江ノ島 〜海岸の生き物たち〜


 

【神奈川県 藤沢市 平成20年6月7日(土)】
 
 先週、入笠山に行ったときは抜けるような青空でしたが、その翌日に梅雨入り宣言が出された後は、ぐずついた天気の日が続いています。おかしいな、例年、梅雨入り宣言の直後から晴れの日が続くといったパターンが多いのに。
 今日も、雨こそ降ってはいませんが、どんよりと重苦しい空模様。それでもときおり薄い雲のベール越しに太陽のいどころが分かる程度の明るさにはなります。さあ、ようやくやって来た週末。行き先は湘南の江ノ島です。同行者はめずらしくもMy娘。とはいえ現地での目的は異なり、娘は鵠沼海岸でボディーボード、当方は江ノ島で自然観察です。
 
                       
 
 山手通りを南下して首都高3号線からそのまま東名高速へ。渋滞もなく多摩丘陵を越えていきます。厚木ICで一般道に下りると、相模川に平行して走る国道129号線を海に向かってまっすぐに。やがて海岸線に出たら、今度は東に向かって海沿いの道を走ります。

 鵠沼海岸からの江ノ島

 鵠沼橋手前のスケートパークに車を止めて海岸へ。強い日射しこそありませんが、遠火で焼かれているようなジリっとした暑さです。駐車場はワンボックスやステーションワゴンなどボードを積めるようなものばかり。ドリーム号ははちょっと浮いていたかもしれません。地元のサーファーは自転車でのんびりとやってきます。車体の横に独特のキャリアが取り付けてあって、うまくボードを運べるようになっているのです。サーフィンが生活の一部みたいで、カッコイイです。
 鵠沼海岸で娘と別れて、そこから海岸をぶらぶらと。砂浜では海の家の組み立てが何箇所かで行われていました。梅雨が明けたらさぞかし人で賑わうでしょうね。

 瑞心門

 海岸沿いに歩き続けると、やがて江ノ島大橋の入口にやってきます。江ノ島は砂州でつながっている陸繋島。江ノ島大橋はその砂州の上に高架のように架かっているのです。
 島に入ったとたんまるで縁日のような人出。江島神社の狭い参道は人で埋め尽くされ、その両側の土産物屋や食堂からは賑やかな声が聞こえてきていまいした。どうやらここは生シラス丼が名物のようです。
 上の写真は神社の手前にある瑞心門。ここを左手に折れると「エスカー」(島の最高地点付近まで上れるエスカレーター。江ノ島といえばエスカーです。)ですが、今日は右手の細い道に入って、海岸沿い(といっても海面からは20mくらい高いところを通っています。)に島の西側を目指します。

 ドクダミ

 この時期、ちょうど花の端境期ですが、探せばあちこちに可憐な姿を見つけることができます。このドクダミなどもこの時期の代表選手。白い花弁のように見えるところは苞(つぼみを包んでいた葉)。本当の花は中心のミニトウモロコシのようなところにびっしりと付いていて、それぞれ小さな雄しべと雌しべがあるのみ。花弁はありません。ドクダミはあの独特の匂いで敬遠されがちですが、薬草としては昔から重宝され、その名も「毒や痛み」に効くことから「ドクダミ」に転訛したものといわれています。

 片瀬西浜

 海をはさんでさっき歩いてきた海岸が見渡せました。海辺の雰囲気がまさに湘南ですな。

 稚児ヶ淵

 島の西端まで来ると一気に波打ち際に下りていきます。ここは稚児ヶ淵と呼ばれる岩場で、関東大震災の際に隆起して姿を現したという海食台地です。写真の左右にも同じような地形が続いていて、釣りをする人の多くの姿を見ることができます。
 沖合には白い大きな船が。船体の塗装から海上保安庁の巡視船のようですが…。おぉ、あれは。

