荒谷山 〜どっしりとした山で歩き納め〜


 

【広島市安佐南区、安佐北区 平成15年12月30日(火)】
 
 今年も今日を含めてあと2日、いよいよ押し詰まってきました。
 巷では正月を迎える準備であわただしいのでしょうが、それは常識的な人のことであって、yamanekoはやっぱりアソビに行ってしまいます。
 今日は広島近郊にありながら、どっしりとした山容を誇る荒谷山(631m)に行くことになりました。同行してくれる人は4人です。
 広島市街の中心部からアストラムラインに乗って広域公園(ビッグアーチがある)の方へ向かうと、ふもとにいくつもの団地が広がる荒谷山が見えてきます。パッと見ただけでも登り応えがある山ですが、実は見えているのは主峰ではなく、前峰なのです。
 荒谷山はちょっと変わった姿をしていて、稜線が漢字の「工」の字に伸びているのです。アストラムラインから見えるのは手前の稜線(「工」の字では3画目の横線)で、主峰がある稜線はその奥にあります(1画目の横線)。その二つの稜線を鞍部のような稜線が結んでいます。

 荒谷山(前峰)

 アストラムラインの長楽寺駅近くに10時集合。ふじヶ丘団地の中を登っていって、そのどん詰まりが登山口になります。登山道はきれいに整備されていて歩きやすくなっています。この山の中腹に不動院という寺院があって、これを山火事から守るため、消防用の機材を運び上げやすいようにしているようです。

 登山道

 この山はいわゆる里山で、大昔からあった照葉樹林を切り開いた後にできたアカマツの二次林が広がっています。でもそのアカマツも山裾を中心としてかなり枯れてしまっていました。これがマツクイムシのせいなのか都市化による環境悪化のせいなのかは分かりませんが、このまま放っておくと、落葉広葉樹林を経てまた照葉樹林に遷移していくでしょう。

 枯れたアカマツ

 西日本では二次林はたいてい「アカマツ林」になります。関東地方では二次林は「クヌギ−コナラ林」になりますが、この違いは主に土壌の性質の違いによるものと考えられています。関東地方の土には火山灰成分が多く、これは粒子が細かいので有機物となじみやすく一般に土壌が肥えています。一方西日本には風化花崗岩の表土が多く、これは粒子が大きいために栄養分が水に流されやすいのです。表土が薄く、乾燥した貧栄養のやせ地でも、アカマツならそれに耐えて着実に成長できます。アカマツは栄養状態の悪い土地への適性が高い種といえます。これが表土が厚く富栄養の土地だとかえって他種のと競争に負けてしまうというわけです。

 枕木の階段

 落ち葉を踏みしめて歩く山道のなんと楽しいこと。冬場は日の光が差し込むので明るい登山道になります。

 不動院

 12時に不動院に到着。小さなお堂ですが辺りはきれいに整備されています。この不動院はふもとにある真言宗長楽寺の奥の院になるのだそうです。
 腹の虫が鳴いていますが、もう少し登ってから昼食をとることにしました。

 ふもとの団地群

 12時30分、見晴らしのいい場所があったのでここで昼食です。
 上の写真の右手にある山が武田山。その向こう側が広島市街です。この武田山を巻くようにして広島市街まで流れる川に沿って住宅街が広がっていて、そこには20万弱の人が暮らしています。
 
 13時30分、前峰に到着です。頂上手前の上りが急だったので、うっすらと汗をかきました。冷やさないように注意が必要です。
 ここから奥にある主峰を見ると、その間にはぐっと落ち込んだように見える鞍部があります。いったんそこまで下ってからまたここよりも高い主峰に登るのかと思うと、やれやれといった感じですが、実際に歩いてみると15分ほどで主峰の山頂に立つことができました。

 主峰山頂

 山頂は木立に囲まれ、ほとんど展望はききません。でも、頭上にぽっかりと空いた空間には冬の青空を見ることができました。
 年末のこの時期、さすがにわれわれ以外にはだれもいませんでした。もう弁当も食べてしまったし、30分くらい辺りを観察したあと、登ってきた方とは反対の方向に下山することにしました。こちら側には「あさひが丘」という団地があります。

 ヤブコウジ

 あさひが丘団地に下る登山道沿いの木立にはなぜか延々とゴミが吊してあって、はっきり言って不快でした。何かのおまじないでしょうか。もともと私有地なので所有者の趣味であればこれ以上何も言うことはありませんが、登山者が汚したものだとしたら言語道断です。

 あさひが丘団地

 3時45分、団地の縁に到着。あとは荒谷山を迂回して長楽寺まで通じている道を延々と歩いて戻ります。
 もう夕方なので空気はひんやりとしてきましたが、道々あれこれと観察しながら歩いていると、アスファルトの道もそんなには苦になりませんでした。
 出発地点に戻ったのは17時。あたりは暗くなりかけていました。
 さあ、遅まきながら新年の準備でもしましょうか。