仏通寺 〜梅雨明けの空に蝉の声〜


 

【広島県三原市 平成16年7月10日(土)】
 
 暑い…。朝から、きびしい暑さです。どっか涼しいところに行きたい…。
 木立を渡る風、せせらぎの音…。そんな、胸元がスーッと涼しくなるようなところへ。
 
 ということで、思い立って三原の山奥にある「仏通寺」に行ってみることにしました。

 キツリフネ

 国道2号線を東に向かい、本郷町から三原市に入るあたりに「仏通寺入り口」という標識を見つけました。ここを左折です。「入り口」といってもここから細い道を7、8qは入らなければなりません。途中からは完全に民家が途切れます。
 
 駐車場には車が3台。でも辺りには人影はありませんでした。
 ドリーム号を降りて最初に目にとまったのはキツリフネの黄色い花。風に小さく揺れています。

 参道

 ここから歩いてすぐのところに山門があります。道に沿って川が流れているせいか、こころなしか涼しく感じます。
 茶屋のおばさんが一人、店先に座っていました。

 仏通寺

 仏通寺は今から7百年あまり前、室町時代の中盤に小早川氏により建立された臨済宗の名刹です。多くの戦乱を経て隆盛衰退を繰り返し、最盛期には西日本に末寺三千ヶ寺を数えるほどだったそうです。

 「涼」

 日差しは厳しいのですが、木陰にはいるとホッとする感じ。静かな世界に身を置くことができ、はるばるドリーム号をとばして来た甲斐がありました。

 ヤブカンゾウ

 この時期、道ばたや林の縁などあちこちでヤブカンゾウの鮮やかな花を見かけます。
 雄しべや雌しべが花弁化して八重咲きになっているのがこの花の特徴ですが、完全に花弁化していない雄しべも混じっています。

 入道雲

 長い石段を登って多宝塔へ。まわりの木立から蝉の声が降りそそいできます。
 北の空(すなわち内陸方向)に目をやると巨大な白いモンスターが。すごい大きさの積乱雲が発達しつつありました。あの雲の中では想像を絶するエネルギーが高速で巡っていることでしょう。

 雲は大まかに分類すると「巻雲」、「層雲」、「積雲」の3種類になるそうです。積雲は晴れた日に現れる塊になった雲で、下面が平らなのが特徴。自分の浮力で雲が上昇していってそういった形になるのだそうです。積乱雲は積雲が発達したもので、どんどん大きくなって上端は圏界面にまで達します。
 あの雲の中ではこんなことが起こっているそうです。
 強烈な上昇気流で持ち上げられた雲粒が雪となり、大きくなりながら更に持ちあげられていきます。やがて自らの重さを上昇気流で支えきれなくなると、今度は一転して地面に向かって落ちていくことになるのですが、このとき雪は落ちながら融けて激しい雨となるのです。ちなみに、積乱雲の下ではときどき雹(ひょう)が降ることがありますが、これは上昇気流が特に激しいと、落ち始めた雪が融けきる前に再び雲の中を上昇してまた氷結し、これを数回繰り返すうちに大きな雹へと成長して落ちてくるというわけです。
 ところで、積乱雲の真下にいるとき、雨が降り出す直前にヒヤーっとした空気が流れてくるのを経験したことはありませんか。これは雨が落下しながら蒸発して周りの空気を冷やし、その空気の塊が降りてくるからだそうです。
 下界はうだるような暑さなのに、あの雲の中では雪が舞っているなんて。

 雨雲レーダー

 携帯で雨雲レーダーを見てみるとこんなになっていました。
 1時間程度経っているときの様子なので、仏通寺の辺りはやや勢力が衰えて黄色くなっていますが、引き替えに広島市上空に強烈な雨雲が出現しています。
 
 今日、広島地方は梅雨が明けました。
 いよいよ本格的な夏の到来です。