 しきしま

 双眼鏡で覗いてみると、船首に「PLH31」の文字が。プルトニウム運搬船の護衛用に建造された「しきしま」ではありませんか。舷側にボートのようなものが浮かんでいて、数人のダイバーが見えます。きっと何かの訓練をしているのでしょう。
 この「しきしま」は、外観こそ普通の巡視船と変わりがありませんが、その使命から中身は軍艦構造になっているといわれています。テロの危険を避けるためヨーロッパまで無寄港で航行できる能力を備えている、世界最大級の巡視船で、ヘリも2機搭載しているとのことです。

 照葉樹林

 平らな海食台地に下りてみると、断崖にへばりつくようにして広がっている照葉樹林が目に入ってきます。「黒々とした」といった形容詞が当てはまるほど濃い緑色をしていて、強い日射しや潮風にも負けない力強さを感じます。

 ハマボッス

 岩場の片隅にハマボッスの白い花。こちらもテカテカとした緑の葉です。

 波打ち際

 島の南側に回ってみました。ちょうど潮が満ちた状態で、水の中をうまく観察することができませんでしたが、それでもいくつか面白いものが。

 タイドプールの中

 波を被らないタイドプールの中ではいくつかの貝が岩に張り付いていました。写真中央下のはヨメガカサ。右上の星形の模様の貝はウノアシ。その他はマツバガイでしょう。皿のような形をして岩にへばりついている姿を見ると、とても巻き貝の一種だとは思えませんね。あと、左側の岩の割れ目に挟まっているのはヒザラガイです。(それぞれ炊き込みご飯の具にして美味しくいただきました。)

 ヨロイイソギンチャク  アカテガニ

 こんなところなら一日中遊んでいても飽きないですね。(子供の頃からあまり進歩していないような… )

 カジイチゴ

 海食台地の西端に移動しました。
 カジイチゴの果実。一応美味しく食べられます。どちらかというと、似たようなモミジイチゴの果実の方がよりジューシーで美味しいような気がしますが。

 イソギク  オオバイボタ

 イソギクの葉は白い縁取りがあるように見えますが、これは裏面が全面銀白色でそれが表から見えているから。分布は関東から静岡県の御前崎までと、ごく限られた地域になっています。
 オオバイボタの花は涼しげです。イボタノキが山野の林縁で、ミヤマイボタが標高の高い山地で見られるのに対して、オオバイボタはは暖地の海岸近くに見られる樹木です。

 スイカズラ  マサキ

 スイカズラは花の基部を吸って蜜を味わったことから「吸い葛」と言い表すようになったとのこと。別名は「金銀花」。こちらは写真のような白い花が数日すると黄色みを帯びてくることから、白い状態を「銀」、黄色い状態を「金」と見立てたとのことです。スイカズラ科16属約500種の旗手です。
 マサキはよく生け垣として見かけましたが、最近はあまり出会うことがなくなりました。生け垣そのものが少なくなったからでしょうか。冬場に果実が裂けて朱い種子が顔を出すところは、ニシキギ科の特徴をよく表しています。

 乗合船のりば

 島の西端からは江ノ島大橋の本土側の端まで船が往復しています。片道400円。さっき急降下してきた階段を上って島を縦断して帰ることを考えると安い料金ですが、これには乗らずにまたぶらぶらと引き返したいと思います。

 雑貨屋の店先に

 江ノ島には野良猫がたくさん住み着いていて、住民の方からも愛されているのだとか。この猫たちを新たな観光資源にしようとする動きもあるようです。なので、雑貨屋とかにもネコ関連の商品がいっぱい。

 眠り猫

 こちらがその野良猫くんのうちの一匹。エスカーのチケットカウンターで昼寝中でした。(後日行ったときもまったく同じ場所で寝ていたので、ここがお気に入りなのだと思います。)

 参道

 瑞心門まで戻ってきました。階段の上から参道を見下ろすと、相変わらずたくさんの観光客がやってきています。
 さて、ここからまた海岸を歩いて鵠沼まで。娘ももうそろそろ陸に上がってきている頃です。