町田えびね苑 〜開発を免れた里山で〜


 

【東京都 町田市 平成29年4月30日(日)】
 
 世の中はゴールデンウィーク。特段遠出をする予定もありませんが、さすがに家にじっとしているというのも。ということで町田えびね苑に行ってみることにしました。正式には「町田薬師池公園 四季彩の杜 南園」というのだそうです。毎年エビネの咲くこの時期(4月下旬から5月上旬)にのみ開園するそうで、今年は4月19日から5月5日までだそうです。
 町田市内には「○○園(苑)」というのがいくつかあって、「えびね苑」の他に「ぼたん園」、「ダリア園」、「リス園」というのも。薬師池公園を取り囲むように1q圏内に配置されています。
 
                       
 
 町田えびね苑は南に開いた谷戸の斜面を利用した自然豊かな公園です。もともとここに自生していたのはジエビネのみだったそうですが、今では様々なエビネが植栽されているようです。エビネ以外の植物も。
 (おことわり(笑))エビネの種類は図鑑などを参考としましたが、一部自信がないものもあります。

 芝生広場

 小田急線鶴川駅からバスに乗り薬師池バス停で下りると20mほどでえびね苑の北口に到着します。そこから小径を辿って丘陵地を登り、ピーク近くに広がる芝生広場の脇を進むと券売所に至ります。入苑料は大人300円。ずいぶんと良心的です。

 タカネエビネ

 券売所をくぐると谷戸の中に下りて行く形になります。斜面のそこここにちょうど見頃のエビネが咲いていました。テンション上がります。
 これはタカネエビネだと思います。エビネには原種の他に交雑種(自然のものも人工的なものも)も多くあり、よく分かりません。タカネエビネは、ジエビネとキエビネ(いずれも原種)の自然交雑種とされていて、見た目はそれらの中間的な特徴を持つそうですが、その中でも個体によってけっこう特徴の差があるようです。



 林床に咲くエビネ。右の2本と左の2本で若干見た目が違いますが、両方ともタカネエビネではないでしょうか(自信なし!)。色合いはジエビネっぽいですが、背萼片と側花弁、側萼片の大きさや形が立派でキエビネっぽいです。その辺が素朴な印象のジエビネと違っているような。

 キエビネ

 これはキエビネですね。原種のうちの一つです。15年くらい前、広島郊外の山の中で見たキエビネの姿が印象的で、今も記憶に残っています。花冠が大ぶりで、うつむいて咲きます。



 これはジエビネか、それともタカネエビネか。木漏れ日を浴びて輝いていますね。

 ホウチャクソウ

 もちろんエビネ以外のものも咲いています。これはホウチャクソウ。自生でしょうね。この時期多摩丘陵では普通に見られるので、わざわざ植栽はしていないと思います。



 少しずつ谷戸の底に向かって下りていく形。写真では分かりませんが、林床のあちこちにエビネが咲いているんです。

 サルメンエビネ

 原種の一つ、サルメンエビネ。植栽とは言えよくこの環境で咲いているなと思います。もともと暑さには弱く、深山の涼しい沢の近くなどで出逢う花です。yamanekoも初めてこの花に出逢ったのは、泥だらけになって沢を登り詰めた先でした。この花に出逢う前にクマに出逢ってもおかしくないようなそんなところです。



 清楚な感じのするエビネ。慎ましやかな姿はジエビネに通ずるところがあります。ジエビネの萼片・花弁には変異が多く、緑色や白色のものもあるそうなので、ひょっとしたらジエビネかもしれません。今日一番のお気に入りがのこ花でした。



 これも交雑種なんでしょうね。堂々とした姿です。

 ギンラン

 高さ10cmあまりの可憐な花、ギンラン。カメラはいつもローアングルで。

 キンラン

 こちらは50cmくらいにもなるキンラン。しっかりと立っています。なのでカメラは上から。



 明るい林床。ここにシートを敷いて一日ゴロゴロしていたいです。

 クマガイソウ

 植栽のクマガイソウ。みんな同じ方向を向いていますね。袋状になった唇弁が特徴。中に何かいそうです。

 タカネエビネ

 典型的な特徴を持ったタカネエビネ。

 ムサシアブミ

 ムサシアブミ。これも多摩丘陵ではよく見かけます。

 サンショウ

 小粒でぴりりと辛いサンショウも小粒なのは実だけで、木は見上げる大きさになります。今ちょうど花が咲いていました。

 タマノカンアオイ

 落ち葉に隠れるようにして咲いているタマノカンアオイ。ぱっと見は枯れ落ちた花殻です。

 クリンソウ

 谷戸の出口近く。湿った環境の場所にクリンソウが咲いていました。これも植栽かもしれません。白色だけでなく、薄桃色や紅色のものもありました。

 サクラソウ

 ピンクのハートを5つ集めたような姿。サクラソウです。これも湿った環境を好む花。

 ユキモチソウ

 スタイリッシュな姿のユキモチソウ。花序の付属体と呼ばれる部分が雪のように白い餅のようだということで名が付いたようです。さっき見たムサシアブミと同じ仲間です。

 ジロボウエンゴサク

 漢字で書くと「次郎坊延胡索」。ケシの仲間です。なんか空中に浮いているみたいですね。

 ツボスミレ

 花冠が1cmにも満たない可愛いスミレ。ツボスミレです。暗紫色のストライプ模様は虫へのアピール。「これを目印に来てよ」



 えびね苑を満喫した後、薬師池公園に寄って帰ることにしました。

 藤の台団地

 木立の間から望む多摩丘陵。50年くらい前までは見渡す限り緑の丘が続いていたんでしょう。

 薬師池

 薬師池公園は多くの人で賑わっていました。青空に新緑、本当に気持ちがいいです。

 イロハモミジ

 イロハモミジの花。小さいので誰も気に留めていませんでした。

 シャクナゲ

 こちらは多くの人が写真に収めていた豪華なシャクナゲ。ハンドボールくらいの大きさがありました。園芸種でしょうか。
 
 帰りはまたバスで鶴川駅へ。もともと休日には渋滞する道なので、バスはなかなか来ず、来ても回送だったりして、時刻表の時刻より30分近く遅れてやって来ました。やれやれです。でも楽しい一日を過ごすことができて満足です。
 ところで、冒頭に、町田えびね苑は正式には「町田薬師池公園 四季彩の杜 南園」と書きましたが、市のホームページには次のような記述があります。
 「現在は町田えびね苑として開園しております。今後は、広大な林を縫うようにつくられた林間アスレチックでスリルと興奮を感じつつ、風を感じ、体をいっぱいに動かし五感で自然とふれあえるエリアとして計画されています。」
 ふーむ、できればやめておいてもらいたいです。