赤城山 〜山頂は一つ先の季節〜


 

【群馬県 富士見村 平成18年10月22日(日)】
 
 今年もテレビで各地の紅葉情報を伝えるようになってきました。
 ようやくやってきた週末。ここはやっぱり紅葉を求めてドリーム号を走らせることにしました。こんな楽しみのためなら早起きも苦になりません。
 
                        
 
 向かったところは群馬県西部に位置する赤城山。榛名山、妙義山とともに「上毛三山」の一角をなす名峰です。
 朝6時半、駐車場を発ったドリーム号。目白通りから関越道に入り、埼玉県の武蔵丘陵を一気に駆け抜けるとあっという間に群馬県。前橋ICで高速を下り、あとは県道4号線を赤城山に向かって走るのみです。今日の天気は曇りがちで夜になって雨になるとの予報。あまり芳しくはありません。
 道は赤城山のすそ野からまっすぐ山頂を目指しています。下から見上げると山頂は雲の上なのですが、そこには最近まで小中学校の分校もあったりして、昔から人々の暮らす生活の場があったのです。今の主な産業はやはり観光業でしょうか。
 山頂は、大沼(おの)や小沼(この)という火口湖を中心にして、それを黒檜山(くろびやま。1827m)、駒ヶ岳、地蔵嶽、鈴ヶ岳がぐるりと取り囲んでいます。赤城山に赤城山というピークはないのです。

 白樺牧場

 つづら折れの道を越え、山頂の外輪山の内側に入ると、そこにはなだらかな地形が広がっていました。地図にはここは「白樺牧場」とあります。朝靄というよりこれは雲でしょう。稜線の向こうから流れ込んできているようです。まだ8時過ぎなので訪れる人も多くはなく、静寂でしっとりとした雰囲気です。
 大沼の南東の岸辺に食堂や売店が集まった少し賑やかな集落があり、そこに大きめの駐車場があるので、今日はそこに車を停めて、周辺をぶらぶらと散策してみようと思います。

 覚満淵への入り口

 まず覚満淵という沼に行ってみることに。ここには周回できる遊歩道があります。
 ところで、紅葉は? ご覧のとおりここではすでに終わっているようで、季節は冬の初めといったところでした。そりゃそうかもしれません、なにしろこの辺りは標高1300mを超えているんですから。風こそないものの、気温はわずか8度。寒いんです。

 覚満淵(奥は駒ヶ岳)

 淵の畔の解説板によると、覚満淵は標高1360mに位置する湿原で、そのほとんどが中間湿原的なヌマガヤ群落ですが、北側から半島のように張り出した部分(上の写真の手前に突き出している部分)についてはミズゴケとツルコケモモ群落で、泥炭の厚さ3m近くもあって高層湿原化しているとのこと。赤城山は植生的に表日本型の地域ですが、ここにミズゴケやツルコケモモなどの湿原が形成されることは例外的なことで、貴重なものなのだそうです。

 凍てつくモニュメント

 アザミの仲間でしょうか、枯れてなお凛と立つその姿に、自然の造形の美しさを感じます。

 紅葉の名残

 林の中にところどころ紅葉の名残を見ることができました。そこだけぽっと陽が差したような、暖かな空気が取り巻いているような感じです。上空の雲の切れ間からときどき青空が覗きはしますが、すぐまた隠れてしまいます。でも少しずつ天気は良い方に向かっているようです。

 遊歩道

 覚満淵は「小尾瀬」とも呼ばれているそうで、春にはミズバショウ、夏にはニッコウキスゲと、その植生も似かよっているのだそうです。でも、さすがにこの季節には花の影を見ることはできませんよね。
 雨は降っていませんが防寒のために上下レインウェアのいでたち。踏みつけから湿原を守るために木道が設置されていて、そこをゆっくりと歩いていきます。

 コハウチワカエデ

 沼の北側にやってきました。こちら側はやや山際のしっかりした地面の道です。
 コハウチワカエデが朝の冷たい空気の中でじっと身をひそめていました。しばらく立ち止まって見上げていましたが、その梢の葉はそよとも揺れることはありませんでした。

 レンゲツツジ

 レンゲツツジ。この低木も立派に紅葉していました。レンゲツツジは花が大ぶりで長野県あたりでは「鬼つつじ」と呼ばれるそうです。小ぶりなヤマツツジに対しての呼び名だそうです。

 マユミ

 枝先が薄桃色に色づいているのはマユミです。これも寒そうに立っていました。にじむ背景とともまるでにカラーの墨絵(?)のようです。

 大沼

 覚満淵を一回りした後、大沼へ行ってみました。大沼の北岸に陸繋島のように突き出た部分があって、そこに赤城山神社があるので、とりあえずそこまでです。少しずつ雲が晴れてきて、朝日が湖面をキラキラと輝かせ始めました。

 ユキザサ(実)

 神社の近くの林の中にルビーのようなユキザサの実が残っていました。冬に向かう季節の忘れ物です。

 黒檜山

 神社の裏手の湖畔でおやつを食べながらのんびりしているうちに、すっかり青空になってきました。いつのまにか主峰の黒檜山の稜線もくっきりと見えています。今から10数年前、当時小学生だった子供たちとあの稜線を縦走したことを思い出します。5月の大型連休のときで、山頂からは遠くまだ雪を残した日光白根山の山容が望めました。

 シラカバ林

 昼になる頃、まだまだ観光客は上がってきますが、当方はもう下山を始めます。ここは渋滞にはまると大変なんです。
 山頂はもう紅葉の季節は過ぎていましたが、中腹はまさに今が紅葉の見頃。朝、登ってくるときは靄に包まれて今ひとつはっきりしなかったのが、晴れた空の下ではまさに燃えるような紅葉です。運転しながらなのでゆっくり見られないのが残念です。

 ということで、路肩の駐車スペースに車を停めて少し休憩。ようやく紅葉を楽しむことができました。

 中腹はちょうど見頃

 ふもとは10月下旬、中腹は11月中旬、山頂は12月上旬。今日は季節の移り変わりを空間移動で体感することができました。あと半月も経って、やがてふもとが紅葉に彩られる頃、山頂は白い冬を迎えているかもしれません。