多摩丘陵でフットパス 〜鶴川から真光寺〜


 

 「鶴川から真光寺」

【東京都 町田市 平成26年12月7日(日)】
 
 今年もあっという間に師走になってしまいました。早いですね。街の中にはクリスマスの飾り付けがあちこちに見られ、嫌が応にも歳末感が高まってきます。 ここのところ寒気の襲来で、日本列島は各地で雪の被害が出ているようです。四国の山中でもたくさんの車が立ち往生したりとか。関東南部はというと周期的に崩れる日があるものの、概ね乾燥した晴天が続いています。朝はぐっと冷え込み、日中は絵の具を流したような青空。夕方、一瞬空が赤く燃え立ち、すぐに暗い闇が取って代わる。yamanekoはこの時期の晴天の一日が大好きです。
 
                       
 
 さて今日は先月に続いて多摩丘陵のフットパスを歩くことにしました。起点は前回と同じ鶴川駅です。小田急多摩線で一旦新百合ケ丘まで行って、そこで小田原線に乗り換え。小田原方面に2駅行くと鶴川駅に到着です。平日は通勤客で混雑する路線ですが、休日は長閑な車内でした。


Kashmir 3D

 今日のコースは、鶴川駅から北上し、多摩線の黒川駅まで。丘陵の尾根と谷戸を上ったり下りたりする距離にして約6qのコースです。黒川駅は新百合ヶ丘で小田急小田原線から分岐する多摩線の駅です。

 鶴川駅北口バスロータリー

 11時40分、鶴川駅の北口ロータリーを出発。この時間でも日陰は随分冷え込んでいました。

 香山園

 鶴川街道を横断してすぐに左手の小径に入ると立派な門構えのお屋敷が。案内表示を見ると、ここは香山園(かごやまえん)という庭園美術館だそうです。元々戦国時代に武功を立ててこの地に所領を受けた越後の神蔵氏という人の館なんだとか。ま、ここは素通りです。(入園料が千円というのもちょっと…。)

 香山園の脇の小径を奥に進んでいくと竹藪になりました。よく管理されているようなので、春にはタケノコがたくさん採れるのでは。それにしても鶴川駅からわずか数分でこの風景とは。

 丘の上に出ると住宅地になっていました。静かです。 そして反対側の坂道を下っていきます。人影はほとんどありませんが、車の往来は多いです。

 寿司「六山」

 坂を下り切ると真光寺川沿いに出ました。時刻はちょうどお昼。通り沿いに美味しそうな寿司屋があったので、ここで昼食にしました。お寿司はもちろん茶碗蒸しも味噌汁も美味しく、久しぶりにリッチな昼食をいただきました(平日はコンビニ弁当率が高いyamaneko。)。さっき香山園の入園料千円を渋っておきながら、食べるものへの出費には抵抗感が少ないです。

 丘の上へ

 食後、再び歩き始めます。真光寺川を渡って右手の坂を登っていきました。家はたくさんあるのですが、外を歩いている人はごく僅か。閑散としていると言ってよいくらいの静けさです。寒いからかな。

 平和台団地

 登りきると丘の上は平坦になっていて、ここにも住宅地が広がっていました。平和台団地という住宅地のようです。 「平和台循環」というバスが走っていたので調べてみると、鶴川駅とこの団地を結ぶ路線で、朝夕を中心に運行しているようでした。駅まで2qほどあるので、通勤の足というわけですね。
 静かな道をてくてく歩いて行くと、住宅街が切れる辺りから道が細くなりました。このまま反対側の川筋に下っていくようです。

 柚子

 道端には柚子がたわわに。摘果されていないのか、実が付きすぎているようです。

 民家の庭先から枝を伸ばす紅葉。この季節、多摩丘陵はどこも紅葉で彩られています。紅葉(黄葉)する木は数多くありますが、色づくはなから次々と落葉してしまうものも多くあり、カエデ類のように一本の木丸ごとが色づいているというものばかりではありません。サクラなども紅葉した葉が全部残った姿が見られるなら素晴らしく綺麗だと思います。落葉樹の中でも早く葉を落とすのはケヤキやカツラなど。一方、遅くまで残るのはカシワやヤマコウバシなどが代表的です。

 片平地区

 この辺りにはまだまとまった農地があります。長閑な初冬の風景です。昔からの農地でしょうが、固定資産税はどのくらいなのかななどと俗なことを考えたりして。

 おそらく造園業のうちの敷地だと思うのですが、そこに立派なケヤキが立っていました。高さ20m以上ありそうです。

 メジロ

 更に緩い坂を下っていきます。民家の庭先に残り柿。メジロがお食事中でした。鶴川周辺はカキの名産地なので、小鳥たちは冬場でも食べるものには苦労しないでしょうね。

 もう昼過ぎなのに霜柱が残っています。今日は晴天ですが、なかなか気温が上がりません。予報では最高気温が9度。でもこれは都心の値なので、ここ多摩丘陵では更に2、3度低いのではないでしょうか。

 その霜柱があったキャベツ畑。この丘の南側斜面は住宅地が広がっていましたが、北側斜面は農地がメインでその中に民家が点在しているといった感じです。北側といっても日当たりは南側と大して変わりないようですが。

 片平川

 坂を下り切ると片平川のほとりに出ました。この川沿いをちょっとだけ遡ります。

 100mほど歩いて、すぐにまたさっき下りてきた丘の方に向かって坂道を上っていきます。

 カキノキの古木

 畑の脇を通り、民家の庭先を歩いて行くと、大きな柿の木がありました。川崎市の保存樹になっているそうです。確かに 柿の木にしては幹が太いです。でも勝手に切ったりすることもできないでしょうし、枯れないように管理するのが大変でしょうね。市から年間2、3千円の奨励金が出るようですが。

