江ノ島 〜ひねもすのたりの海辺歩き〜


 

【神奈川県 藤沢市 平成29年3月12日(日)】
 
 厳しい冷え込みが続くこの頃ですが、ときおり春の表情を見せてくれる日があったりして、そんな日は日光を浴びに外に出かけたくなります。そして、今日は朝から穏やかな陽が注ぐ春めいた一日。さっそくどこかへ出かけようと話がまとまりました。妻と。
 で、候補に挙がったのが江ノ島です。今日辺りきっとポカポカで気持ちいいよと即決しました。
 
                       
 
 午前10時に家を出て、まずは横浜線で町田へ。そこで小田急線に乗り換え、次の相模大野で江ノ島線に再び乗り換えて、終点の片瀬江ノ島駅に到着したのは11時半でした。ローカル線ののんびり旅です。 

 片瀬江ノ島駅

 これは竜宮城か?と思うような外観の片瀬江ノ島駅。昭和4年の開業当初からこの竜宮城スタイルなのだそうです。当時から江ノ島は一大観光地だったんでしょうね。今でもですが。
 とりあえず昼が近いので、駅の右手にある「カタセ食堂」という雰囲気のいいお店に入って昼食をとることにしました。若い夫婦(?)で切り盛りしていて、味も美味しかったです。


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 今日のコースは、まず江ノ島大橋を渡って島に上陸(実際には陸繋島になっていてわずかにつながっているのです。)。そのまままっすぐ商店街を抜けて江島神社の瑞心門の前で右手の道に。島の西側から反対側の海岸に出るというものです。

 江ノ島

 昼食を終えて、人の流れに乗るようにして江ノ島大橋のたもとまでやって来ました。いや、しかし、ここはいつ来ても人が多いです。島に向かう人も島から戻ってくる人も途切れることがありません。

 仲見世通り

 島に渡ってそのまままっすぐ仲見世通りを進むのですが、これがまたかなりの混みよう。アメ横レベルかもしれません。上の写真は仲見世通りを通り抜けたところで振り返って撮ったものです。

 瑞心門

 商店街の突き当たりが江島神社の瑞心門。観光客のほとんどは、ここを左に折れて、島の展望台方面に歩いて(またはエスカーで)登っていきます。yamanekoたちはここを右に折れ、細い裏道風の小径を行きます。こちらは行き交う人もまばらです。
 ちなみに江島神社は、ここ辺津宮(へつのみや)と、島の中腹に中津宮(なかつのみや)、そして山頂部に奥津宮(おくつのみや)があります。



 道は急峻な山肌の中腹をなぞるように延びていて、ところどころ展望が開けています。上の写真は片瀬方面(本土方面)を見たところ。ちょうど小山で江ノ島大橋が隠れてしまっています。

 湘南海岸

 これは片瀬海岸から辻堂海岸にかけて。更に茅ヶ崎、平塚、大磯と砂浜が長くつながっています。いわゆる湘南海岸ですね。

 ハコベ

 山際にはこんな可愛い花も。ハコベです。小さいので顧みられることもほとんどありませんが、よく見ると可憐な姿をしています。

 ヤブツバキ

 暖地の照葉樹林を代表するヤブツバキ。子どもの頃、花冠をもいで、付け根部分から蜜を吸って遊んだりしていました。


 タブノキ

 巨木も多いタブノキ。常緑広葉樹では最も北(本州北端)まで分布する種だそうです。ただし、関東以北では沿岸部に限られるのだとか。海は熱源ですからね。やはり寒さの厳しい地域では生きていけないのでしょう。写真は「混芽」といって花と葉が一緒に包まれている蕾で、それがほぐれつつあるところです。



 瑞心門のところで分かれたメインの路地に合流しました。ここから江島神社の奥津宮を経て稚児ヶ淵に向かいます。

 江島神社奥津宮

 正面が奥津宮。江戸時代までは江の島岩屋(この先の稚児ヶ淵にある洞窟)に祀られていたご本尊を春から秋にかけてここに移し、台風などで岩屋に波が入ってご本尊が流されてしまうのを防いでいたのだそうです。
 ところで、最寄りの駅名は「江ノ島」ですが正式な島の名前は「江の島」、神社は「江島」だそうです。

