むと、大きな鯉が集まってきました。餌を貰えると思ったんでしょうね。

 遊水池

 更に少し遡ったところにある低地。ここもかつての蛇行の跡地でしょう。こっちは流路だけでなく河原だった部分も遊水池として使われています。看板によると普段は公園として開放しているようですが、目的が目的だけに遊具などは一切設置されていませんでした。

 クコ

 これはクコの花ですね。もともとは海外から移入されたものだそうですが、現在では都市部でも河原などに群生しているのを時々見かけます。

 都営金森住宅

 川沿いを離れて、都営住宅の敷地内を歩いていきます。

 ヘブンリーブルー

 抜けるような青空に同化するように青いアサガオが咲いていました。「ヘブンリーブルー」という品種のようです。どことなく地中海沿岸の風景を連想させますが、ここは町田市金森です。

 都営住宅を抜けて住宅地の中へ。民家に囲まれるように鉄塔が聳えていましたが、もともと鉄塔があったところに住宅が進出してきたのかもしれません。ところでこの電線、どこにつながっているんだろう。と思って調べてみると、世の中にはこういうことを調べ上げる人もちゃんといるようで、橋本駅の南側にある橋本変電所からここまでやって来て、ここのすぐ北にある町田変電所につながっていることが分かりました。以前、鉄塔を辿って小さな旅をする子どもの話を読んだことがありましたが、本当にやっている人がいるんですね。

 杉山神社

 住宅地の坂道を上り、車の往来の多い道に出てすぐに立派な鳥居が現れました。杉山神社というようです。街中の神社にしては鳥居から神殿までの距離がずいぶん長いです。昔はこういう広い境内では子どもが遊んでいたものですが、人の気配はありませんでした。ご時世ですかね。

 神社に参拝してからまた坂道を下っていきます。金森地区を縦横に歩いている感じです。しばらく行くと、路地の向こうにこんもりとした森が見えました。

 金森山市民の森

 ここは金森山市民の森。子どもがセミ採りなんかするのにちょうどいい感じのところでした。中に入っていくと、森の中でおじさんが一人、詩吟を唸っていました。ここなら近所から苦情も来ないでしょう。

 サトイモ畑

 またまた坂道を上る。標高差はせいぜい10数mほどでしょうが、何回も上ったり下りたりしていると、けっこう足にきますね。
 住宅街の中の畑。植えられているのはサトイモです。

 渋池弁財天

 民家の裏手にひょっこりとあった渋池弁財天。鳥居の向こうに石橋が見えますが、これは社を囲んでいる堀を渡る橋。いや、ぱっと見、堀のように見えますが、池の中島に社が建っているというのが正解かも。池に対して中島が大きいので、水面部分が堀のような感じに見えるのです。

 ここからは町田駅に向かって歩いて行きます。高いビルが見え始めました。

 町田天満宮

 立派な神社がありました。町田天満宮です。ここは駅に近いので、正月とかは初詣客で混雑しそうです。境内には七五三のお参りをしている家族がいましたが、ちょっと気が早くないか。

 横浜線

 天満宮の横には跨線橋があり、ここで横浜線を渡ります。

 市立中央図書館

 急に賑やかになりました。跨線橋の先に町田市の中央図書館があったので、休憩がてら寄ってみることに。ホテルと共存しているビルなのでこんなに大きな建物になっているそうです。

 町田駅手前

 図書館で小一時間過ごしてから町田駅に向かいました。ここからはデッキを歩いてそのまま駅ビルに入ることができます。そして2時10分、町田駅に到着しました。休憩を含めて2時間40分の行程でした。
 さて、今回は地形の微妙な高低を感じながらの街歩きとなりました。市街地をただ漫然と歩くのではなく、こんなふうにフットパスを歩くのも面白いです。あと、振り返ってみると、今日は大小合わせて6つの寺社を巡っていました。そういう目的はなかったのですが。なんか御利益があるでしょうか。
 
 


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 今回歩いた金森地区が地形的にどんなところに位置しているのかを示した図です。相模川の左岸河岸段丘で構成されている相模野台地と多摩丘陵とのちょうど境目辺りに位置しているのがよく分かります。
 多摩丘陵は約250万年くらい前の地層でできていて、その後の浸食で現在では細かな谷(谷戸)が襞のように切れ込んだ地形になっています。一方、相模野台地は相模川が流路を変えるたびに細かな起伏を削ってならし、また、上流から運んできた土砂が堆積していった結果、全体にのっぺりとした地形を形作っています。相模野台地の北の方では境川が多摩丘陵との境界になっていますが、途中から境川の左岸部分にも相模野台地が広がっています。金森地区はそういった場所にあるのです。