 

 農村風景の中の小径を登って行くと、やがて民家もまばらになってきました。 丘の尾根筋に出てからは、尾根道を延々と歩いていきます。

 鶴川団地遠望

 やがて左手に展望が開けました。向こうの丘から足元の急な斜面にまでびっしりと住宅が並んでいます。
 左側の木立は神社の社叢のようです。ちょっと寄ってみることに。

 神明神社拝殿

 裏側から境内に下りて行く感じで正面に回りました。この社は神明神社というようです。いわゆる「お伊勢さん」。創建など由来は不明で、古くから神主もいないのだそうです。でも拝殿に比較的新しめの補修の形跡があるところを見ると、きっと氏子の方々がしっかり守っておられるんでしょうね。

 本殿(奥)

 こちらが拝殿の奥にある本殿へのアプローチ。紅葉に囲まれ静かな時間が流れています。

 鶴川台尾根緑地

 ここからは鶴川台尾根緑地と呼ばれる尾根道。稜線に沿うように延びていて、南西側の眺望が開けています。

 真光寺川が削った低地とその向こうの丘、見える範囲のほとんどを住宅が埋め尽くしていますね。手前の方は庭園緑地鶴川台という団地だそうです。首都大学東京みたいな倒置法ネーミング。
 ああ、この一つ一つの屋根の下にそれぞれ違った人生ドラマが、でも求めるところは共通して小さな幸せという人生ドラマがあるのかと思うと、その健気な営みにいとおしさを感じてしまいます。自分を含めて。

 鶴川台尾根緑地

 しばらくこんな感じの道が続きます。開放的で気持ちがいいです。

 やがて住宅街へ。というより、住宅街が尾根上まで進出してきているということです。

 冬晴れの空。コナラの紅葉も進んでいます。

 桐光学園

 ここでは桐光学園の校舎が稜線のところまで迫ってきています。 ぱっと見、山の上のような感じではありませんね。 桐光学園のグラウンドではソフトボールの部活の生徒がノックとかしていました。

 真光寺緑地

 その先はまた林の中の道になりました。この写真を見る限りは自然豊かなようにも見えますが、左手には住宅街、右手には企業団地が迫ってきていて、ほんの狭い幅の緑地が稜線上に伸びているといった状況です。

 写真には写っていませんが、ここで落ち葉掻きをしている人がいました。昭和の中期まではこんな風景があちこちにあったんでしょうね。 yamanekoにとってどこか 郷愁を誘う風景です。

 途中から左に階段を下って住宅街の中へ。(中央部がソフトフォーカス的になっているのはレンズの汚れによるものです。)

 都市庭園鶴川台

 ここも都市公園鶴川台。結構広いです。広い坂道の通りを登っていきます。

  坂の上には真光寺公園という公園がありました。入り口手前に池があり、周囲の紅葉を水面に映しています。趣のある風景としばらく眺めていると、数羽のカモが池を横切りその絵を乱して行きました。

 アオサギ

 ふと右手の岸辺を見上げると、水面から6、7m上の梢にアオサギが。しばらく見ていましたが微動だにしません。足元が小枝を集めたようになっているところを見ると、どうやらあそこが巣のようです。

 真光寺公園

 池の端を離れ公園の正面にやって来ました。奥に向かってなだらかな丘になっています。この三角がゲートでしょうか。ここはやっぱり高い所まで行ってみましょう。

  で、こちらが丘の上から来た方向を見下ろしたところ。こんなに天気がいいのに、公園で遊ぶ人は少ないです。やっぱり寒いから? 更に階段を登ってピークまで行き、丘の裏側に回ります。

 黒川周辺

 丘の北側にはこんな風景が。こちら側も広い谷戸を住宅が埋めていました。手前に見える高架は小田急多摩線。すぐ右手に黒川駅があります(今日のゴール)。奥の高架は京王相模原線。若葉台駅付近です。 ここから尾根を離れて北側に下っていきます。

 企業団地のすぐ裏手にはまだこんな森が残っているのですね。

 野活センター

 森を抜けると川崎市の野外活動センターの裏手に出ました。館内ではクリスマスの飾りつけか何かの教室を、また、表の広場では雑木林の手入れのボランティアのような活動をしていました。 ここまで来たらゴールはすぐそこです。

 センターの前庭の紅葉。標高の低い多摩丘陵でもそろそろ紅葉は終わりでしょうか。

 黒川駅

 野活センターから歩くこと約3分。ゴールの黒川駅に到着しました。時刻は2時40分、所要3時間でした(昼食時間を含む。)。着いたら喫茶店で甘いものでもと妻と話していたのですが、駅周辺には見事に何もありません。というか人っ子一人いませんでした。潔いくらいの静寂です。念のために北口にも回ってみましたが、人っ子一人いない上に日陰で寒々としていました。やむなくそのまま改札をくぐり、帰途につくことにしました。
 
 さてさて今回のフットパス。冬晴れの下、のんびりと歩けて楽しかったです。多摩丘陵のフットパスを辿る野山歩きは、坂を上るたび、角を曲がるたびに初めて見る風景が展開して、飽きることがありません。自分の頭の中の地図の空白部分が少し埋められ、そして思いがけず既知のところとつながったりすると「おお、ここに出るのか!」と小さな感動も。こんな楽しみを求めてまた気軽に歩いてみたいと思います。