絵下山 〜眼下に広がる広島今昔〜


 

【広島市安芸区 平成15年2月16日(日)】
 
 今月の定例観察会は「絵下山」
 昨夜来の雨がわずかに残る中、集合場所に集まったのは総勢31名。天候の影響か普段の半分くらいでした。
 今日のリーダーは安芸区在住の丸平さんです。

 絵下山

 今回のテーマは、絵下山の頂から広島の街を見渡して、街の発展とそれに伴う環境へのインパクト(エネルギーの過剰消費による地球温暖化)について考えてみようというもの。
 実際、山頂からは広島の市街地がまるで眼下に地図を広げたように見渡すことができます。
 ですから山頂までの自然観察は、今回は副次的なものという位置づけです。

 登山道

 雨は降っていますがレインウエアに防水ハットで十分。強い降りではありません。でも、傘をさして歩くのはいただけません。登山道で滑ったときに手がふさがっていると十分に身を守ることができませんから。参加者の中には何人か傘をさしている人がいましたが、これはスタッフとして声をかけるべきでした。たまたま今回は事故はありませんでしたが。

 ヤマザクラ  リョウブ

 木々の幹は雨に洗われてその色合いに深みを増し、鮮やかに映りました。「生きている」と感じさせるみずみずしさです。

 尾根筋の道

 山腹のつづら折れを登り切って尾根筋に出る頃には雨はすっかり上がっていました。そして見上げると、たれ込めた雨雲の一角に太陽の存在を示す明るい部分を認めることができるようになりました。
 おもしろいもので、気分も明るく前向きになっていくのがわかります。

 矢野、海田方面

 途中、見晴らしの良い大岩がありました。そこからは北西方向に広島市街が、東方向に筆の産地で有名な安芸郡熊野町の街並みが見渡せます。本当ならここで汗でもぬぐうんでしょうが、今日は寒いので汗も出ません。

 ヤマグルマ

 珍しい樹木に出会いました。一属一種のヤマグルマ。個体数が少なく、そう見かけるものではないそうです。
 それにしても一体どうやってここにポツンと生えているのでしょうか。高さ5mほどでこんもりと旺盛に茂った成木ですが、周囲には同じ木はなく、そればかりか他の樹木が茂る密な森の一角に孤独に生えていて、この木はどうやって芽吹いたのか、どのような経過をたどって生存競争を勝ち抜いてきたのか、考えてみれば不思議です。

 山頂

 そうこうしているうちに山頂です(正確には山頂のひとつ隣のピーク)。時計を見るともう1時。いつものことですが「超」が付くほどスローペースです。
 ありがたいことに陽が差してきました。さっ、弁当、弁当。
 
 昼食後には、今日のテーマに関する話を聞きます。
 広島の市街地はもともと太田川が中国山地を削って河口部に作った沖積層のデルタの上にできたものです。
 でも、その範囲は大きくはなく、広島城を築城した頃の水際は現在よりも数q北に位置していたそうです。その後、城下町の発展や軍都としての機能付加もあって人口が増え続け、必然的に沖合に向かって陸地を広げていったのだそうです。その営みは現在もなお続けられています。

 山頂から見渡すと、地方都市とはいえたくさんの家屋や高層建築物が連なっていて、遠くの方は霞んでいてはっきりしないほどです。あの建物のひとつひとつに人間が住んでいて、今この瞬間にも、電灯をつけ、テレビをつけ、冷蔵庫が働き、風呂を沸かし、また、道路には車が動き回り、工場の煙突からは煙が出て…。確かにこの街全体から立ちのぼる二酸化炭素の量はハンパじゃないなと実感しました。
 今日のリーダーから配られた資料は、地球温暖化がもたらす深刻な被害を紹介し、その被害が地球規模であることがかえってこれを身近な問題としてとらえられないでいるということを教えてくれるものでした。
 節電、節水、節ガス(?)…。この街に暮らす人間がわずかずつでも心がければその効果は決してバカにはできないでしょう。山に出かけなくてもできる自然保護ですね。