 相模湾

 食堂やお土産物屋の先に相模湾が見えてきました。地形的にはこの先断崖のように落ち込んでいます(もちろん階段があります。)。

 えぼし岩

 えぼし岩が遠くに見えました。サザンの「チャコの海岸物語」で一躍全国に知れ渡った岩礁です(正式には「姥島」(うばしま)というのだそうです。)。昔はもっと先端部分が長かったのだそうですが、戦後まもなく米軍の射撃訓練の標的に使われて、形が変わってしまったのだそうです。戦後まもなくってなかなかカオスで、今では考えられないようなこともいっぱいあったようなんですよね。

 岩棚

 島の標高は海抜60mほど。周囲は切り立った海蝕崖に囲まれていて、特に島の西側半分は荒々しい風景となっています。これから向かう稚児ヶ淵辺りは相模湾に面していて波が荒く、その浸食作用で海蝕台(波蝕台とも)が発達しています。それが関東大震災のときに隆起したそうで、今では平らな岩棚となっています。隆起海蝕台というやつです。



 岩棚に下りて行きます。こんな地形なので多くの観光客の憩いの場所になっています。

 タイドプール

 平らな岩盤のあちこちに深い穴があって、海水で満たされていました。急流の河原で見られる甌穴のようなものでしょうか。

 コトジツノマタ?

 別のタイドプールで見かけた海藻。海藻は色によって大きく緑藻(アオサなど)、褐藻(ホンダワラなど)、紅藻(オキツノリなど)の3つに分けられるそうですが、これは紅藻のコトジツノマタか(図鑑情報)。

 フジツボ

 こちらはフジツボの大群です。

 岩棚

 岩棚はかなり広いです。これだけのものが波の力で削られて作られたのかと思うと、あらためて自然の力には驚かされます(案外、観光客のために整地されていたりして。)。しかも本来なら波に洗われる環境のところ、地震で隆起して人が歩けるようになっているとは。

 イワガニ

 イワガニ。水の中でじっとしています。人間を警戒しているんでしょうね。小さいので身は少ないですが、いい出汁が出るそうです。

 ヒジキ

 これってヒジキですよね。褐藻です。波が洗うたびにダイナミックに踊っていました。



 なにやらカモメが集まってきて海面でバシャバシャしていますが、小魚でも群れているんでしょうか。視線を上げると遠くに三浦半島が。見えているのは武山か。



 たくさんのヨットが海に出ていました。ディンキーと呼ばれるキャビンのないタイプの小型ヨットです。調べてみたら、神奈川県セーリング連盟が主催している江ノ島トレーニングレースという定期的な練習会のようでした。
 懐かしいですが、若い頃、大瀧詠一の「君は天然色」という歌で初めてディンキーというものがあることを知りました。そのとき薄ぼんやりと思い描いた風景を、今江の島で眺めているとは。もう35年も前の曲です。

 江の島岩屋

 海蝕崖と海蝕洞。あそこが江の島岩屋です。

 船着き場

 さあ、そろそろ帰途につくかというところで、来た道を戻らずに、船で帰ることにしました。来た道は山越えですからね。

 べんてん丸

 稚児ヶ淵と江ノ島大橋との間に「べんてん丸」という遊覧船が就航していて、5分もかからずに駅の近くまで戻ることができます。片道400円也。

 展望灯台「江の島シーキャンドル」

 「春の海終日のたりのたり哉」 今日は風も穏やか、ぽかぽか陽気の一日で、楽しい野山歩き(海辺歩きか)をさせてもらいました。ありがとうの気持ちで船の上から江ノ島にサヨナラ。島のシンボル、展望灯台が「またおいで」と応えてくれた気がしたような、しないような。
 
 帰りは片瀬江ノ島駅からロマンスカーで町田まで。そこから横浜線に乗り換えて、トータル1時間くらいで帰ることができました。